表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
科学少年の異世界戦争  作者: 歯並び悪い人
戦争準備編
70/84

自分にしか

 アゲートとサルトロの方へ駆け寄る。


「タカハル様!」


 ルビーが叫ぶ。右から一体、左後ろからもう一体近づいていた。


 邪魔だ


 粒をそれぞれの脳天へ貫通させる。バタッと二つの音が後ろでした。化け物二体が倒れた音だ。

 さらに二発撃つ。ルビーとサティエルが対処していた敵の脳天を貫いた。


「サティエル、サルトロを任せる! スティフ、弾いたナイフ持ってこい!!」



 アゲートの状態を確認する。右手の甲に深々とナイフが刺さっている、見ているだけで痛々しい、なんとかしてやりたい。


 アゲートの袖を切った。それを腕の付け根にできる限り強めに巻く。

 スティフが走ってナイフを持ってきた。それを受け取る。


「無色……液体じゃねえ、かなり小さい結晶がついてる。白いその結晶に所々粉のようなのが見える、無臭……」


 この結晶を一度見たことがあった。母さんに大学に連れられた時に一度。


「アコニチンじゃねえか!?」

「そ、それは一体――」


「時間ねえ、あとで説明する!!」


 クッソ、なんでだよ。ルビーの時は蛇毒だから時間の猶予があったがこれはもう数十分も耐えられないかもしれない。


 もう刺さった手の痙攣が起きている。ほぼ間違いねえ。


「アゲート、抜くぞ」

「! はい」


 手でナイフを持ち、傷に触れないようサッと抜く。アゲートは涙目になり、歯を食いしばりながら耐えている。


「アゲート、魔力を抑えろ、無理矢理お前の体を弄る。お前を助けるにはこれしかねえ……!」

「は、い……」


 呼吸困難も始まっている。


 アコニチンが身体を毒するメカニズムはナトリウムチャンネルを活性化してしまうことが原因だ。それで痙攣、果てには心臓発作まで起こす。


 やることは心臓のナトリウムイオンチャネルの防御、いや脊髄から心臓までだ。迷走神経をアコニチンから全力で守る、脳は血液脳関門っていう脳の最強の門があるから大丈夫のはず、医者じゃないから断言はできない。そうじゃなかったらもう俺の手じゃ無理だ、だから信じるしかない。


 アゲートの胸の奥、心臓に魔力を送る。


「ッ――!!」

「頑張れ、耐えろ!」


 うめき声を出すアゲートにそう叫ぶ。身体に魔力が送られる、それも魔石に近い心臓に。かなり辛いだろう、だが耐えてもらうしかないんだ。


 魔力をナトリウムに変異させてアコニチンと結合させる。そして血液に持っていかれないようにする。それに血中の酸素と結合してしまわないようにすることも気をつける。ちょっとずつ、ちょっとずつアコニチンを捕まえる。捕まえたところで血中に残ったら意味がない。だから右手の失血部分まで持っていき、体外へ出す。


 左手や足先の痙攣も始まり出した。心臓だけでも、心臓だけでも……!


 精神がすり減らされる。ちょっとミスしただけで命を奪う。

 心拍数がかなり早い。だがこれ以上ナトリウムの量を増やしたら血液を止めかねない。


「タ、タカハル君――」

「うるせえ黙ってろ! 集中できねえ、敵なら任せる」


 顔から汗が落ちる。緊張で呼吸がまともにできない、だがアゲートの方がもっと辛いはず。


 恐らく俺にしかできない芸当、俺が助けなきゃいけない。失敗は絶対に許されない。

 やってやれないことはない。洞房結節の周囲には絶対にアコニチンはこさせない。そのほかの心臓の筋肉にもだ。


 あとはアゲートが、耐えてくれるかだ。


――――――


 タカハル様が必死にアゲートを助けようとしている。その邪魔は絶対にさせない。

 周りの黒い化け物どもをなぎ飛ばしながらタカハル様のことを想う。


 奴らの頭蓋を割ることさえ困難だが、対処は慣れてきた。知能はかなり弱いから攻撃は単純だ。それに首、気道まで筋肉や骨はない、そこに当てれば殺すことは容易い。



 何か感じる、悪い予感を。

 このまま相手が引き下がるとは思えない、逃走するにしてもないか置き土産するのじゃないのか?


 そもそも向こうの目的はタカハル様の身柄では? それがなんで殺すほどの毒をタカハル様に向けて?


 ……向こうは一枚岩じゃないのか? ――まずい、タカハル様を誘拐するのを守るのは簡単だったがあれほどの能力を持った者から殺害するのを守るのは厳しい。しかもかなり離れてしまった。


 急いでタカハル様の側に戻らないと。




 視界に映った。一人の黒い髪の男、見覚えがある。タカハル様を誘拐した憎き人間の一人。

 私とタカハル様の対角線上、走っても間に合わない、他の者が役立つとも思えない。


 どうかタカハル様、そのままで大きく動かないで下さい……!


