油田へ
「引力、遠心力、気温、気圧、天候……原因はなんだ……」
魔法を使える高さ、日中はおそらく熱膨張で高くなっている。ここは理解できる。
「なんで引力と反対に伸び縮みするんだよ……!」
まるで反重力じゃねえか。だけどそれだとこの星から飛び出してるはずだ。
……考えろ、考えろ、知識を捻り出せ。……神がバランス調整のためにやった?
いやそれは一番つまらねえ回答だ。仮にそうだとしてどうして、どうやってそうなった?
……仮説でいい、考えろ、何にも知らない子供になったつもりで想像力をはたらかせろ……
……太陽嵐か……? あるいはあの太陽限定の太陽嵐のような何か……太陽が何か飛ばしてそれに何かが引っ張られている……? ああくそ、なんも計測できねえ。人工衛星でも打ち上げなきゃ観測できねえぞ。
「タカハル様、もうそろそろ出発のお時間です」
「わかった……」
支度はできてる。護衛たち、あとデーナと城から出発して二週間弱で到着。帰ってくるまでに解き明かせたら高い場所で魔法を使える鍵になるだろうが、情報が少なすぎる。
とりあえず行くか。荷物を持とうするとルビーが呼びかけた。
「タカハル様」
それに「どうしたの?」と答える。すると正面から軽くゆっくりと体重を寄せられる、そのまま腕を背中に回され、額と額が当たった。
「ル、ルビー? 急にどうした……?」
「イライラしておられたので、これで和らぐと思いまして。どうでしょうか?」
「ありがと。収まったよ」
ルビーほんと天使。俺が釣り合ってるのか心配になる……いやいや、釣り合うように努力するんだ。
…………何すればいいんだ?
………………
結局結論は出なかった。でもルビーのために、この国のために動くのが選択肢の中では一番だ。
「じゃあ行ってくるからスティフは留守番しててくれ。一ヶ月くらいで帰る予定だ」
「うん、わかったよ。それにしてもすごい人数だね」
「総勢106名。簡易的とは言え建物作るからな、このくらい必要なんだ」
俺ら用の豪華な馬車と数十台の馬車がある。魔力車はまだまだ製作途中。こんな短期間でできたら顎外れるけどな。
後は特に何もなく別れを告げて東の油田へ向かっていった。
「もしも太陽嵐だとして、電子系統全く使えない可能性が……いや常にそんなレベルの太陽嵐だとしたら大気でも放射線から守るのが難しい……」
ああダメだ。まだ妄想にしかならない、実験できる状態にしないと。簡易的な電子系統の作って……あーいや、まずアンテナか。アンテナは鉄の棒で八木アンテナでいいか。次馬車が止まったらやってみるか。
……というわけで領主さんの館に着いたので早速やってみよう。
庭で八木アンテナを魔法で作る。ただの鉄に銅線がぐるぐると巻いた銅貨をくっつける。それに耳を当てる。
「あの、何をなさってるんですか……?」
アゲートに言われた。視線は困惑している、全員。仕方ない、広場でこんなことやってる奴がいたら怪しがるな。
「電波の傍受、もしかしたらって思って。でもなんも聞こえない」
「それは何か不都合が…………」
サルトロが言った。俺の声のトーンが心配させてしまったようだ。
「魔力が使える高さの秘密の仮説が一個潰れたのと、この世界でも俺の世界にある最強兵器が使えるってことがわかった。後者のメリットがでかい、仮説が潰れたのもメリットだ。不都合なんか何もねえよ」
「それは良かったです」
ルビーはそう言って魔法を解除した俺に抱きついてきた。
「それで、最強兵器というのは?」
「期待してるとこ悪いな、アゲート。まだ内緒だ」
………………
さてさて、唐突だが世界で……これだと語弊を生むな。太陽系第三惑星、地球において世界で初めて飛行機を飛ばしたのはライト兄弟というのは有名だろう。
だが彼らは初めて航空機を飛ばしたわけではない、飛行機の前にも気球やグライダーというものはあった。
遠回りな思考も面倒だ。さっさと結論に行こう。
飛行船を作る。(予定)飛行船とはいっても気球をちょっと大きくして、プロペラである程度操縦できるくらいにするだけだ。
