石油
「でん!」
そう言って俺は黒い液体が入った瓶を机の上に出した。
「えっと、なにそれ?」
「原油、これから行くところの」
そう言って俺はスティフに答えた。するとサティエルに「こちらをどうするのですか?」と聞かれる。
「実際に使うんだよ」
それに対して全員が疑問を顔に出す。特にスティフは大困惑だ。まあ当たり前だ、こんな剣と魔法の世界に石油を使うっていうパワーワードだ。
「どうするかっていうと――」
魔法で補助しながら研究室の奥から50立法cm3ほどの大きさの金属の箱を机に持っていく。魔法がなかったら絶対持てねえ。
その箱は一面だけ取り外せるようになっていて、そして上に管と穴の空いた皿が付いている。
「こいつを使うんだ」
「これ自分じゃなくてもわかりませんよね?」
アゲートがそう言うとスティフが「普通の人でもわからないから安心して」とフォローする。
それを聞いて「中見るか?」と言って横一枚の蓋を開く。
「スターリングエンジンっつってな、二つのピストンが管と中の気体でくっついて、その気体が熱での体積の変動で直角に置いたピストンが動いて、それを円運動に変える」
ダメだ、誰一人理解できてねえ。
そう感じて黒板で解説するとようやく護衛魔法組が理解した。他三人は無理だこりゃ。
「これ、タカハル君が……?」
「いや、ドワーフっていうこの世界だと鍛治能力に頼った。人間が戦争しててもあんまり文化に影響及ぼさないみたいだからな、えげつねえ能力持ってる。なかったら俺がやるしかなかったけどな」
アゲートに答える。
その場合旋盤から作らないといけないのでだいぶ厳しいことになる。ある程度旋盤は使えるが旋盤自体が粗悪だとかなり難易度が高くなる。
「御託は後だ、とにかくこの原油が高品質ならそのまま使える」
「ええ!? そうなの!?」
「ろ過くらいは必要になるだろうけどな。炭化水素の炭素数が5から12だったら楽勝でそのまま使える。実際キッチンペーパーでろ過しただけでオートバイク動かせる油田はあった」
うん、どれくらいすごいかわかってねえ。もう面倒だから説明してやんねえ。
話を後にして原油を注いでいく。ちなみにこれはろ過済みだ。
「さてと、運が良ければ動くんだが…………」
…………一分ほど沈黙が流れる。その沈黙をルビーが遮った。
「あの、タカハル様……? その、これは――」
「ああ、これは高品質でもなんでもねえただの原油だ。幸運に頼るのが間違いなんだ、元々普通の原油をなんとかする方針だったよ」
当たり前だ、ほとんどの油田の石油が重油大体六割くらいだ。
それで一発で炭素数5から12の高品質の油田引き当てるとかいう豪運なんか俺にはない。
それじゃあどうするかはこの原油を加工するしかない。
そう思って器具を用意する。原油を枝付きフラスコに入れ、その先に容器を置く。
「後は温度見ながら蒸留だ。俺らの世界だと分留で成分細かく分けていくところだが……設備も無駄遣いはやめといたほうがいいから簡単な蒸留だ。ナフサ――粗性ガソリンさえ取れればいいんだ」
そう言ってフラスコを熱していく。最初は天然ガス、炭素数1から4の炭化水素、メタン、エタン、プロパン、ブタンが出てくる。気体として逃げてくので今の状況だと取れない。
で、次に30℃超えてからちょっとずつ出てくる透明な液体。ナフサだ、熱し続けて150℃ほどになってもう出てこなくなった。
「よーし、蒸留で取れることは確認した。」
「あの量からこれだけですか……」
「一般的なのは2、3割くらい。まあ手をつけられてない油田なら十分取れる。」
アゲートに答える。気持ちはわかる、もっと欲しい。
「まあ安心しとけ、残ったのも使い道ある。」
そう言うとサティエルがどんなのがあるか聞いてきた。
「まずジェット燃料」
「おお、なんかカッコいいですね!」
「聞くからにさぞすごい燃料なのでしょう。」
「本当に!? ジェット機作れちゃうの!?」
男子組は大興奮だ。ジェットっていう響きがカッコいい。
「ああ作れる! ま、相手が航空機持ってないのにわざわざジェットエンジン積む必要があるかはわからないけどな」
それを聞いてスティフはしゅんとする。だが万が一相手が対空手段に画期的なもの持ってこられたら作る必要性は出てくるだろう。向こうはおそらくあの設計図が航空機ということに仮設くらいは立っていることだろう。
「さて、まずはこの燃料で動くかどうか調べねえと飛行機どころじゃねえんだ」
そう言ってエンジンに透明な液体を注ぐ。レバーを引いてそして数秒待つと、ゆっくりと付いているプロペラが回り始めた。少しすると早く回った。
この場にいる全員が声を出して喜んだ。
「よし、第一関門突破だ。これで問題なく油田に設備建てに行ける」
………………
数日後、油田へ行くことが話題に出た時だ。
「私も一緒に行く! ――じゃなくて、行きたいです!」
デーナが目を輝かせて言った。
「ずっとお城の中で面白いこと無い、ですから……」
「デーナ様、遊びに行くのではございません」
「それに面白いところじゃないと思うよ――」
「わかってる――わかってます! 邪魔しません、迷惑かけませんから」
サティエルとスティフがさとしても必死に彼女は言っている。
「お願いです、連れて行ってください。なんでも――」
「ああいいぞ」
そう言うと護衛組が同時にこっちを向いて「いいんですか!?」と言った。
……あ、後ちょっとで「なんでも権」を得られるところだった。くそう、焦りすぎた……
でも何だかんだで言うこと協力してくれそうな気はする。
何気に人生の大先輩でもあるし。
「面白いことは少ないけど、予習がてら連れてってやるよ」
俺が馬車引いたりするわけじゃないけどな。そうそう、まだ魔道具車(仮)は実用サイズでできていない。
「予習……?」
みんなが首をかしげる。口が滑ってしまった。
「まだ内緒だ」
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