太古の生物
到着した。見渡す限り荒野だ、多少の起伏はあるが植物が苔くらいしかない。グランドキャニオンの小規模版とでも言えばわかるだろうか。ただ、そこまで雄大ではない。
「何にもないですね」
「アゲートの言い分ももっともだが石油っつう宝が埋まってるんだ」
そう言って足元の少し先を見る。そこには黒い液体が地面から滲み出ていた、間違いなく石油だ。
それを確認してから馬車の積荷へ向かう。
その中の大きなそれを護衛たちに協力してもらって運び出す。
「タカハル様、これは井戸に使うものでは?」
「ああそうだサティエル。普通はな」
そう、使うのは手押しポンプ。流れ転生者が伝えたと言われる、知識チートの定番だ。ただこれを作れるまで一から頑張ったのは素晴らしい、ありがたく流用させていただく。
「液体だったらいいんだ。っつーわけで、管をぶっ刺す!」
で、この7m程の管を突き刺すために……
「ほい、ドリル。管と合体させて無理矢理地面に突き刺す。」
まずは固定だ。来てもらった労働者さん達の数人借りて三本の斜めの柱と輪を繋げてそこに例の管+ドリル。さらに魔道具によって魔力を送るだけで――
「おーし、うまくいったな。俺の魔力で回し続ければ問題なさそうだな。」
てなわけで十分ほど掘り続けた。
手押しポンプをくっつけて、上から魔法で作った水を押す。水が出てきても魔法だから後々消えてくれるっていう算段だ。
問題なく出てきた。
「次だ、蒸留装置作るぞ。」
とは言っても持ってきたパーツ組み立てるだけだ。原油を土、砂、砂利でろ過して一つの部屋に入る。蓋をして温度計見ながら熱して蒸留、リービッヒ冷却器の要領で水で気体の通り道を冷やして、ナフサゲットだぜ。
手伝ってもらいながら完成させた。一通り動かしてみてちゃんと作動することも確認する。
労働者たちにやり方を見せたので、流れ作業で同じように所々ある他の油田でも建ててもらう。
「もう終わり……ですか?」
デーナが不服そうな顔をしてそう言った。正直つまらないのもわかる、本当に何にもない。面白いと思えるものはないだろう。
「ああ、そうだな。ただ、出来るだけ持って帰りたいからもうちょっとしてからな」
それに素直に頷いた。見た目で騙されそうになるが彼女は俺の四倍ほど生きている。信じられねえ。
竜は普通数百年生きるという。こんな複雑な動物がそんだけ長寿というと俺の世界だと信じられない。代謝がとても遅い――というわけではないだろう。代謝自体が普通とは違うのか……それとも魔法的な何かか。
そういえば竜は爬虫類なんだよな、骨格はトカゲやワニと違って横からではなく足は哺乳類のように直接下に向かって伸びている。しかし人の身体で不自由はないのか……
ふと気づくと、ルビーが横からジト目で見てきていた。
「ど、どうした?」
「…………いえ、なんでもないです」
そう言って腕に抱きついてきた。デーナに構い過ぎたかな……
軽く頭を撫でて機嫌をとっておく。口角が緩んでいるので怒らせてはいないようだ。
「にしても地表まる出しで過去の生態系丸わかりだな」
地表の壁の下の方を軽く魔法で掘る。すると簡単に化石が出てきた。
「なんだろ、爪か? 肉食系のだな。もうちょい掘れば全体像がわかるかもしれない」
そう言っても反応は薄い。男性陣は興味あるかと思ったんだがな……いや戦争してるからか。
残念に思って壁に手をかける。
「ってうお!?」
魔力が、四割くらいもってかれた。何が……!?
