出陣
準備期間が終わった。その間に色々とあった、スティフとフローラが結局自分の魔力使って爆走したり、スティフがドリフト駐車しようとしたが失敗して怒られたり、フローラが勝手に改造して怒られたり……二人のことばっかだな。
フローラはすぐに腕を改造して見せつけてきた。どうやら実際に魔物の腱を使ったらしい、すごい感謝されていた。
で、今日から出発か。総勢65名、ちなみに車は二週間で一台増えた。
今回は俺とフローラを除いて全員が全員が戦闘のプロだ。スティフもついてくる、理由は運転手がこいつ含めてギリギリなんだ。一人でも運転手に問題があったら載せている人まで運べなくなる、無理やり詰め込めば数人くらいなんとかなるが、それでも責任はもつべきだ。
気張っていこう。
……で、こいつだよ。
「タカハル様! 是非ともこの私を討伐に連れて行ってください! 弓使いとして能力は高く、必ずやあなた様の役に立つことができます!」
(ワー、君は素晴らしいー、是非とも俺の護衛にー)
「って魂胆が丸見えだ、却下」
例のエルフがここぞとばかりにアピールしてくる。どうしたら諦めてくれっかな……
「い、いえ。そんなことありません! あなた様のお役に立ちたいだけでして――」
「そもそも信用がない。一回暗殺しようとした分は取り返せてねえよ」
「あ、あれは自分が間違っていました。どうか、どうかご信用ください。靴でも舐めましょうか……?」
「キモいやめろ」
地面に這いつくばる金髪男にドン引きしながら口を出す。
さっさと出発したいんだけどな……
すると隣にいたルビーが軽くしゃがんでそいつの頭をひっつかんだ。
そのまま髪を持ち上げて投げ飛ばした。エルフは間抜けな声を出して地面を転げた。
「行きましょう、タカハル様」
「お、おう」
ルビーと喧嘩はしたくないなあ。色んな意味で。
………………
移動は何も問題ない、快適だ。馬車と比べて止まることも少なく安定して走行ができる。二週間の練習の成果
そんなわけで馬車だった場合の中継地点を一個飛ばしの領に着いた。今日はここの領主の家に泊まる。
泊めさせてもらうのにあれだが……ここの領主趣味悪いな。今まで見てきた中で屋敷の外も中も金ピカすぎる。王城でもこんなのは見ないぞ。
「ここは相変わらずですね……」
サティエルが気の重そうな顔をして呟いていた。
「来たことあるのか?」
「はい、あまりいい思い出はありませんが」
ならわざわざ聞く必要もないだろう。
「実は十年ほど前のことでして――」
あ、なんか勝手に話し始めた。
「転生者様の護衛になれなかったらここの子息に娶られるということになりまして……正直悪いところばかり目がいく人ですので……」
「あー、なんて言うか……なれてよかったな、護衛」
「はい! タカハル様の護衛につけて光栄です!」
そんな会話をしてからルビーと共に部屋に行く。
「いや部屋もこんななのか」
華美過ぎてなんだか落ち着かない。一泊くらい大丈夫だろうが……
「これだけの財力を戦に使えば――」
ルビーが呆れながら呟いた。まったくだ、金を通信機系に使って、白金の類は化学の触媒に、ルビーなんかは精密さが必要なベアリングに使えば……ああもったいねえ。まだそこまでできるほど科学が進んでないからか。
「「はぁ……」」
ルビーと同じタイミングでため息をついた。ほぼ確実に考えてることは違うだろうがな。
するとドアからノックの音聞こえた。
「はい、どなた?」
「ここのメイドでこざいます。スティフ様とフローラ様がお見えです」
「それじゃあ呼んできてもらえる?」
「かしこまりました」
なんだ? このペアが俺に……こいつら暴走族ペアだったな、車の魔改造……興味はあるがやらない。そんなこと言われたらパンジャンドラムにでも乗せてやるか。
しばらくして二人が来た。スティフはやつれた顔をしていた。
「た、タカハル君、助けて……」
「どうした?」
フローラは別に問題のある顔はしていない。急な問題ってわけではなさそう。
「タカハル様の世界の技術について知りたいことが山ほどあって、それをスティフさんに教えてもらおうとしたっすけど……」
なるほどな、ただフローラの知的好奇心はスティフ程度の知識は簡単に上回った、と。
