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科学少年の異世界戦争  作者: 歯並び悪い人
戦争準備編
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正常バイアス



 痛い、それ以外の言葉が出てこない。声が出ないほど痛い。

 ルビー達が俺を呼ぶ声が聞こえる。だけど何がなんだかわかんねえ、頭がまわんねえ……脳震盪でも起こしたか?

 あー、こんだけ痛いのに意識が朦朧としてくる。調子乗りすぎたな、俺の悪いとこでたな……


………………

………………


 さっきの竜を倒してから歩き始めて数分、俺の魔法を避けた理由がわからないままだ。本当にどうやってたんだろうな……俺の目線からか? でも自然で生きてた動物なんだから絶対俺みたいな魔法は初見だろ、撃つスピードは随一なんだけどなあ。


「いだっ」


 こけた。足を木の根っこに引っ掛けた。みっともねえ。


「大丈夫ですか!?」


 ルビーに心配そうに声をかけられる、差し伸ばされた手を取って起き上がる。


「山では特に足元に気をつけてください。今回は良かったですけど石とかに当たったら大変です」

「うん、気をつけます……」


 土を払ってからついていく。


「転ぶほどうんうん唸ってどうしたんですか?」

「えっと、さっきの竜に俺の魔法避けられたのが気になって」


「いくら魔法自体が速くても、竜のような強い魔物だと魔法に方向を与える時点で読まれますから」

「そんな高レベルなことやってんの!?」


 サティエルの言葉に驚く。ローブ魔法使いレベルじゃねえかよ、魔力節約しなきゃいけないってのにどうやって当てればいいんだよ……


「竜みたいな魔物を相手にするときは魔法使いは基本動きを制限するように魔法を使いますね」

「もっと早く言えよ……」

「ずっと人を相手にすることが多かったので忘れていたいました、アハハ……申し訳ございません……」


 サティエルとサルトロが縮こまる。


「まあいいけどさ」




 しばらく歩いていると、また出た。さっきと同じ種だった。ただ俺やサルトロ、サティエルが魔法を使うまでもなく前衛四人が一瞬で片付けた。サティエルがあんだけ心配していたから少しびびってたけどこいつらいれば全然大丈夫そうだ。



 ……それからまた十分ほど、さっきよりもでかい魔力を感じる。すると魔力がほんの少し分かれた。――魔法!?


「防いで!」


 サティエルが叫ぶ。全速力で魔力障壁を貼る。すると1秒ほどで鋭い岩の粒がマシンガンのように何十発と飛んでくる。


「ふー、当たりどころが悪かったら死んでるね」

「ああ、軽く骨は貫通するレベルだ。で、なんでお前は俺のそばで隠れてんだよ」

「僕はあんまり魔力はないから」


 そんな会話をしながらもまだ飛んでくる。どうしたもんか、向こうの魔力切れまで耐えるってのも手だけどできれば魔力は温存したい。壁を貼りながら少しずつ前に進むか……


「タカハル様は防御優先ですよ」

「ん、ああ。でもずっとこれでも――」

「私に任せてください」


 ルビーがそう言うと、深く息を吐いたかと思うと。小さい声で「今」と呟いた。すると自分を守っていた大剣を玉に戻した。そして前に姿勢を低くしながら走っていった。


「マジで!?」

「す、すごい。全部避けてるよ!」


 どんな動体視力と身体能力してんだ、人間業じゃねえぞ。そんな驚きながらルビーを見ていると、木の裏に隠れた魔法を撃ってきた正体までたどり着く。そして玉を大剣にして木ごと断ち切った。目を凝らすと飛び散る血が見える。魔力も霧散していく。


 ルビーの方へ歩いていくと死体がよく見える。頭の方は潰れてるけど首のダルダルの皮からイグアナっぽいやつだってことがわかった。こいつも解体されて魔石が取り出される。



 それからまた歩いてしばらくすると、胸に突き刺さるような感覚を覚える。かなり強い魔力を感じ取る。護衛達もわかっているようだ。

 不意打ち対策で魔力障壁を貼る。すると弾丸のような速度で岩が飛んでくる。

 こええ、当たったら死んでる。


 飛んできた魔法にビビっていると魔覚がまた俺を警告する。凄い勢いで近づいてくる、ドタドタという足音も聞こえる。護衛達が身構える。木々の向こうからシルエットが現れる。またイグアナ系の魔物だ、ただ一回り大きい。


 ……おかしい、ただのイグアナと違って翼が生えている。そもそもなんで俺は疑問に思わなかったんだよ。爬虫類の魔物はかなり異質すぎる。動物には相同器官がある、無脊椎動物と脊椎動物は進化の大元で分かれているが、爬虫類と哺乳類とかはそれに比べると近い。哺乳類の前足と鳥類の翼、魚類の胸ビレ等々……ようはあれは手足が六本あるのと一緒、デーナも。そういえばさっきまでのは翼はなかった。この世界の進化の過程で何があった?


