魔杖
ハニカム構造魔力障壁はすぐに採用された。あの人勢いすごかったなあ、まだまだ隠し玉持ってないかと言われて扇風機見せたら近接魔法として採用されたので後悔してる。
それでは今日も頑張って魔法の勉強だ。
「魔杖?」
「はい、魔力操作はとても上手ですので魔力操作を補助、魔力効率の上昇させることができる道具です。また、使用する魔石を選び加工することで魔法の属性に適性を出すことができます。今日は特別な魔杖をお渡します」
「わかった。ところで魔石っていうのは?」
「魔物が体内に持つ特殊に魔力を帯びた石です」
俺の世界の異世界ファンタジーとすごい似てるな。絶対誰か異世界行って帰ってきただろ。
「ふーん。それじゃあその魔杖っていうのは?」
「こちらです」
サティエルが箱を差し出しそれを開けると中には黒い金属質な棒に10cmくらいの黒い水晶がついた全体的に30cmくらいのファンタジーチックな杖が入っていた。
それを持つと水晶の方は重力感はあるがあまり重くない。
「それで特別っていうのはどういう意味なんだ?」
「はい、この杖は転生者しか使えないのです。ですが今までの転生者は杖を使ってもあまりわかりませんでした。なのでタカハル様に研究してもらおうと」
「それで最初から中庭なのか。なんで転生者にしか使えないのはわかっているのか?」
「リッチ化した流れ転生者の魔石を使ったということが理由だろうと言われていますが詳しくはわかりません」
「流れ転生者?」
この流れは流れ者とかの意味に近い。
「神ほどではありませんが上位存在に異世界から送られてきた者です。転生者と同じく前世界より何かしら強化されていますが、転生してくる時期が不規則であり、味方になってくれるとは限らないので戦力にはできたらする程度に両国で考えられています」
「リッチ化っていうのは?」
「魔法特化の上位のアンデットになってしまうことです。
リッチ化してしまうのは上位の魔法使いのみです」
流れ転生者さん、かわいそうに。南無阿弥陀、アーメン。というか他人事じゃないな、俺も可能性あるのか……
「そうか、それじゃあこの杖を使った転生者達はどう感じてたんだ?」
「はい、使ったら頭の中に文字のような数字のようなものが杖から入ってきたと」
「おもしろそうな杖じゃないか、そういえば名前ってあるのか?」
「はい、ございます【難数杖リーマン】という名前です。」
「難数ね、わくわくしてk ……てリーマン!?」
同音異義語は頭の中の言語に存在しない。明らかな固有名詞だ。
「は、はい。その流れ転生者の名前です。フルネームは確か…ゲオルク…なんとかリーマン 」
「ゲオルク・フリードリヒ・ベルンハルト・リーマンです。」
「完全に俺の思ってるリーマンさんじゃないか。サルトロ、流れ転生者も記録してるのか?」
ワクワクが止まらない。あの数学界の偉人がこの世界に来ていたなんて!
「一応していましたが、詳しくはないです。そもそも流れ転生者と見つかってからすぐにリッチ化されてしまったので」
「うーん、ちなみにどんな感じの人間と記録されているんだ? 外見とか年齢じゃなく」
「確か我々には理解できない天才、もしくは大きく理がことなる世界から来た人間ではないかと」
「くはははは。まあ当たり前だ、俺の世界でも彼が生きているときはそうだった、天才すぎてな。功績が認められたのも死後だ。いやーリーマンのさらなる活躍に期待しちゃったけどだめかなー。それよりも早速使ってみよう……使い方わからないじゃん」
「杖を体の一部と思い込むのです。そうすれば魔力を簡単に自分の体にように魔力を杖上で動かすことができます」
とりあえずで〈ウォーターボール〉を使おうか。
……ってうお? やべえ複素数やらなんやらが頭の中に飛び込んできた。
あのリーマン予想も見える。当時彼は功績が認められなかったからな、この世界でも頑張ったが俺の世界でも無理だったのだから無論無理だ。それを悔やんだ怨念にようなものか。
安心してくれ、あなたは偉大な数学者として語られている。
〈ウォーターボール〉は魔力が杖を簡単に通って水の塊を作り上げた。よく見ると水球が回転して手でやった時よりも安定した形を保っている。なので形を保つ魔力がいらない。それにしても魔力効率が高すぎる。
ジャイロ効果は思いつかなかったなあ。リーマンさんが知恵を貸してくれているのか……?