これは城の時、メモに殴り書きはしたがちゃんとした構想は書いていない。この情報がとられたらまずかった、原理や構造は飛行機よりも結構単純だ。何も知らなかったとしても原理がわかれば再現可能だろう。
無論トライアンドエラーが必要になるだろうが工場ができて、そこでできた肥料を撒いて、結果が出るまで時間は多くある。敵国に転生者とかいうチートも現れない。
空を飛ぶというのは、できない者からしたら憧れであり恐怖だ。活躍は間違いなしだ。
でも魔法がある世界だと遅すぎてただの的になるから、空輸がメインになるだろうけどね。
後は、あれだ、ノルマンディー上陸作戦みたいにパラシュートで人を大量に運ぶ。
他に使えそうな兵器ないかな? 硝酸やアンモニア使わないの……
……化学兵器? 死ぬような種類じゃなくて、催涙ガスみたいなの……それ使う場所にいる味方兵士全員にガスマスク配らなきゃいけないのか。
あれはどうだ? アルキメデスのつぶてにマシンガン! ……魔法あるから要らねえな。
あとは防衛で電気の有刺鉄線とか……? 蓄電池が必要そうだな、結構大容量の。……現実的じゃねえな。
……とにかく航空機だな。飛行さえできれば勝てるんだ。
後は本当にアンモニアと硝酸だな。
「あー、結局工場ができるまでやれること少ねえ……」
「冬には完成するという話です。そんなに焦る必要はございませんよ」
俺の横でお茶を飲みながら言った。おてんばな感じではあるが、王女様である、飲み方が上品だ。
「確かにな……」
だけど少しでも戦争を早く終わらして犠牲者を減らしたいというのは、俺の世界で育ったなら普通の願望だろう。ただ俺がそれを可能な手段は争いだ。
「他の転生者が活躍してたっていうのに俺はそんなにできてないんじゃないかって――」
「そんなことございません。タカハル様のお陰で、魔力障壁が強化され、国の資金も増え、農業に支援なさろうとしているではありませんか」
ルビーはカップを置いて話を続ける。
「悩んでるのはタカハル様だけじゃないですよ。例えば、三代前のウィンザー様は、お力に気づいても最初は上手く使えていませんでした。その前のエナー様は軍師の言うことを聞かず、戦場で暴れていたそうです。二代前のプラメアー様でも、召喚しすぎて城の中が大変なことになったそうです。先代のユーサー様なんて、女好きで近くにいる女性を片っ端から――」
「ストップ! やめて! 女の子が、それもルビーがそんなこと言わないで!!」
くそう、ユーサーめ、ルビーになんてこと言わしやがる。生きてたら絶対に許さねえ。(死んでる)
「ごめんなさい、はしたないですね。……タカハル様も、争いの経験も無くて、心も強くなくて泣き虫、役に立とうとしてずっと頭を抱えてる。なさっていることが結果どうなるのか検討もつきません」
それ言われると……俺のだけ多くないですかね?
「でも、どの転生者様もご活躍なさってます。もちろんタカハル様だって素晴らしいです」
体を俺に寄りかからせて話を続ける。
「ゆっくりで良いのです」
ルビーは俺に甘い。甘えたくなる、弱い俺はすぐに依存するというのに。
ただ、戦地では死人が出続けている。それに――
「……いつ死ぬかわからないのに――」
浅はかだった。気づいた時には声に出ていた。ルビーの前でこんな言葉が出るなんて――
ルビーに腕を引っ張られて体もルビーの方へと動く。
「そうならない為に私が、私たちがいるんですよ。命に代えてでもタカハル様をお護りする為に」
少し怒りは含んでいたが優しい声だった。
だけどその発言は俺は納得できない。
「そんなことさせない。何がなんでも俺含めた手に届く範囲の命は失わせない」
決めた、今決めた。何がいつ死ぬかもわからない、だ。気取ってんじゃねえぞ。
間違っても命を失うなんてほのめかすような言葉は絶対に使うなよ、俺。
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