 考えてるうちにデーナが飛び出した。手を竜に戻して殴りかかろうとしていた。

 あれもなんなんだよ……


 デーナが近づいたところで、翼に腹を打たれた。デーナが吹き飛ばされる。


「デーナ!」


 彼女はお腹を押さえながらも立ち上がる。致命傷ではないようだ。

 すると、ルビーとアゲートが突っ込む。するとさらに急加速して避ける。しかもあろうことか滑空してこっちに向かってくる。

 全力で魔力障壁に魔力を伝え押されないように身構える。


 が、魔物はその上を通り過ぎる。途中で翼を閉じて尻尾を振り下ろしてくる。

 間に合わない――



 後ろから氷や岩の破片が飛んできて尻尾を傷つけながら軌道を逸らす。サティエルとサルトロだ。安堵するが、すぐに我を取り戻して魔力障壁を前に貼る。すると突進してきて体を横にしてぶつけてくる。

 重い――体重だけじゃない、魔法も使って力を増やしてやがる。それでも耐える。魔法や体当たりをしのいでいるとスティフが前に飛び出す。ラッシュで致命傷には至らないが傷が増えている。



 横からの魔覚に血の気が引く。それからスティフと翼の生えたイグアナの魔物も動きが止まった。スティフの顔には冷や汗が見える。

 魔力が凄い勢いで近づいてくる。数秒すると魔力が分かれる。全力でスティフを庇いながら魔力障壁を貼る。100kgはあるかという岩の塊が飛んでくる。魔力障壁に当たった岩は砕け散る。隣の魔物は土壁の魔力障壁を出したようだが貫通して生き絶える。ほかのみんなも防いだようだ。


 魔力の正体がわかる。褐色まだら模様の蛇――大きさがおかしい。何mあるんだよこいつ、顔の横の長さだけで1mある。胴体の方が見えてくると翼が生えてるのがわかる。


「中位レベル……」


 サティエルがそう呟く。


 蛇は俺の近くまで来ると死体となったイグアナを丸呑みにする。動けない、蛇に睨まれた蛙なんて言うけどまさにそれだ、指先すら動かせない。


 こっちを見てくる、鼓動が強くなる。逃げなくちゃいけないと思うがそれでも動けない。そんな中『多分なんとかなる』という言葉が出てくる。

 ――正常バイアス

 津波だとかを目の前にして逃げられないやつだ。こんな楽観的思考が出てくるほど異常事態と感覚はわかっているのに行動できない。わかっていながら理解できず、頭も回らない。


 俺の横を誰かが駆け抜ける。ルビーが大剣を蛇に向かって振り上げる。だが近づいたところで魔力が空気に変異され、風でルビーが吹き飛ばされる。


「っ――ルビー!」

「大丈夫です! 離れてください!」


 ルビーが攻撃されたことで我を取り戻す、歯を食いしばって現実に目を向ける。科学は感情的なことはぬきにしろ。大剣ごと吹き飛ばす風、相当魔力が必要な筈……それを簡単に使うなら魔力量は多い。長期戦は悪手だ。後ろに魔力障壁と一緒に移動する。後退しながら〈高運動エネルギー弾〉を連発する。


 が、巨体に見合わぬ速度で避けられる。魔法で無理矢理移動している。こっちをガン見している。オーケー、囮として完璧。蛇の横からスティフ、デーナ、アゲートが攻撃する。


 しかしデーナとアゲートの攻撃は弾かれた。


「!? 魔力障壁が体に貼られてます!」


 まじか、常に貼ってるのかよ。ただスティフの攻撃は通ってる、急所に当てれば勝てる。……スティフが動かない。


「スティフ、どうした?」

「剣が……抜けない」


 スティフが蛇の剣を引き抜こうとしているが、全く動かない。筋肉を無理矢理収縮させてるのか……

 目玉がスティフの方を向く。やばそう。


 魔力から岩が生成されていく。


 カーボンナノチューブのロープをスティフの剣の柄に巻きつけて引っ張る。すると剣は抜けて、スティフに魔法も当たらなかった。


 俺の方を睨みつけた後、スルスルと回り込んでくる。魔力障壁で警戒は解かない。にしても体長すぎだろ。確か俺の世界でも10m以上の蛇はいないぞ。こいつはそれの軽く倍はある。



 ルビーが飛び出していく。今度は地面を強く踏みしめてなおかつ素早く。するとルビーの進行方向に大きな岩を落とす。ルビーは砕いたり乗り越えたりしていくが限界があり、一旦後退する。防御力も回避力もあって手出しできねえ。どうすりゃいいんだ。


 頭を巡らせていると横からバギッという木の折れる音がする。


 

そっちを見ると長い胴体が俺の横からなぎ払ってきた。魔力障壁はそっちに貼っていない。


 なんで、魔覚がなかった? 答えはすぐにでた。魔力を発するのは心臓付近の魔石、尻尾なんかから出るわけじゃない。





 巨大な向かってくる物体に、フラッシュバックする。死んだ時の光景が。全速で魔力障壁を貼れば間に合ったかもしれない。でも動けなかった。あの時は動けたのに、僅かな可能性にかけた行動ができたのに。

 どうして動けないか、わからない。


 左から衝撃がくる。吹き飛ばされる。受けた左腕がめちゃくちゃ痛い。そんなことを考えると今度は右から衝撃がくる。地面にぶつかった。顔が擦れ、右手は体の下敷きとなる。


 痛い。今までの中で死ぬんじゃないかっていう痛みだ。殺すつもりで来たんだから当然か。


 痛い、痛い、痛い痛い。どれほどそう思っても声はうめき声しか出ない。

 ルビー達が俺を呼ぶ声が聞こえる。だけど何がなんだかわかんねえ、頭がまわんねえ……脳震盪でも起こしたか?

 意識が薄くなっていく。自分の弱さを感じながら意識を手放す。

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星一評価、辛辣、一言感想でも構いません、ちょっとした事でも支えになります。世界観や登場人物の質問もネタバレにならない程度に回答します。(ガバあったらすいません)

科学質問も出来る限り回答します(ネット知識なので大したことはできないしガバガバですが……)


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