すると地響きが起こる。壁から土や砂がポロポロと頭に降ってくる。
「タカハル様、失礼します」
ルビーにそう言われたのと同時に体を持ち上げられる。お姫様だっこだ。
状況を確認しようとするとルビーがすごい速さで壁から離れた。壁は崩れていく。俺の反応速度だといくら魔法が使えるといってもまずかったかもしれない。
「何が……?」
その答えはわかった。壁から原因、正体が現れた。薄い焦茶色、俺の場合前世で何度も見たことがある。だが動くのは見たことはない。
こういうので喜ぶのは幼児だけ、動くそれを見ても鼻で笑う自信があった。
化石だ、ティラノサウルスが有名どころの獣脚類タイプだ。それが、動いている。絶壁から顔と手を突き出していた。
ほんの数秒で壁を崩しながら全身が出てきた。化石で体全体が揃っているのは珍しいとかいう場違いな考えが出てくるがすぐに消える。
魔覚がえげつないほどアラートを出している。放出する魔力を抑えていないというのはあるだろうがそいつの魔力量が多すぎる。少なくともあの時持ってかれた魔力以上。
「どうなってんだ……」
一個ずつ消化していけ。まず接合部分は魔力でくっつけている。十数m離れたところでもわかる。
で、とりあえずでもう一つ…………
「全力でこっちに向かってくる理由は、完全に俺の魔力のせいだよなあ!!」
ルビーの腕の中で叫ぶ。視覚も聴覚も嗅覚もないはずだからそれしかない。
後ろでサティエルやサルトロが炎やら氷やら岩やらで攻撃しているが効いていない。ガン無視でこっちに走ってくる。
となれば……
「〈ステルス型魔力障壁〉」
凹凸のある低い山なりの魔力障壁が俺とルビー覆う。
すると足が止まった。成功だ。
と思ったら今度はサティエルの方に走り出した。やべ。
「〈魔力液体〉」
それを誰にもいない方へ投げ飛ばす。するとサティエルからそっちへ向かって走り出した。
ひとまず安心してルビーから降りる。
「何がどうなってんのやら……」
「スケルトン、でしょう。……おそらくドラゴン系の」
少々歯切れが悪い。同じような個体を見たことはないのだろう。
「もうちょい詳しく聞いても?」
「魔物や人が死んで骨だけになっているとあのようになることが。タカハル様の魔力がきっかけで目覚めてしまったのでしょう」
スケルトン、か……それについては後だ。倒す方法が先だな。
「何が弱点だ? 脳とか心臓はないし……」
「魔石です。それ以外だと粉々にするしかないです」
魔石? 心臓にくっついてるんじゃないのか?
「〈望遠〉」
凸レンズの要領で目に入る光を収縮させて例のスケルトンの方を見る。すると見えた、心臓のあるであろう部分の近くの背骨部分に大きな紫色の石がくっついていた。
さて、どう倒すか。肋骨をぶち破って魔石に攻撃するか、器用に間を抜けて攻撃するか。
すると、ルビーが後ろに目をチラッと向ける。他護衛も到着した、サティエルはヘトヘトだ。
「し、死ぬかと思いました」
「助かって何より」
「タカハル様、こちらを」
「おお、ありがと」
アゲートが馬車に置いてきた杖を持ってきてくれた。
数十m離れた例のスケルトンが液体の魔力が消えたのか、こちらに気づいて向かってきた。
杖を構える。どうしてやろうか、酸で無理矢理骨溶かすか? 結構なエネルギーが必要になるな。アルカリも同じく。
「任せてください」
ルビーがそう言った。すると返事も待たずに首から下げていた宝石を手に持ってすごいスピードで走り出していった。
気づいたら敵の足元。宝石を大剣に変え、足元を殴りつけた。大きな硬いもの同士が当たった音がするのと同時に、敵は足を取られて転んだ。
「おお!」
俺が感嘆の言葉を出すのもつかの間、首を曲げルビーに頭を突き出し噛み付こうとしていた。だが簡単にバックステップで跳ねて避ける。マジで人間業じゃねえ。
だが向こうは人間どころか俺の世界の動物の常識を覆す生物だった。尻尾を上に振り上げてルビーに向ける。するとその勢いのまま尻尾を外した。散弾となりルビーを襲う。
