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奇跡を叶えるダンジョンと、レイヴン――遺志を継ぐ者 16,000PV感謝!!!!  作者: 西芭企画
後編 白塔の攻略と、奇跡の正体
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110 ブンゲローゼ――舞楽禁制

 嫌な展開だ。

 討伐までの道筋はおろか、その足掛かりさえもまだ見つけられていない。

 すでに十分、劣勢だろう。

 そうだというのに、ここに来てハーメルンが新しい技を使いだしている。

 月の形が上弦になった途端に、このありさまだ。

 まず間違いなく、フルムーンのときにもスキルが増えるのだろう。

 逃げられないことがもはや確定し、そのうえ、月は時間とともに大きくなっている。

 さすがに、ヴァリーラの脳裏にも「敗北」の二文字が、少なからずちらつきはじめていた。それがまた、余計に集中を乱して来る。


 一方で、逆説的ではあったが、背水の陣となったことで、味方の覚悟もおのずと決まったのだろう。レイヴンたちの攻撃が、ちょっとずつではあったが、ハーメルンの体を捉えるようになっていた。


 だがそれも、はたして望ましい進展だったのかはわからない。

 ハーメルンを傷つければ傷つけるほど、月の成長が増すことが判明したからだ。

 もはやその大きさは、十三夜に達しようとするほどである。

 再び羅刹(パシアー)が笛を持つ。

 楽器を使わせまいと、ネヴェリスカが果敢に、相手の腕に的を絞ってレイピアを振るうが、さすがに向こうも、それには十全な注意を払っているようだ。芳しい成果は挙げられていない。


「……」


 ふと、音が消えた。

 耳がおかしくなったのではない。突如として、一帯からすべての振動が取り払われたのだ。

 驚いて周りを見渡せば、似たような表情を浮かべた面々が、同じように相手へと視線を返している。


「――!」


 口を開き、何事か叫んでいるようだが、聴覚を刺激するものは一切なかった。尋ねようにも、自分の声も相手に届いていない様子だ。


 コミュニケーションの断絶。

 当然ながら、ハンドサインで互いの意思を伝えることなど、日ごろから練習しているならばともかくとして、とっさにできるようなものではない。


 不利の度合いが、加速度的に高まっていく。

 特に、リョウスケやヴァリーラが何かに気がついても、それを周りに教えられないという点は、半ば致命的と言えた。


 必死になって彼女は頭を動かす。

 その意味で、この不自然な静寂は腹立たしいが役に立った。

 一時は、月光を犠牲に、ライカンスロープを誕生させたのではないかと、そう思いもした。だが、ハーメルンの狙いが月の成長にあるのだとしたら、わざわざ自分から、サイズを小さくするような真似はしないだろう。それはゴールから遠ざかる行動だ。


 ということは、あれは外部からの影響なのか。

 答えを思いつきそうになったとき、ヴァリーラの頭は、束の間、考えることを中断した。その瞳が、レイヴンの一撃を捉えていたからだ。


 彼の焔煌刀(クリムゾン・フレイム)がまとう炎は、ごうごうとうなりを上げている。その剣がハーメルンの体に、深々と突き刺さったのである。


 ようやく入った大ダメージ。

 歓喜に一瞬、思考を途切れさせたのも無理はあるまい。

 しかし、実際に戦っているレイヴン本人には、その行為の不自然さに気がついていた。これは偶然の産物などでは決してない。


(こいつ! 今、わざと食らいやがった!)


 自分の手柄ではなく、図られたのだ――ほかでもない羅刹(パシアー)に。

 それはヴァリーラが予想したとおりである。

 ハーメルンの目的は、月をでかくすること。

 それを達成するうえで、最初から自分の身を切り売りする必要はない。執念深く機を待ち、自ら動くのは、最後のダメ押しだけで全く十分なのである。


 淡い光を灯していた玉兎は、今や燦然と輝く満月へと姿を変えていた。

 狼男の完成である。

 コメントまでは望みませんので、お手数ですが、評価をいただけますと幸いです。この後書きは各話で共通しておりますので、以降はお読みにならなくても大丈夫です(臨時の連絡は前書きで行います)。

 次回作へのモチベーションアップにもつながりますので、なにとぞよろしくお願いいたします。(*・ω・)*_ _)ペコリ

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