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夢見たタイムマシン

作者: はんぺん小僧

 男はタイムマシンを発明した。


 その偉業は世界初の物で、男は世界中から称賛を浴びた。勿論それを最初に使うのは男だ。男は世界中の人々に向けこう言った。

「私はこのタイムマシンを使い、過去に戻る。手始めに、多くの偉人が生まれた乱戦の時代へ行くことにした。では、始める。」

男は世界中から注目されながらタイムマシンに乗り込んだ。あり得ないほどの轟音と共にタイムマシンの姿は薄れていく。そして一瞬、眩い光が人々の目に入った。瞬時に目を閉じ、そしてゆっくりと目を開けると、もうタイムマシンはその場になかった。人々はざわめきだした。中には手を叩いて喜ぶ者もいたが、その者もやがて事の重大さに気付いていったのである。


 タイムマシン機動から数時間。人々の悪い予感は的中した。いつまでも男は戻ってこないのだ。科学者たちは男の安否を確かめるため、次なるタイムマシンを開発しだした。しかし、設計図は男の部屋に無く、科学者たちは一からタイムマシンを創るはめになったのだ。


 男がタイムマシンを機動した直後。大きな衝撃により、男は気絶してしまった。男が目を覚まし、タイムマシンの外に出るとそこは紛れもなく過去の暮らしだった。男はタイムマシンを、これまた男の開発した特殊フィルターで透明にした。これでばれる事はない、そう思っていた。高い山で人通りも少ないと思っていたのだ。しかし男は、何者かに話しかけられた。

「ああ、全く!何て事だ…これが不幸中の幸いという物なのか?」

男はひどく驚いた。話しかけた者は、どうみても外国人なのだ。その証拠として、しっかり外国語を喋っている。男は一体どういう事か聞いてみることとした。

「あー…すまない。ちょっといいかな?」

男は海外に行くこともあったので、一通り必要な外国語は身に着けていた。

「君は何故外国の言葉を話しているんだ?君は一体何者なんだ。」

「何を今更…私はある愚かな科学者を追って過去に来たんだよ。このタイムマシンでな。」

その男が手元のボタンを押すと、自分の物よりもっと大層なタイムマシンが姿を表し、男は驚きを隠せなかった。

「そんな馬鹿な!私が世界初のタイムマシン発明者のはずだ!」

それを聞いた外国人の男は、信じられないといった様子で男の方を見た。

「なに…?お前が世界初のタイムマシン発明者だと…?…ようやくだ、ようやく見つけた。…しかし、遅かったな…。」

外国人は男の手を引っ張り、倉庫へ連れていくと、鎧と武器を持たせた。

「…何だこれは」

「見ての通り、鎧と武器だ。」

「何故?私は今から戦いにでも行くのか?」

男は冗談混じりにそう言った。だが、外国人は男の方を向き、ゆっくりと頷いた。そして深呼吸をし、全てを話した。

「そうだな…まずお前はタイムマシンを使った。その後元の世界では何時まで経ってもお前が戻ってこないとざわめき出したんだ。」

「それは君のせいじゃないか!」

「まあ待て。…その後世界中の科学者はお前の安否を確認するため、お前を救出するために第2のタイムマシンを発明した。そこからがいけなかったのだ。我々は『時』という偉大なる物を見くびっていた。偶然の事故か、それとも神が引き起こした試練か…タイムマシンの暴走により、人が死んだ。それもただの平民じゃない。お前が好きな乱戦の時代を引き起こした張本人だ。世界史の教科書にも載る。正に偉人が。…こうともなれば歴史が変わる。その第2のタイムマシン発明者はその死んだ偉人の代わりになることを決心した。そう、それが私だ。」

男は息をのんだ。外国人はうつむいている。

「…どうにかして、歴史を元に戻さなくてはならないと、しかしそこから間も無くして、また一つまた一つとタイムマシンが現れた。『ミイラ取りがミイラになる』とは良くいったものでな…」

男は耐えられなくなり、口を挟んだ。

「待て、じゃあどうすれば現代に戻れるんだ。」

「それは今から起こる戦争で生き延びることだ。今、歴史に名を残す偉人は皆、私のような被害者だ。それどころか兵士や、農民、平民までもがな。皆、世界を正しくしようとしているんだ。そしてとうとう、この戦いが最後だ。私はここで死ぬ。これで世界は元に戻るのだ。我々の命を犠牲にね。もうタイムマシンも近頃来なくなった。分かるか?これで終わるんだ。」

「じゃあ、私は死ぬしか道は無いのか?」

「兵士たちの様な歴史に名を残さない者共は助かるかも知れない。同時に死ぬかも知れない。彼らは八百長無しの本気だ。勿論軍の為ではなく自分の為だがね。」

男は震えていた。しかし、諦める事は考えなかった。

「さあ、行こうじゃないか。安心しろ。お前が生きようが、死のうが、未来が変わるだけだ。ここに問題はない。」

二人は歩き出した。一人は失意を抱き、一人は決意を抱きながら。


「歴史は我々で作られているのだから。」


 


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