マジか……空中だと避けられねえだろ……
だがルビーは大きな骨を剣で受け流していった。彼女の安心とともに大剣を空中で簡単に振ることにある種の恐ろしさを感じる。いやすごいんだけどな。
「いけそうだな!」
近くまで下がってきたルビーに声をかける。
「いえ……普通だったら今ので当たったところは砕けるはずなのですが――」
マジか。完全に無傷だ、態勢を立て直してこっちに向かって、すぐに突撃してきた。しかも尻尾の骨が元どおりに飛んできた。マリ◯のカ◯ンみたいに。完全に魔法だ。
うっし、片っ端から試してくか。まずは酸を……
魔力を溜め始めると後ろから前に何か飛んできた。
視界に映ったものを確認すると、人型に翼が生えた形をしていた。
「デーナ!?」
俺がそう口にするとルビーが飛び出していった。さっきち同じように転ばせる。
そこからデーナが首から肋骨の中へ入っていった。
すごい飛行技術だなと思っているとデーナが叫んだ。
「〈部分人化解除〉!」
〈望遠〉で見ているとデーナの腕が赤く、太くなった。一部だけすらデーナの竜の姿は見たことはなかった。
そしてデーナが魔石を掴んだ。宙吊りになっている。するとそいつは暴れる、めっちゃ暴れる。
「サティエル、サルトロ! あいつの足元にありったけの水をぶつけろ!」
そう言うとすぐに行動に移す。
「「〈激流〉」」
25mプールの数倍もの水が一気に流れる。それに近づいて杖を向ける。
水の熱運動を押さえつけて、大量の水の温度を急激に下げる。そして一気に凍りつかせる。
ごっそり魔力が持ってかれる。だけどまだギリ立っていられる。
それにデーナがとどめを刺してくれるはず。
暴れるのは弱くなった。だが、尻尾を下に振った。これ多分さっきみたいに飛ばそうとしているのか――
思考を全力で回すが時間が足りない。
だがルビーが全部弾いた。ま、マジか……勝てるぞ……
そう考えたが、敵はどうやら未だ生に執着する。魔石より先の骨を外した、そして腕でデーナを掴もうとする。
まずい――
「タカハル様、前みたいに足場作ってください!」
アゲートが飛び出ていた。彼の前に魔力障壁でデーナまでの足場を作る。すると飛び乗って剣を向かって突っ込んだ。
「何か策は?」
「ないです!」
おい。――いや、時間稼ぎができればいいんだ。いけアゲート。
剣を燃やしてを腕に斬りつけるが、やっぱり効かない。だがデーナの代わりに彼が掴まれた。そうしたのもつかの間、デーナが魔石を砕いた。
すると魔力が消え、骨が落ちていった。デーナはルビーがスライディングしてキャッチする。かっけえ。
「あだっ」
アゲートは顔面から氷に落ちる。そのままこっちに滑り落ちてくる。
「締まらねえな。……よくやった」
そう言うと鼻と額を赤くして笑顔を見せた。痛そう……
「ルビーとデーナもすごかったぞ」
「本当ですか!」
ルビーが笑顔で抱きついてくる。頭を撫でて、抱きしめ返す。
「ああ、かっこよかった」
「タカハル様も素晴らしい魔法でした」
ルビーに褒められると思わず口角が緩むな。
気づくとデーナがアゲートに向かっていた。どうやらさっき庇った時のお礼のようだ。
「あの、ありが――」
そこまで言ったところで顔を青くした。するとルビーの後ろに隠れた。
「どうした?」
「け、剣…………」
剣がどうかしたのか?
「あ、これ火竜の鱗と骨からできてるので――」
「しまえバカ! なんてもん見せてんだよ!!」
その後アゲートは他の護衛たちから軽くリンチにあった。ちょっと理不尽な気わするけど……ちょっととどころじゃねえか。
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星一評価、辛辣、一言感想でも構いません、ちょっとした事でも支えになります。世界観や登場人物の質問もネタバレにならない程度に回答します。(ガバあったらすいません)
科学質問も出来る限り回答します(ネット知識なので大したことはできないしガバガバですが……)




