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科学少年の異世界戦争  作者: 歯並び悪い人
戦争準備編
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覚悟

 その後、誰もタカハル様の違和感には指摘していなかった。それも仕方ない、私でも何がおかしいのかわからない。ただ、どこか怯えているような、焦っているような、そんな気がした。


 移動中も昨日と同じように集中なさっていた。



 スティフに聞いても「なんのこと?」としらばっくれた。


 色々としてみた、甘えてみたり、甘えてみたり、甘えてみたり…………


 甘えてしかない……タカハル様のお側にいるとどうも自分に弱くなってしまう。どうしたらいいのだろうか……詮索はやめるべきだろうか。それがタカハル様のためになるならそうする。


 だけど私は今までタカハル様の悩みを一緒に乗り越えてきた。もちろん学術的なことは無理だが、タカハル様の奥底の悩みを吐き出してくれた。それでタカハル様は成長できたはずだ。

 だから、今回も私が。



――――――



 昨日からルビーが干渉してくるのが増えた。悪いわけじゃない。

 ただ、昨日のことを勘づかれたか? ありえない話じゃない、気づいてない振りをしている可能性だって大きい。



 ルビーが本格的に心配する前に覚悟しておかないといけない。


 だけど……何も進まない。ことあるたびに思考を放棄する、ルビーが近寄ってきてくれればそれだけで考えをやめてしまう。


 俺は……弱い。



 答えが見つからない、ならどうする……? いつもならしらみつぶしだ。これも思いつく限りやった。


 ただ考えきれてないかもしれない、逃げてきたから。考えを強くめぐらそうとすると例の光景が浮かんできて嘔吐感に襲われる。それを何度も飲み込んできた。



 辛い。



 こんなことルビー達の前では口が裂けても言えない。ルビー達には心配をかけさせてはいけない。



 答えは出ずにまた一日が去った。



――――――


 タカハル様のことを気にかけながらも時間が過ぎ去っていった。二回も夜を越したら私の勘違いじゃないかと思えるようになってきた。

 タカハル様はいたって普通、スティフの声も私が寝ぼけていただけ、タカハル様があの時様子がおかしかったのは本当に私に欲情していたから……これだけは疑問に残る。そうだとしたら本当になぜあのタイミングなのだろうか?


 まさか別の女に誘惑された……? あの場面だったらフローラか。今回の討伐が終わったら問い詰めよう。それまでは特に触れないでおくべき、戦闘に支障をきたすかもしれない。


