鳥避け
夕方あたりに王様の演説があった。ファンタジー作品とかでよくある城の正面にベランダみたいに出ている場所、バルコニーとか言うんだっけ。そこで国民に向かって話していた。
近くの魔法使いが音を大きくさせる魔法を使っていた。昔からこんなかんじなのか。俺にもできるかな、波長、周期そのまま波の振幅大きくするんだろ、今度やってみるか。
肝心の内容は、平原の例のあれは転生者がやったことで、成果は成功。将来的にレックス国に対して空から攻撃する――だとかなんとか。ハッタリがひでえ、時間があればできるけども。
窓から少しだけ城の外の方を覗いてみたけど、盛り上がりがすごかった。プレッシャーが今になって辛え……でもできることはやろう。まずは鳥対策だな。具体的にはバルーン部分に竜とかの魔石をまぶして鳥の魔物避けにする。
「――と、いうわけで大量の魔石がいる。それもかなり強めの魔物の。方針としては竜を狩りまくる、だ。多くいる生息域もあるみたいだし」
中庭に集まり、気球の改良案を護衛に説明した。
「事情はわかりましたが、大量となるとすぐに用意するのは難しいですし、多く生息している場所に行ってもそれに必要な戦力が少ないでしょうし――」
「俺、ルビー、サティエル、サルトロ、アゲート。それにスティフ。あとできてデーナか」
そう言い終わると、サティエルが冷や汗をかきながら苦笑いをしているのがわかった。行きたくないのか……そんなにやばい魔物なのか?
少し考えていると、サティエルは一息ついた後視線を前に戻して話し始めた。
「タカハル様、はっきり申し上げますと、危険です。一匹や二匹ならまだしも、複数いる場所に自ら赴くなど……それにこの季節、食欲が増して行動も活発になっています」
「問題ない、知能が低い種なら私だけでも簡単。第一タカハル様が必要だと言っている」
俺の横にいるルビーが話し始めた。それに対してサティエルが少し体を出して反論する。
「今すぐ必要な理由が見当たりません。それに、群でいる場合だってあるんです」
「それでも問題ない。そもそも群れる竜は弱い種族だけ。それに私だけじゃなく――」
ルビーとサティエルが喧嘩――とは少し違うが議論にしては感情的すぎる。そんな感じで言い合っていた。
「サティエル、ルビー。別に竜にこだわらなくてもいいんだ。他に鳥の魔物が逃げてくようなものなら。とりあえず、竜は置いといて別のものは思いつかないか?」
そう言うと二人は考え込む。自分も何かないかと思考を巡らせていると横からサルトロが声を出した。
「同じ種の魔物魔石や羽などはどうでしょうか」
「うーん……一羽あたりの魔石の量がな、それにそもそもあいつら同士で争うこともあるみたいだし」
あの種類の鳥について調べてたら色々わかったことだ。食料、巣、パートナー争いで何から何まで好戦的。というかそれ以外の多くの魔物も。
そして実際に見たんだが、あの魔物の魔石は小さすぎる。小指の爪くらい小さい。
「――竜以外ですと、海に出て遠くの海にいる魔物を狩るなどでしょうか」
「それですと竜以上に危険です」
ルビーの言葉にサティエルが反応する。
「海に竜並みに強いのがいるのか?」
「はい、遠くに出れば魚などが魔物化して相当格を上げたのが多くいます。残念ながら私は一度もそこへは行けていませんが」
まあ、遠洋に出るのも難しいだろう。魔法があったとしてもそもそも戦争しているからそんな船を作る余裕もないだろう。基本陸で戦ってるわけだし。
うーん……魔物討伐以外でもいいんだ……
「飛行能力のある魔物とか飼い馴らせたらいいんだけど……」
「どうでしょう……大昔からいろんな方法を試してますが失敗していますから……前例はプラメアー様くらいでしょうか」
サルトロが話しながら腕を組む。うーん、凶暴性は段違いって聞いてたからな。やっぱ厳しいか。
「竜以外の魔物ですと、比較的多くて強いのは、熊か狼くらいです。それでもそこの竜の量に比べたらかなり少ないです」
竜しかないのか? なにか、可能な限り安全策で……あるいは今まで見た魔物のなかで強そうなやつ……
「あ、あの貝は? バケモノガイとか言ったやつ」
「大きいのは貝殻だけで、魔石は小さいですね。親指一本分くらいしかないです」
「だめかー」
そういえばそうだ、中身は殻と比べてかなり小さかったな。
あー、じゃあどうすればいいんだ?