これは大事に使いたい。
「あの……どうでしたか?」
「ああ、魔力効率がとても良くなっている」
「頭の中に文字や数字が入ってくるというのは?」
「うん、入ってきた。リーマンさんが発見した数学の不思議なことを」
「それは一体どんな?」
「えーと、虚数とか幾何学ってわかるか?」
「幾何学は測量の学問でしたか。」
「虚数は負の数の何か……ですか?」
「幾何学はそんな考え方でいいが、虚数は残念ながら違う。虚数っていうのはそもそも俺らが考えてる12345の数、つまり実数の世界、そこから外れた考え方だ。
リーマンさんは幾何学を発展させ時空の歪みのを計算した距離の測量方法を出したり、虚数と俺らの思ってる数、実数を組み合わせたものを解析したりしたんだ。」
「う……嫌な予感……」
「安心しろ、俺も理解をちゃんとしているわけじゃねえ。
ちゃんと学んだわけじゃないし、誰かにドヤ顔で教えられるまでに何年かかるんだよってレベルだ。
だからもしかしたら間違ったこと教えるかもしれないからちょっと教えられない。」
ルビーが少し安心している。
「まあでもこれが教えてくれるけどな」
ルビーがちょっと顔色悪くして驚いた。
「すまんちょっと遊んだ。無理して学ぶ必要はないよ。
ともかくもっとこれを使っていきたい、これはある一種のリーマンさんの遺品だ。そんなもの使うのは恐れ多いが宝の持ち腐れにするのも違う。まあ本音はこいつはどんなものか知りたいってことだけどな」
「はい、ぜひご使用ください」
この杖がこれらを頭に訴えてくるのは功績を見てもてほしいのだろう。この世界でもリーマンさんスゲー! て言われるようにしてやりたい。
そのためには敵国に大打撃どころじゃない。争いを終わらせる必要がある。
……頭の中で合理的な方法と倫理が葛藤する。
この世界の人が知りもしない兵器で禁止されていないからって非人道的なことして俺ツエー無双する?
そんなことして敵国――された側はどうだ? 俺だったら間違いなく恨むぞ?
「そういえばサティエル、サルトロは杖を持っているのか?」
考えるのを後回しにする。まったく、自分という人間は……
「はい、持っていますよ。しかし私のは持ち運びには適していないほども大きくて今はございませんが」
「私は持っています、こちらです。【機杖アーティ】です。」
サルトロは後ろの腰から取り出した。
黒い大きな昔の西洋の鍵のような形のものだ。大きいとはいっても俺の杖より少し小さいくらいか。
「鍵……じゃないよな、そういうデザインか?」
「はい、ただの職人の趣味だそうですが使いやすいので問題はありません。」
「ふーん、そういえば魔石を選ぶとかだったがこれはリーマンさんのリッチからだけどそれは何からできてるんだ?」
「これは五種類のゴーレムの魔石からです。ゴールドゴーレム、シルバー、ブロンズ、プラチナ、アイアンです」
「ゴールド!? プラチナ!? ……いや、さすがにそれが取れるってことはないか、見た目だけとかか」
「いえ、体の約七割がその名前の鉱物からできています。」
「ええ!? じゃあ体がとてもちっちゃいとか……」
「いえ、十分大きいと思われます。ただ滅多に出現しない上、討伐の際多くの犠牲が払われます。」
「まー、そんなうまい話無いよな。サティエルのはどうなんだ?」
「私のはリッチ、魔導竜の魔石から作られたものです」
「竜もいるのな、ていうか二種類なのか。サルトロのは五種類なのに、多けりゃいいってもんでは無いのはわかるが」
「 はい、使う魔石の種類が多いと適性魔法が限定化されたり互いに阻害し合ってしまう場合がございます。さらには多いと職人の技量も必要になります。もちろん、限定化された杖は需要はございますが。私の場合は非自然魔法が適性化されます」
「非自然魔法?」
「そのまま、自然界に存在しないものを作った魔法です。
魔力障壁やタカハル様の風魔法のようなものにあたります。」
「なるほど。ちなみにサティエルの杖の適性は? 聞いた感じわからないが。」
「私の杖は全属性適性です。」
「なんだそりゃ? もう全部それで解決じゃ無いのか?」
「もちろん、全ての魔法を補助しますが適性を狭めて強い杖を作った方がその杖の適性魔法の方が効率、威力が上がります」
「なるほど、奥が深いな。とは言っても浅くしか聞いていないだろうが」
聞きたいことはいくらでもある。この世界は好奇心が止まる気配はない!
………………
タカハルと護衛たちが就寝前別れた後。
「さて、そろそろ私たちも休みますか」
「はい、では」
「また明日!」
「……アゲート、ちょっと待って、相談がある。」
「なんでしょう姫様?」
「サティエルとサルトロがタカハル様と話してばっかりでずるい」
「ずるいって言ってもタカハル様は魔法型ですから仕方ないじゃないですか」
「なんとかしろ」
「……えぇ、じゃあサティエルさん達に相談して護身術でも教えますか?」
「それ採用」
「……ダメでも文句言わないでくださいよ」
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