織り機完成……?
「ただいま戻りました!」
「お待たせいたしました。」
「おうおかえり。返ってきたってことは傷は治ったんだな、じゃ手伝え。」
そう言って木材をやヤスリを渡していく。
「病み上がりの人にこの仕打ち……」
「知ったこっちゃねえよ。信頼できるやつの人出が足りねんだ。」
お涙頂戴してる暇なんかないっての。冬になって気流が荒れる前に気球の試運転だけでも終わらせねえといけねえんだ。できるなら飛行機まで。
「信頼――」
「できる――」
やべ、地雷踏んだ。
「この私、身を粉にして――」
「フローラ、この二人連れてっていいぞ」
そして腰につけられた義腕で連れて行かれる。すっげシュール。
ま、俺も作業進めるか。
土台にちょっと部品が増えたくらいの本体に足をかけ登る。
「スティフー、そのハンドル左に回してくれ。」
「いいよ。これかい?」
「違う、その左。」
「これね……回らないよ?」
「逆だ逆! それ右回りだ、反時計回りだよ、アホか!」
そんなこんなしながらして下の方のギアが回転して滑車が回る。一番上まで上ったとこで作動する部品を取り付ける。
「〈ドライバー〉っと」
名前がそのまんまとかいうツッコミは受け付けない。釘を回して金槌なしに入れるのに名前がそれしかなかった。本来ならネジだが。
「おお! なんですかそれ!」
「ん? 回して無理矢理いれてるだけだ。」
そう言うと「なるほど」とか言いながら早速真似していた。やるのはいいが色々と無駄にすんなよ……
フローラを後にしてストッパーの糸を上から通して下へ降ろす。そのままギアにくっつける。スティフをどかして操作に問題がないか確かめる。
「よし、問題なく動く、次だ」
届いている金属リングを木の棒に通していく。
一気にいくつか落としてジャラジャラと音が鳴る。
「これ、いくつあるのでしょうか……」
「軽く150……が2セット」
これだけで道のりが長い。
「ルビー、やることないならそこの棒で同じように入れといてくれ」
「かしこまりました」
……よし、とりあえず1セット目終わった。これを取り付けて――重い。だがただの重さ程度、魔法の前では――
折れた。棒の強度が足りずジャラジャラと音を立てながら努力が水の泡になっていった。
「タ、タカハル様――」
「ルビー、ストップだ。それは持ち上げるな」
どうすればいい? 単純に某の強度を上げるには素材を変える。それだと今度は本体の方が耐えられないんじゃないのか? そもそもこれがどれだけ重さがあるんだ?
体積が内円の半径、筒の中心まで3cm。筒自体の半径が0.5cmくらい……概算(1/2)^2・π・2π・3……3/2・π^2……15cm3ちょいか。
鉄の密度が8g/cm3弱……120g・150で18kg。そりゃこんな貧弱な細い木の棒じゃ折れるか。
どーするか……
分けるか。単純だが効果的。
ルビーに溜めたリングをそのまま流用して半分を使う。不安はあるが問題なく使えた。
これを本体に取り付ける。これだけなら難なく稼働する。問題はもう150個だ。
……その残りを取り付ける。
「よし! これで稼働面では問題ない。もう1セット取り付けるぞ」
………………
お、終わった。人生で作った機械の中で大きさだけだったらトップレベルだ。
「織り機を作るのはこんなに大変なんですね……」
「ああそうだ、ルビー」
普通のに比べて密度と量特化だから構造は簡単だが大きさと単純作業量が多かったがな。
「いやー、こういうタイプのは普段作らないっすから新鮮でした!」
「そういうポジティブに感じるのは僕は無いかな……」
「ま、とりあえず糸が来るまでは休もう。」
もう日が沈みかけている。日没が早くなってきた。時間が流れるのが早く感じる。初体験が多くてジャネーの法則から体感時間は長いはずジャネーのか?