 左足を前に踏み込み、大剣を持った腕を前に突き出す。そのまま大剣を離した。


「ッ――」


 やはりこれは腕と肩への負担が強い。ただハッタリとしては優秀。

 しかし躱された。


 地を蹴りタカハル様の前へ飛び出す。


「武器のない護衛一人いたところで……!」


 低い姿勢からナイフが突き出される。奴らのナイフは掠ることすら危険。こいつではないが、毒で痛い目を見た。アゲートもこの通りだ。


 警戒を常に。


 相手よりもさらに姿勢を低くして手を地につけて敵の首を蹴り上げる。そのまま右手で相手のナイフを持っている。


 そのまま上を取る。左足で首を、右足のつま先で右手首を踏みつける。


「くっ!」


 針。危ない、左手に仕込んでいたのを投げてきた。右手で取れたが、油断していたら本当に危なかった。侮れない。


 右足の力を強くする。ナイフを落とした。

 首を強く踏みつけながらナイフを拾う。


 付いていたのは液体。アゲートにのナイフに付いていたのはタカハル様は結晶がついていると仰っていた。毒はおそらく違う、適当に刺して無理矢理アゲートの解毒方法を聞き出すことはできそうにない。


 だがやってみる価値はある。


 髪を引っ張り上げ、ナイフで軽く頰を切り裂いた。

 そのまま近くの木に投げつけた。


「くっそ、なめやがって――ぐっ」


 首を締め付ける。


「解毒方法を全て話せ」


 言うつもりはないらしい、手を掴んできた。もう一度叩きつけるればいい、何度も。


 足が上がってきた。――刃! 下に叩きつけながら跳躍する。どれだけ武器を隠し持っているのやら……


 情報は得れそうにない。殺すか。



 立ち上がろうとする相手に、持っていたナイフを投げつける。咄嗟にナイフを腰から取り出してくる、弾くつもりだ。


 右からナイフを振り始めた。


 このタイミング、前へ飛び出す。


 相手の真上まで来た。よし、見失っている。体を捻りながら相手へ向くように背後へ着地する。

 首を掴んだ。このまま頭を適当な木に叩きつければ……


 ――魔覚が反応する。背中の何かへ魔力が流れていた。直感が知らせ、離して後ろへ跳んだ。


 その一瞬後、光が見えた。爆発――咄嗟に腕を組む。


「ッ――!」


 急所は問題ないが若干腕を焼いた。だが戦うのには問題ない。


 腕を開くと同時に身構える。――いない。


 左右に首を振るが見当たらない。

 上――違う、見当たらない。足音も聞こえない、すぐ後ろでもない。


 どこ?


 閃くと同時に悪寒が走る。何も考えず後ろへ振り返り地を蹴った。

 いた、タカハル様の方へ向かって木の枝を伝っていた。


 走る先で石を拾う。走っている勢いをそのままつけて斜め上に投げつける。


 当たった。手に当たって動きが止まった、そのままそいつに向かって飛び出す。

 足を掴み地面に叩き落とす。掴んだ力が弱かったのか逃げられてしまう。


 ――持久力勝負、ただ私の方は少しでも判断を誤ったら毒で負ける。勝つためにはタカハル様が戦いに戻れるか化け物を全て倒すか、援軍が来るか。あるいは相手の一瞬の隙をつくか。



 ……遠くから音が聞こえた。ドスドスと大きな足音がする。魔物かと思ったが違う。



「お待たせしましたっす!」


 来た。ゴーレムの背中から頭だけ出したフローラが走ってくる。彼女に向かって声を出す。


「フローラ! そっちに剣が落ちてる、拾って!」


「え? は、はい!」


 その後すぐに敵が攻撃してくるが反撃はせず回避を優先する。ただし絶対にタカハル様のところへは行かせない。


 数秒ほど耐えているとフローラが大剣を抱えてくる。


「投げて!」


「え、ええ!?」


 狼狽えながらもこっちに投げてきた。


「今なんか変な音した! 改良したばっかなのにしちゃダメな音がしたんすけど!?」


 飛んでくる大剣を体を後ろに倒しながら柄を掴む。そのまま足を起点にして回転させ、そのまま地面に突き刺す。

 敵を見据え剣を地面から引き抜く。


 ナイフが数本飛んでくる。それを大剣で横に弾く。そのまま地を蹴り近づく。


 敵も距離を取ろうとする。逃がさない、剣を振り上げる。そのまま斜めに振り下ろしながら急加速する。


 剣が相手の腕、さらにそれを経由して胴まで衝撃が入る。そのまま勢いで相手は転がっていく。

 確実に腕の骨は持っていった。


 だがなんともなくよろけながらも起き上がってきた。そのまま森の奥へ逃げていった。


 追おうと足に力を入れるが目的はタカハル様を確実に護ること。他の方向から襲撃が来ないか警戒する。


 ……来ない。だが警戒は続ける。するとタカハル様が何かなさっている魔覚が消えた。


 終わったのだろう。


「タカハル様――」


 声をかけると少し反応して腕から力が抜けていた。顔をこちらに見せず小さく呟いた。






「……心臓が止まった……」

投稿がこれほど遅れてしまい誠に申し訳ございませんでした。



ご閲覧ありがとうございました。よろしければ評価、感想をお聞かせください。気軽にお願いします。


星一評価、辛辣、一言感想でも構いません、ちょっとした事でも支えになります。世界観や登場人物の質問もネタバレにならない程度に回答します。(ガバあったらすいません)

科学質問も出来る限り回答します(ネット知識なので大したことはできないしガバガバですが……)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 待ってました! と思ったらいきなりの衝撃展開!! やっぱり毒ってやべえ!!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