「いいよ、知ってることだったらなんでも教えてやるよ。スティフ、お前はどうする?」
「僕は戻るよ、ここにいても頭痛くなりそうだし……」
そう言ってすスティフは去っていった。最初からフローラだけで良かっただろ。
とりあえずソファーに座って、フローラには向かい合うように座ってもらう。
「それじゃあ、何から聞きたいんだ?」
「はい、スティフさんから聞いたんですけど、たしか……『えくすさべーたーかー』『くれーんかー』などという重機をどうやって動かしているのか、気になってですね」
えくすさべーたー……? なにそれ、ただ英語なのは間違いない。接頭語がexなのは間違いなさそう。そして……サベーター? あるいはアベーター? なにこれ。
「ちょっと待て、スティフと俺で言語の壁ができてる。『クレーンカー』はわかるが『エクスサベーターカー』てなんのことだ?」
そう聞くと彼女は指を頭に当てて目を閉じて答えた。
「たしか、車に大きなスコップがついていて、『きゃたぴらー』というのが車輪の代わりについていて……」
なんだ、ショベルカーのことか。
「わかった。で、それの動力源についてか」
「はい、スティフさんには説明できなかったんすけど……」
「んーと、確かあれだな。油圧ポンプと油圧シリンダー」
「それはどういったもので……!」
興味津々に聞く彼女に淡々と説明していく。エンジンで圧力かけて油圧ポンプでキャタピラを回し油圧シリンダーでアームを動かす。
「なるほど。ところで、どうして高価な油をそんなに使えているんですか?」
「あー……油はそんなに高価なものじゃないんだよ。植物から取れる油はその植物が大量に植えられてるし、つか機械に使う油はほとんどが石油が原料だ」
「そうなんすね! では同じように石油をたくさん取っていけばレックス国に差をつけられますね!」
まあそれはそうなんだけどな……
「ただ、取りすぎると枯渇するからそこは気をつけなくちゃいけない。俺の世界だと枯渇するのが問題になってる。」
有限資源だ。対策を立てるのは早ければいい、可能な限り節約はしていくべきだ。
「そうなんですか。タカハル様の世界は大変そうっすね」
「戦争してるこっちの方が大変だとは思うがな」
「それもそうですね。話は変わりますが聞きたいのが他にも――」
………………
ふう、語りきってやったぜ。基本的な工学の話からAIにまで話してやったぜ。二時間半も時間を費やした。この世界でこんなに科学の話をしたのは初めてかもしれない、彼女はかなり優秀だ。今後も世話になるだろう。
彼女は満足そうな顔をして、部屋を去っていった。
さて、どうしよう。ルビーは会話の内容を耳に入れてるだけでダウンして俺に体重をかけて寝ている。起こすのも忍びないし、そもそも起こす理由もない。このまま寝させてやろう。
そう思って座っていると。またノックが聞こえた。
「タカハル君、いる?」
スティフだ。何しに来た?
「いる、鍵はかけてないから勝手に入ってこい」
そう言うと扉を開けて入ってきた。やつれた顔はもと通りになっていた。
「やっぱりとても良い関係みたいだね」
「うっせーな。冷やかしに来ただけかよ」
そばに立つスティフを軽く睨みながら「起こすなよ」と付け足しておく。
「ごめん、つい。起こしはしないよ」
「フローラが出てくまで何してたんだよ」
「アゲート君とサルトロ君とお茶してたよ。愚痴聞いたり」
え、愚痴言われてるの? 外でルビーよくっつきすぎたか……?
「心配が顔に出てるよ。大丈夫、君のことは褒めちぎってた、愚痴は周り、お偉いさんの評価みたい。僕にはさっぱり」
そうか、よかった。ただ――サルトロに対して口出す奴がいる、もうちょい擁護する必要がありそう。それにマシにはなったがまだ本人もネガティブ思考気味だからな。
サルトロは実際必要だ、周りから否定されてるみたいだが銃魔法は護衛としてかなり優秀。それにサルトロの反射神経、ルビー並みとまではいかないが速攻で有効なダメージを与えられるサルトロは重宝する。
「で……何しに来たんだ?」
「そうだね、本題に入ろうか」
そして、次にスティフの口から出たのは英語だ。
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