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科学少年の異世界戦争  作者: 歯並び悪い人
戦争準備編
83/84

インドア派の登山

 屋敷についてから一泊した。そして朝から出発になる。だいたい一日竜狩りに費やす予定だ、山に入って竜を狩って解体してとかなりハードだからまたここに一泊することになる。

 とにかく今日一日かなりきつい。頑張ろう。


 ――登山かあ……絶対足手まといになる。


「タカハル様、どうかなさいましたか?」

「いや、俺に体力が無いことを心配してた。ちゃんと山登ったこともないし、長く歩くのもそんな慣れてるわけじゃないし」

「山頂を目指すわけではないので大丈夫ですよ」


 中腹まで行けるかも怪しいんだよな……


 麓まで来た今から登る山を見て考える。標高軽く1000mあるぞ、しかもこの傾斜を何分歩くんだよ。


 ……言い出したのは俺だ。


「行こうか」


 そう口にするとアゲートが「はい」と返事してから先行して足を進める。それを俺たちがついて行く。

 いつもより軽い格好になってて歩きやすいが、それでも多分俺の世界の登山装備とはだいぶ劣るだろう。仕方ない、雪山登るわけじゃないから長袖長ズボンで動きやすいので十分だし。

 ……竜だらけの山って言われてどん地獄みたいな環境かと思っていたが、意外に普通の山だった。普通に植物もあるし虫はいるし、小動物も遠くに見えたりする、それに歩ける程度に道もある。そんなにバンバン竜とエンカウントするどころか、まだ一匹も見えてないし凶暴な生物の気配もしない。それに魔覚も反応なし。少なくとも数十m以内にはいない。


 本当にたくさんいるのか? 何日かかけてようやく一匹とかなるときついぞ。



 ……ちょ、まって、全然いない。結構歩いたと思うんだけど。

 ちょっとした段差を乗り越え木に体重をかける。疲れた……


「タカハル様、大丈夫ですか?」


 ルビーが体を支えて心配そうに声をかけてくる。


「ほんと、運動してこなかったから……」


「大丈夫かい? まだ一時間も歩いてないよ」


 スポーツ科学でバリバリ鍛えられたアスリート、あと国のトップレベルのエリート集団と一緒にするんじゃねえよ。

 ヘラヘラ笑うスティフに横のルビーが睨みつける。漫画のゴゴゴとかいうあれが実感できた気がする。


 結局、俺の体力の問題でなし崩し的に休憩した。スティフとデーナは多分不満気な表情をしてる。言い出しっぺがこんなんだから、悪いとは思うけど、運動はな……


「魔法で移動した方がいいのかなあ?」

「おすすめはしません。その、タカハル様は戦いになると大抵魔力を使い過ぎてしまうので、こういう時は節約した方がいいかと」

「う、気をつけます……」


 言われてみれば確かに戦ってるとバンバン魔法使いすぎて、終わる頃には枯渇気味になることが多い。なんか、たぶん魔法打ってるうちに興奮して無駄撃ちがすごいおおくなってるし、あと原因は魔力液体を戦法に使ってるからだろうな。あれ囮としてすげえ優秀なんだけど、やっぱやめた方がいいか。あと戦ってる時魔力が減ってる感覚が無いんだよな、普段魔法使ってるとなんか胸のあたりが疲弊する感覚はあるけど。アドレナリンかなんかのホルモン系が作用してるとかか?

 わからん。


 五分くらいしたかと思うとルビーが「もうそろそろ行きましょうか」と言って俺に手を差し出す。

 頑張るか、今日一日頑張ればいいわけだと思うし。



 しばらく歩いているとバギッというまるで木が折れる音が聞こえた。他にみんなも聞こえたようだ。ただそっちの方を見ても何もわからない。

 目を凝らしていると横のルビーがパルクールのごとく木を登っていった。登るとかいうより飛んでってったとかの方が近い。


「どう、ルビー?」

「はい、二匹います。戦ってます。ただ遠くにいるので、向かうのは現実的ではないかと」


 それじゃあ仕方ないか。


 するとデーナが「行かないの?」と半分駄々をこねる。


「まあ、山だと遭難の危険があるからな。相当なことがない限り、事前に決めたルートから外れない方がいいな」


 そう言うと渋々わかったぽい。本当に自然ってのは危険だからな、ここみたいなのは特に。

 存在は確認できたけど、そんなに多くいるっていうのはまだわからないな。もしかしてかなり多いのは他と比べてってみたいな意味なのか……



 ……それからルビーが降りてきてまた歩き始める。ルビーによると遭遇するにはまだまだ早い、と。――心折れそう。


………………


「ここらから特に遭遇しやすくなります。タカハル様、いつ出てきてもいいようにご注意を」

「や、やっとか……」


 はあはあと息を荒くしてルビーに反応する。気温は低いのにやけに暑い、ただ手先や耳は冷たく感じる。

 ここまで来たからといってもう歩かないわけじゃない。――出来る、出来る。活性酸素によってミトコンドリアで電子伝達系が阻害されてATPの産出が少なくて細胞機能が低下してるだけ、呼吸を深く、酸素を取り入れろ。



………………


「やっぱ無理……」


 足が疲れてる通り越して痛い。普段運動しないくせに筋肉を酷使しすぎた。俺が弱音を吐くとまた休憩になる。山登るのって、こんなきつかったか?