……これ俺がおっさんになってるだけじゃ? ダジャレが我慢できないのって脳の連想記憶の暴走と前頭葉の老化とかだった気が…………
――――――
「クソクソクソクソ!!! 転生者もあの護衛も絶対殺してやる!」
「転生者は殺すな、生け捕りにしろ」
砦に着くなり無能が煩い。壁を殴って何の意味があるのか、やはりこいつはバカに違いない。
「悔しくないのかよ、襲撃全部失敗してるんだぞ! どうなんだよオブシディア!」
「あいにくそんな低脳そうな感情は持ち合わせていない。それに一つはキサマらが無駄なことしていなければ成功したであろう」
……都合の悪いこと言ったら黙りこくる。反吐が出る。
それはともかく、奴に対しての隠し玉が減ってきた。かと言って物量作戦も奴には効かないだろう。ここ数年の歳月をかけた研究の成果をことごとく踏み潰してくる。
これだから転生者とかいうやつは。
「話は変わりますが、例のはどうでしょうか?」
「進捗なしだ、前に城に襲撃した時も成果はなかったしな」
「そもそもあんなのが本当に重要なのかよ、ただの落書きにしか思えねえよ」
「黙れ無能。あんな緻密な落書きがあるか」
皮肉なことに、あの転生者によってオレサマの好奇心は増幅される。
「ここまでやってダメなら、古典的戦術だろうな」
「はあ?」
「人海戦術だ」
国全土に例の絵を写したものを国全土にばらまく。多額な金を懸ければ国の無能どももやる気になるだろう。流れ転生者が出ればなお良し。
――それにしても、もう既に魔法を使用できる高度条件まで詳しく知られていたとは。魔法がない世界出身というのは本当か?
奴に関する情報を集めるにしても時間切れだ。ここから城まで行くころには冬が来ている。仮に転生者を殺したとして帰れない。俺が生きていないのならば意味がない。
こんなこと絶対に誰にも知られるわけにはいかないがな。
そもそも全速力でなんとか間に合ったとしても無策で単独で攻めてもこの天才ですら無謀だ。
仕方ない、国に籠っているとするか。無能未満の分からず屋の老いぼれどもと近くにいるのが癪だが致し方ない。
何にしろ、例の設計図が何を意味するのか考察するしかあるまい。
「ま、護衛の一人は殺せたんだ」
「どうだかな。確実に毒が入った例の護衛王女も何故か助かっている、九割方転生者の仕業だろう。今回も殺せたとは限らない。それに、どういうわけだ凡人。転生者まで狙うなど」
「それについてはもう話しました。確実にあなたを助けるためです」
「チッ、ほんの数秒落ちれれば問題など無いというのに」
やめだやめ、やはり話は平行線にしかならん。結果として助かっているのだから良いが。
あとは、例のきな臭い商会の監視だ。知識を提供したとかいう流れ転生者、完全に転生者といたやつと同一人物だ。一体何をしようとしてるのか。南方諸国に売っている大量の砂糖か? それだけであんな大々的に流れ転生者を紹介するか?
――どうにかして奴をこちら側に引き込めないか? 金でどうにかできるのだったら楽だが……そもそもあいつは本当に流れ転生者か? 妙に精霊が懐いてある程度の実力は持っているが、確信はできないな。
全てを疑え天才、凡夫と天才の差はそこだ。
ちょっとしたお話
「順番がおかしいけど、回復おめでと。あの毒から生きて帰ってくるのすげえよアゲート。」
「そんなですか、タカハル様のおかげだと思うんですが。」
「いや、それでもだ。あの毒は血中に入ったらほんの僅かで死ぬ。神経に入り込まれて本来の信号を何十倍何百倍にもするっていうえげつない毒だからな……どうかしたか?」
「もしかしてその毒を乗り越えて神経が前より強くなってたり……!」
「しない」
「……いや、ほんの僅かの可能性でも……」
「ない」
「……」
「……」
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科学質問も出来る限り回答します(ネット知識なので大したことはできないしガバガバですが……)