毒で安全に竜を……ダメだ、毒を食べた個体をずっと追うことができねえ。一網打尽でもいいけど周囲に被害が出る可能性ががある。
「近くに襲撃してくる竜を逆に倒してる竜素材の産地があるんですけど、普通にそこにもらいにいくのはダメなんですか?」
「え、アゲート。できるのか?」
最初っからそれでいいじゃん。
「いえ、素材はすぐにでも加工されに送られるので渡してもらえる余裕はないでしょう」
サルトロが答えた。これもダメかあ。俺のとこだと鳥はキラキラ光るものに弱いとか言うけど、慣れられると意味なくなるんだよな。そもそも魔物相手に初見でも効くか怪しい。
「すぐにやらなきゃいけないことじゃないから、最悪一時的に諦めるって言うのも手だが――」
「それはダメです!」
ルビーが声を上げた。それに対してサティエルが怪訝そうに聞く。
「それは……なぜですか?」
「私がタカハル様と一緒に乗りたいから」
自信満々に胸を張ってそう言った。サティエルはそれを聞くと呆れたような顔で口を開いた。
「タカハル様、流石に後回しでもよいのでは……?」
「いや、できる限り急ごうか」
「…………いやいやいや、タカハル様、流されやすすぎです!」
「まあ、遅かれ早かれ鳥対策はやらなきゃいけないんだ」
ま、ただの建前だけどな。多分サティエルも表情からして気づいてる。ルビーに甘々なのは自覚している、だけど困ることはないからいいだろう。
「方法は安全なのが一番いいけど、他の案がないなら……行くしかないだろうな」
そう言ってみんなの顔を確認する。ルビーとアゲートは期待に満ち溢れた顔、サルトロは納得している様子。……サティエルは諦めたような表情をしている。
「そういえば、その場所はどこらへんだっけ?」
「ここから北東へ馬車で半月ほどです」
ルビーが即答する。馬車で半月か、魔道具の車が速さで1.3倍くらいだから……距離を15とおいて、1.3で割って十一日ちょいか。
「よし、できるだけ早く出よう。すぐにってわけじゃないが、冬になって雪が強いと厄介だ」
「かしこまりました、すぐ準備させます」
「泊まる場所など決めなくてはなりませんからね」
サルトロがルビーに続く。するとサティエルが話しかけてきた。
「そういえば、スティフさんは連れて行くのでしょうか?」
「あー、どうだろうな。まあ、嫌がってたりしたら置いてってもいいだろ」
………………
「えええ!? 竜倒しに行くの!?」
「声でけえ」
スティフの出した大声に多少のびっくりしながらも「おう」と首を縦に振って答える。
「で、お前行く?」
「行く!」
「わかった。じゃ、遠出の用意しとけ」
「ちゃんとした竜は初めてだなあ。竜とは呼べないくらいのごっついトカゲくらいしか戦ったことないからなあ。やっぱ男の子の憧れだね」
「――俺らのとこだと空想の生き物だったからそうだけど、ここだとどうなんだ?」
サルトロとアゲートの方を向いて話を振る。だが予想した答えは得られない。
「えーと、私は護衛のためだけに育てられてきたのであまり他の人のことはわからないですね」
「自分もです。兄上たちは戦争で戦果を挙げるとか言ってたような気がします」
そっか、こいつら貴族レベルで、なおかつ護衛に選ばれるためだけに教育されてきたんだったか。だから外部との接触がほぼないとかなんとか……
聞く相手を間違えたな、だけど現地男子勢の他に聞けるやついないし。
竜とかよりも戦果を挙げるとかの方が人気あるのか……?
ま、いいや。部屋に戻ってさっさと準備するか。
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正月あったのに投稿できず申し訳ございませんでした。




