表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
奇跡を叶えるダンジョンと、レイヴン――遺志を継ぐ者 16,000PV感謝!!!!  作者: 西芭企画
前編 ダンジョンの謎と別解組
10/115

10 三年の月日

 しばらくの間、レイヴンは何の反応も示さなかった。

 虚ろな目で、何の変哲もない地面の一部を、ただ意味もなく眺めていただけである。

 やがて発した言葉は、端的にゴールドマンを非難するものであった。


「ずいぶんと手際がいいんですね。まるで、姉ちゃんが死ぬのを待っていたみたいだ」


 レイヴンの言葉に、ゴールドマンは眉を寄せるだけで、何も応じなかった。

 それは腹立たしく思っているとも、自責の念を感じているとも判別がつかない。

 無理もないだろう。

 エルヴァの病状は、客観的に見ても手の尽くしようがない状態だった。カラサ病には、有効な治療法がないという点を抜きにしても、エルヴァの命は風前の灯だったのである。


 しかし、今のレイヴンを、そのように説き伏せたところで、余計な溝が深まるだけであることは明白だった。


 それがわかっているからこそ、ゴールドマンは何も言い返さないのだ。


(……)


 両親を失ったときとは比べ物にならいほど、大きくてどす黒い失望感が、レイヴンの心を支配していく。


 怒り。

 悲しみ。

 孤独と憮然。

 そして、明確には憎悪の対象を見つけられない、やるせなさばかりが、頭の中を行ったり来たりしている。


(もう……やめてしまおう)


 親しい間柄を作るたびに、こんなに広々とした穴が、胸にできてしまうのであれば、もう打ち解けあうような関係はいらない。自分は、このさっきずっと一人で生きていく。


 やがて、レイヴンが長年過ごした家の外には、ゴールドマンが話していたように、非常に質素な一つの墓が立てられていた。


 名前はない。

 それどころか、目印となる木の下には、エルヴァと呼べるものが、何一つ埋められてはいないだろう。本当のエルヴァは、ソバータウンのどこかにいるはずだ。


 それでも、その素朴な十字架が、レイヴンにとっては確かに姉の墓だった。

 その木の前に座ったレイヴンが、両手を合わせながら誓う。


(大丈夫だよ、姉ちゃん……。カラサは俺の命に代えても、必ず豊かにしてみせるから。安心して眠っていてくれ)


 悲壮な決意を抱いたレイヴンの瞳が、きらりと鋭く輝いた。

 そして、三年の月日が流れ、レイヴンは自力で8層まで登れるようになっていた。

 人類の最高到達地点は17層。攻略組と呼ばれるパーティーの、華々しい功績である。

 コメントまでは望みませんので、お手数ですが、評価をいただけますと幸いです。この後書きは各話で共通しておりますので、以降はお読みにならなくても大丈夫です(臨時の連絡は前書きで行います)。

 次回作へのモチベーションアップにもつながりますので、なにとぞよろしくお願いいたします。(*・ω・)*_ _)ペコリ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