 そう、明日にはもう戦だ。



――――――



 気分が悪い。答えの道筋すらわからない、誰かに頼ることもできない。今すぐにでも逃げ出したい、だがそんなことできない、周りから頼られる転生者として。


 食事も睡眠も取れている、それが辛い。本当の意味で悩んでいないんじゃないか……


 もう答えを出すまでに時間がない。覚悟のないまま人を殺すことになる。その後ルビーたちに対して笑顔を取り繕えるか? それの方がボロが出る。



 ……やっぱり、慣れるしかない。それが当たり前と思えるように。この世界に来て常識を取り払うと決めたはず。敵を倒せば賞賛される世界だ、当たり前に従え。


「タカハル様」


 部屋でルビーに呼びかけられる。


「どうした?」

「いよいよ明日です。タカハル様のご活躍に期待します。」


「……っ」


 嚙み殺せ、抑えろ。ルビーがそんな期待かけるのも仕方ない、大丈夫だ、俺なら期待に応えられる。


「――本格的な戦場は初めてだから上手くできるかわからないけど、できる限りのことはするよ」



「タカハル様、どうかなさいましたか?」


 ルビーが心配そうな顔を覗かせる。まだこれくらいなら誤魔化せる。


「いや、なんでもない」


「不安、なのですか?」


「……あー、えーとだな……」


 そう呟くと笑顔を見せて語りかけてくる。


「大丈夫です! タカハル様のお力なら一網打尽です! 一対多が魔法使いの本領です、万が一撃ち漏らしがいたならそれら全て私が受け持ちます」


「あはは、他の人の仕事無くなっちゃうな」


 作り笑いでルビーに答える。ルビーにこんなことをしてしまうのは正直辛い。


「それくらい余裕を持って戦いましょう、私はいくらでもフォローいたします。ですから……私を頼ってくださいね」


「――ああ」


 辛い、そんなに俺を甘やかさないでくれ。


 ルビーの笑みが歪んだように見えたのは気のせいだろうか。


――――――



「いよいよ明日です。タカハル様のご活躍に期待します。」


「……っ」


 何気なく言った言葉、それに対してタカハル様が異様な反応を見せた。


「――本格的な戦場は初めてだから上手くできるかわからないけど、できる限りのことはするよ」

「タカハル様、どうかなさいましたか?」


 すぐにタカハル様を気にかける。


「いや、なんでもない」


「不安、なのですか?」


「……あー、えーとだな……」


 視線を外すタカハル様に対して笑顔で答える。ずっとタカハル様が悩んでいたことはこれなのだろう。


「大丈夫です! タカハル様のお力なら一網打尽です! 一対多が魔法使いの本領です、もし撃ち漏らしがいたならそれら全て私が受け持ちます」


「あはは、他の人の仕事無くなっちゃうな」


 タカハル様は笑ってくれるが、いつもと違う。何かタカハル様が悩んでいることは違う。伝えて欲しい。


「それくらい余裕を持って戦いましょう、私はいくらでもフォローいたします。ですから……私を頼ってくださいね」


「ああ」


 教えてくれそうにない。胸が締め付けられるような感覚を覚える。私ではタカハル様の役に立てないのか――



 ……何もタカハル様は教えてくれず夜になり、ベッドに入る。



 泣きたくなる、何かしてあげたい。でもタカハル様は私にそれができないと考えている。タカハル様が考えているということならそうなのだろう。

 辛い、力が及ばないことが。力になれないことが。


「っく……」


 弱々しく声が出てしまう。



「ルビー?」


 いつもはすぐに寝てしまうのに。起こしてしまったのか、それとも眠れなかったのか。どちらにせよ、私がするべきことはタカハル様が気にかけないように振舞うべきだ。


「なんでもないです」


「そんなわけない。ルビーの力になりたい、なんでも言ってくれ」


「自分のことはいいんですか?」

「ぁぅ、ちがっ――」


「私はそんなつもりでは――」


 なぜそんなことを口走ったのかわからない。なにもかもわからないまま逃げようとした。どうして逃げようとしたのかもわからない、体が動いていた。どこへ逃げるというのか、そんなのはどうでもよかったのだろう。


 そうしようとしたところで手を掴まれた。頭が真っ白になる、ただそのおかげで冷静になれた。

 どんな罵声を浴びせられようが殴られようが構わない。タカハル様の口が開かれる。



「ごめん……」



 そう弱々しく言って、手が離れた。タカハル様は今までに見せたことのない顔をしていた。……いや、見たことはある、タカハル様が全てを拒んでいた時の顔だ。


――――――


「っく……」


 ルビーの声が聞こえる。泣いている声、考えるよりも先に行動していた。


「ルビー?」


 顔は見せてくれない。


「なんでもないです」


「そんなわけない。ルビーの力になりたい、なんでも言ってくれ」


「自分のことはいいんですか?」

「ぁぅ、ちがっ――」


 情けない声が出る。なにが違うんだよ、ルビーにはわかっていたんだ。


「私はそんなつもりでは――」


 そう言いながら離れていくルビーの手首を掴んだ。

 弱々しく声帯に空気を通す。


「ごめん……」


 そして手を離した。どこへ行こうが構わない、ビンタだろうと殴ろうと構わない。


 恐る恐るルビーを見るが動かない。


 ルビーの言葉が頭に出てくる。


『怒るような内容でも言わない方が怒ります』



 ルビーに嫌われたのか、逃げようとしているんじゃなくて拒んでいるんじゃないのか。


「……どうして、悩みを告げてくれないのですか……?」


「…………俺が、弱いから」


 泣きたくてたまらない、幻滅されただろうか。今まで以上に逃げ出したい。


「タカハル様は弱くなんかありません」

「じゃあこのザマはなんだよ」


 投げやり口調になる。だけどもういい、どうせこれ以上嫌われることなんてない。ルビーが近づいてくる、どうされるのかわからず、目をつむる。






 頭が真っ白になる。






「ん!? ルビー!?」


「ぷはっ。急に申し訳ございません、一度私もタカハル様も頭を真っ白にするためにこうするのしか思い浮かばなくて。」


 いやまあ、結果そうなったけど……


「私、思ったんです。タカハル様のことなんでもかんでも知りたいって思うのは傲慢だって」

「いや、そんなこと……」


 ルビーは「ふふ」と声を出してから話を続ける。


「もちろん、タカハル様のお力になれれば幸いです。ですが私ではできないこともあるでしょう。だから、できるのはタカハル様を信じることくらいだと思います。きっとタカハル様なら、どんなことも乗り越えられるだろうって。もちろん、相談してくれるならできる限りのことはします」


 どうしてだろう、ルビーの体はいつもと変わらない。なのに、とても大人びて見えた。

 まるで自分は――


「なんていうか、俺――子供みたいだな」


 スティフの言葉は的を得ていた。あいつは人生においては先輩だ、今になって見直した。


「私の前では、いくらでも子供のように振舞ってもよいのですよ?」

「いやそれはちょっと……」


 ルビーはくすくすと笑いながら「冗談です」と言った。


「タカハル様ならきっとこれから成長できます」


 スティフを見直して、今度はルビーに惚れ直した。額を当ててくるルビーにもう一度とねだる。ルビーはそれを受け入れる。


 ルビーはもう悩みを聞くつもりはないようだ。でも、ルビーだから打ち明けたい。


「雰囲気壊すけど、いい?」

「ええ」


「ルビーって、人を……殺したこと、ある?」


「はい。転生者様の護衛になるには戦場で成果を挙げることが前提です」


「そっか。その時、どう思った?」


「これで誰かが助かる、帰ってご飯を食べる。そう思っていました」


「ははは、そっか」


 ルビーに顔を見せる。作り物なんかじゃない、笑顔だ。夜で明かりがないのが残念だ。ルビーも微笑んで応えてくれる。


「ルビーのおかげでなんとかなりそう」

「それは嬉しいです」


 味方の誰かを助けることにつながる、そしてあまり気負わない。ルビーの丸パクリだけど、これでいい。複雑な答えはいらなかった。

ちょっとしたお話


「ふへへ、ルビーとファーストか……」


「既視感が……いやもしやもう一段階……!?」

「タカハル様とルビー様を邪推な目で見るのはよしなさい。」


「タカハル様ーどうしたんですかー?」


「「おいバカ」」



ご閲覧ありがとうございました。よろしければ評価、感想をお聞かせください。気軽にお願いします。


星一評価、辛辣、一言感想でも構いません、ちょっとした事でも支えになります。世界観や登場人物の質問もネタバレにならない程度に回答します。(ガバあったらすいません)

科学質問も出来る限り回答します(ネット知識なので大したことはできないしガバガバですが……)


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