ルビー父
国王と久々に会話する。一番最初に会った時の部屋だ。他にも十人ほど集まっている、ほとんどが強面だ。それで議題はもちろん襲撃者らの拠点についてだ。どうやって攻めるか話し合っているようだが、俺にはわからん。
「――結局はやはりタカハル様が動くかで大きく変わるかと」
この中でそこまで怖くはない顔の人が言った。アゲートの兄、サージさん。騎士団団長だ、アゲートに彼のことを聞くといくらでも喋る。
で、俺が出るかどうかって話か。
「そうですね……結局襲撃があると大きく動けないんで、俺も行った方がいいんでしょうね」
こっちから攻めて襲撃をなくす、こっちは損害なし。これが最も良い結果。逆に……
「万が一タカハル様に何かあったら――」
ルビーがそう口にする。そう、最悪の結果だ。リスク、メリット、可能性を諸々考えないといけない。
俺が行くメリットは俺+護衛の戦力が増える。リスクは転生者である俺が死ぬかもしれない。可能性は……かなり気をつけないといけないレベル。魔物化する、ローブ魔法使いが結構強い、風魔法浮遊、幻惑魔法で強襲離脱が強すぎる。
――まあこんなのこの場にいる全員わかりきってる。結局リスクとリターンを言い合うだけになる。
半年も転生者という立場にいたからなんとなくわかる、俺が決めるしかない。正直辛い、他人に委ねられるならそうしたい。だがそんな無責任なことはできない。
「行きます。俺と護衛四人を使ってください」
これでいいか、ルビー。
「どこまでもついて行きます」
表情を見るに理解してもらえたようだ。
「はっ、必ずや最も効果的にタカハル様を指揮いたします」
「ああ、頼んだ」
次に別の人が話し始めた。具体的な戦略、戦術等々……そこら辺の違いはよくわからない。言われたようにするしかない、素人が口出していいようなのもじゃない。
「――こんなところでしょうか。それでは、移動についてですが馬車で十日ほどでしょう」
「馬車で十日ならもっと早くなります」
これに関しては俺も口を出せる。科学の結晶披露タイムだ。まあ俺は設計だけなんだけどな。
隣にいる魔導科総括、アウインさんに目配せする。最初ほぼ全員から「なんでいるの?」みたいな雰囲気だったがこういうわけだ。
「はい、タカハル様考案、魔力式自動車の開発に成功致しました。既に六人乗りが十台完成しております」
部屋全体から驚きと賞賛の声が上がる。鼻が高い、設計しただけだし自動車の構造をいじって簡略化しただけだけど。
「馬が運べないという欠点はありますが、森の中では馬を使う効果も薄いでしょう」
「そして、馬は生き物だがこれはそうではないです。餌は魔力もしくは魔石、必要な魔力量も5あれば馬車と同じ速度で一日中走っていられます。休ませる必要もなく」
ただし運転手は休ませないと事故る可能性あり。
「とは言え運転手を育てる必要がありますので、しばらくは時間が必要かと」
「馬車の御者を流用できないのか?」
「勝手が違いすぎますので、例えるなら馬とゴーレムを扱うほどの差でしょう」
アウインさんが質問に対応する。すると少しざわつき始めた。
「ゴーレムならフローラが適任じゃないのか?」
「確かにそうだ」
「……誰のこと?」
そう呟くと後ろのサルトロが声を出した。
「三代前転生者様、ウィンザー・ローゼンタール様の血を受け継ぐ者です」
……とりあえず二週間ほど準備期間、その間に運転手育成、揃わなかったら馬車で行くことになった。それで解散だ、俺も運転手候補だから明日の訓練には万全にしておかないといけない。
「ルビーとタカハル殿は残ってくれ」
帰ろうとしたら王様に止められた。なんか話すことあったか? それにルビーも?
「はい、父上」
…………ち、父上……?
