ストライクバード
「本当に……本当に飛んでいるんですね! 夢じゃないんですね!」
「ああそうだ、夢なんかじゃねえ!」
飛行機には乗ったことあるが気球は初めてだ。全方向360度大空からの絶景だ。だけど少しでも身を乗り出すのは怖い。
「 見てください! 王城があんなにも小さいですよ!」
「ああ見える。あの城の軽く数十倍は飛んでるからな」
俺とサルトロで興奮度が段違い。当たり前だ、俺もかなり昔初めての飛行機はかなり興奮してたっけか。
「そんなにすごい?」
「すごいですよ!!」
「ああ、飛行能力の持たない人間が科学で生身で絶対できないことをやってのけたんだ。これがすごくないわけがない」
空飛べる種族の人にはそれがわからんのです。
「ま、特に鳥の姿もないし、しばらくゆっくりしてよう」
「そうですね。ところで、今どのくらいの高さなのでしょうか?」
「もうそろそろ1000mくらいだな」
「1000ですか!? 落ちたら怪我どころじゃないですね」
「ああそうだな。ま、くれぐれも気をつけてくれ」
そう言って光景を眺める。サルトロほどではないがやっぱり興奮する。城以上に王都を一望できる。こうファンタジー的な景色を生で、見ることはできなかった。空から見てふと思った。
しばらくすると遠くに小さな影が見えた。
「さてと、そろそろただの遊覧飛行は終わりだ」
そう言ってバッグから望遠鏡を取り出す。
「タカハル様、そちらは?」
「望遠鏡、遠くを見るための道具。普段は魔法で代用してたが。凸レンズ二つ合わせただけのお粗末な作り方だが十分使える」
そう言って影に対して望遠鏡を向けて覗く。
「間違いなくこっちに向かって一直線に向かってきてるな。一匹だけなのが幸いだな。見えるか、サルトロ?」
「はい、流石にまだ狙えませんが」
そう言って銃の準備を始めた。火薬と玉を詰め、火縄にバーナーの暖炉から火をつける。その一連の動作中、向かってくる鳥を見据えたままだった。
そして跪いて構えた。まだ軽く数100m以上は離れているが――と思ったが鳥は結構早いスピードで近づいてきていた。50m/sとかは猛禽類だとあり得るか。
そう考えていると急に爆音がした。銃の発射音だ。すると目を鳥の方へ戻すと、いない。ちょっと視線を下に移すとその鳥は落下していた。
「っておお、予想はしてたがやっぱ揺れるな」
そうは言うものの揺れ方は問題ない。そのうち収まる。
「すげえな、この距離で当たるのか」
「――はい、ですが頭を狙ったつもりですが翼に当たっていました。やはり普段使っていないものだと難しいですね」
んな無茶苦茶な。ゴ○ゴ13かよ、しかもスコープなしだろ。
「ま、この後も来たら頼むよ」
あれ、そういえばデーナどうした? そう考えると座り込んで目を回していた。
「おっひいおと…………」
「でかい音はダメなのか」
「竜種は感覚が敏感ですから、恐らくその分……」
なるほど。竜とか言うと派手に戦って爆音が鳴り響くイメージだけど違うのか、あるいは不意打ちだからか。
すると目の端にまた影が映る。それが複数。
「また来たぞ。さっきの銃声が原因か」
「はい、恐らくは」
そう言ってサルトロは銃の用意を始める。銃口を上に向け、火薬と弾を鉄の棒で詰める。その棒を床に置くと、一番近い鳥を狙い始めた。
念のためデーナの耳を塞いでおく。
ほんの少しすると引き金が引かれまた爆音が鳴る。
するとデーナがビクッと体を震わせて意識を取り戻した。
「起きたか」
「――うん。うぅ、ツノが響く……」
「響くんだそれ!?」
そう言っている間、サルトロが次の準備をしていた。鳥の魔物も大分近づいて来ていた。それに気づいてすぐサルトロが銃を構えていた。
「耳塞いでおけ」
そう言うとデーナは手で耳を押さえた。サルトロはちらっとデーナを確認すると視線を鳥の方に戻した。
大分揺れてるが当たるのか?
そんな不安は杞憂で当たっていた。
が、
「やべえな、二方向から来てもう大分近いぞ」
「――片方しか無理です」
「しゃあねえ、片方は任せた」
バッグから小さなそれを取り出す。
すると後ろから銃声が聞こえた。籠が揺れる。
まだだ……まだ、引き付けろ……
近づいてくるにつれ、影が大きくなる比率が増加していく。
鷹のような顔がはっきりと見え、明らかに敵視する目が入る。めちゃくちゃ怖いけどまだだ、まだ俺の技量じゃ……
――ほんの10m程の距離となる。腕を合わせろ、大丈夫、向こうは曲がらず真っ直ぐ向かって来てるだけだ。
今!
平べったい直方体の真ん中につけられた車輪を回す。
するとサルトロの程ではないが爆音がなる。
「っ……」
慣れない爆発の反動で
鮮血が少し見えたのと同時に鳥は重力と慣性に従い気球の下を通り抜け落ちていった。
「タカハル様、今のは?」
「ん、自作の小型銃。昔っから構想はあったけど俺のとこじゃ犯罪になるから作れなかったけど。仕組みは火打ち石と同じで鉄粉混ぜた火薬に石で摩擦を起こせば発火する。構造はともかく専用の火薬がめんどくせえ」
一々鉄粉を作るのが大変。それに要は火打ち石だから着火の確実性に欠ける。今回は良かったけど。
とりあえずの幸運に安堵して座り込むと下から衝撃を受ける。それにバサバサと音がする。
すぐに三人で下を確認する。すると頭の羽が弾丸が通ったかのように削がれた鷹が籠を掴んで暴れていた。こいつさっきのじゃねえか!?
「くっそ、さっきのやつ掠っただけかよ!」
サルトロが銃で叩いているが効果が薄い。今使える手札は……くそ、投げつけるくらいしか使い道ねえ。
「えい」
そんなデーナの声が聞こえる。それと同時に鳥に向かって火の玉を投げていた。すると強い揺れは収まった。
「そういえばデーナは魔法使えるんだったんだな……」
さっきの俺じゃなくてデーナで良かったじゃん。
「ん!!??」
「うわっ、どうかなさいましたか?」
「魔覚あるんだけど!?」
「「…………?」」
「いや、あのな。上空だと魔法が使えない。だから魔石が機能していないと思ったんだが、魔覚があるってことは魔石自体は機能してるってことだ。つまり魔力を放出することはできなくても受け取ることができる。ってことは地上付近に魔法を使うのを助ける何か、もしくは上空にある魔法を使わせない何か、これは魔石の一部にしか作用しないってことだ。これは上空で魔法が使えない問題に一歩近づくぞ!」
そう熱くなって説明する。だがデーナはともかくサルトロもあまりことの重大さに気づかない様子。
ああ、とにかく大量の種類の計測機が欲しい。今使いたい。
その後は特に鳥が襲って来たりもせず、問題なく風に従って空を飛んでいった。
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