「呼吸が、辛い――そんなに高いかここ?」

「登った距離は、その、長くはないですけど、そもそも町が高いところにあるので」


 ルビーが俺が駄々こねるのが早いのを遠回しに言おうとした。そもそも登り始める時から海抜高度が高かったのか。

 俺が動けないのでまた休むことになる。


 呼吸を整えながら、足や腰を休める。これが続くって考えるだけで相当きつい。――ネガティブ思考でまともに休めねえ。寝るつもりで休もう。




 近くで魔力が少し動いたのを感じる。目を開いてそっちの方を見るとルビーが大剣を持って俺に背を向けていた。その姿を一瞬見ると、ルビーは前に飛び出していった。理由はそのあとすぐわかった。大きめな魔力を感じた、人間ではあり得ないような。

 正体はトカゲ、ただとにかくでかい。コモドオオトカゲなんて比じゃない、頭から尻尾まで5mはある。それが飛び込んできた。ルビーが大剣を振り下ろすが、当たらない。空中で身をねじって紙一重で躱していた。


 杖を持って立ち上がる。くそ、疲れがまだ取れてねえってのに。

 トカゲはルビーの攻撃を避けたあと、俺たちと距離を取りつつ、俺をガン見している。やっぱり魔力が多いやつ狙いか。



「〈高運動エネルギー弾〉」


 小さい弾を五十発、ある程度間隔を空けて撃つ。飛んできてるのがわかっても銃弾と比べ物にならないくらい早い弾だ。避けようがない。


 ――着弾地点の木や地面に小さい穴が開く。トカゲに当たってない。横に避けていた。どうやって……!


 混乱していると魔力を感じた。トカゲの周りに岩が形成される。すぐさま飛んでくる。全速力で魔力障壁を作る、ちょ、間に合わない……!



 俺の意思ではない魔力障壁が前に出る。サティエルとサルトロのだ。死ぬかと思った、思わずため息が出る。


「タカハル様は防御に徹して!」

「お、おう!」


 ルビーに言われて魔力障壁を張る。まあ、うん、俺がいきって足引っ張る方がダメだよな。


 ルビーが大剣を振り回して地面が砕ける音がする。が、当たっている様子がない。トカゲは紙一重で避け続けている、ルビー相手にあんなに避けれるのやべえ。竜ってこんなに強いのか……


 呆然としていると俺の横をスティフとデーナが走っていった。


「〈部分竜化解除〉!」


 アゲートとスティフ、デーナがラッシュに加わった。急所ではないが攻撃が当たり始めてる。特にスティフの剣は目で追えないほど速い、残像が何個か見える。

 ふとした時、ラッシュが終わる。気づくとルビーの大剣が首を切り落としていた。


「おお……」


 三人が凄すぎて感嘆の声しか出ない。


「前衛があれだと、私たちが出来ることありませんね」


 サティエルの声で我を取り戻す。杖を腰にしまって三人のところへ歩く。寄ってみるとルビーがナイフで解体し始めていた。行動がはやいな……


「魔石です」


 ルビーが見せてきた血が纏わりついていたそれは紫色で卓球ボールくらいの大きさだった。あの巨体とはいえ心臓付近にこんなでかいのくっついてんのかよ、心臓と肺に支障きたさないか?

 アゲートが魔石を洗って袋に入れる。するとルビーが死体を木の枝にかけ、サティエルが杖をかざすと干からびていく。その光景に「これは……?」と口にするとサルトロが持って帰る必要があるけど巨体なので帰りに回収していくために乾燥させている、と答えた。確かにこれ持って移動はきついな。


「タカハル様、疲れの方は大丈夫ですか?」

「ん、ああ、問題なく歩けるくらいには回復したよ」

「でしたら、もう行きましょう」


 ルビーに返事をして、進み始める。こんだけ戦力いれば大丈夫そうだな。

ご閲覧ありがとうございました。よろしければ評価、感想をお聞かせください。気軽にお願いします。


星一評価、辛辣、一言感想でも構いません、ちょっとした事でも支えになります。世界観や登場人物の質問もネタバレにならない程度に回答します。(ガバあったらすいません)

科学質問も出来る限り回答します(ネット知識なので大したことはできないしガバガバですが……)


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