完全に忘れていた、王様ってルビーの父親じゃないか。んなもん話の内容なんか一つだろ。そりゃ同じ建物に住んでるんだからこういう情報くらい入ってきちゃうよね!!!
で、でも具体的には何話されるんだ。こういう場面創作物すら見たことないぞ……単に興味なかっただけだが……
冷や汗がすごい出てくる、手汗もかなり分泌されてる。落ち着け俺の交感神経、冷静な対処が必要な場面だからなここは。
最後にサティエルたちが一礼して部屋を出た。
「ルビーも座りなさい」
声のトーンからも表情からも感情が読めない。ルビーは「はい」と一言言って俺の横に座った。
――いよいよだ。大丈夫、根拠はないがきっと大丈夫……科学屋だから根拠無しのせいで心配になってきた。
「タカハル殿、ルビーはどうかね?」
どうってなんだよどうって!? 質問内容もっと詳しくしろよ……! くっそ、一瞬で組み立てろ。特に問題も起こさずルビーとの関係が邪魔されず、なおかつ嘘は言わない解答だ。
特に問題も起こさない。これはルビーに悪くしていないと伝えればいい。そうすればルビーとの関係を崩すことはルビーからは良く思われなくなる。
あとは事実を言えばいい。
「――そうですね……いつも良くしてくれています。俺のために考えていてくれて、俺がルビーにしたことを素直に喜んでくれています」
どうだ……
「そうか……ではルビー、タカハル殿はどうかね?」
「とても親切な方です。私は護衛という立場というのにタカハル様は私の前で格好良くあろうとして……」
ルビー……それは格好良くあれなかったという捉え方もできるぞ……
「でも、時には私のことを頼ってもらえます。転生者としても聡明で、きっと我が国を勝利へ導いてくれるお方です」
……どうですか……?
「…………そうか。タカハル殿」
「はいっ!」
姿勢を正して答えると王様は頭を下げた。
「ルビーを頼む」
「――はい」
王様は部屋を出ていった。残ったのは俺とルビー二人。
「タカハル様っ!!」
「おわっ、急に抱きついてくるなよ」
そうは言いつつも抱きしめ返す。
「ごめんなさい。でも、認めてもらったんですよ!」
「うん、それはとても嬉しいよ」
なんとかなった。これで交際で気にすることはない。あまり外でもくっつきすぎるのもあれだが基本的には大丈夫だが。
まだルビー母の挨拶がまだだが一回会ったことがある、多分問題ない。性格面では大丈夫な人だ。
「それで、いつにしましょう?」
「いつって何が?」
「結婚ですよ」
へ?
「へ、じゃなくて結婚です。タカハル様のところには無かったんですか?」
「いや、あったよ」
えっと、確かこの国だと成人年齢が15だな。結婚できる年齢もそこなんだろう。
……え? なに? 俺16とかそこらで結婚するの? 俺一生無いと思ってたよ? それが? 16で?
「――る様、タカハル様?」
「あ、ごめん」
するとルビーが心配そうな顔をしてきた。
「タカハル様は……結婚するのは嫌――」
「違う、そういうわけじゃない。気が動転してただけだから! しよう、結婚!!」
言ってしまった、勢いで。もうやけくそだ。死んだ時点で日本国籍消えてんだ、俺はレギア国民だ。誰が文句言おうと知ったこっちゃねえ。
………………
部屋に戻って、ルビーにこの国の結婚文化を教えてもらった。だがそれは日本と比べて薄かった。
いや、実際は廃れたんだ。六百年で。
王族ですら日本の一般的な結婚式の方が時間をかける。戦争でそんなことしてる場合じゃないからだ。
身内で祝って酒飲むくらいらしい。酒はいやだな……
「基本的には戦火が弱くなる冬から春の間にするのが一般的です」
「なるほど」
と、なると工場ができてアンモニア使うのが一通り終わって落ち着いたらだな。
まずは目の前のものをなんとかしよう。
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