襲撃
今日はなんて幸せな日なんだろうか、自分はタカハル様と釣り合わないと思っていたことが嘘のよう。ずっとこの腕を抱きしめていたい、だがそれは少々迷惑だ。だから横で楽しそうに机に向かうタカハル様を眺めている。
「――なあ、そんな見てて面白いか?」
「ええ、楽しいですよ」
「そ、そう……」
そうして顔を赤くするタカハル様が可愛くて仕方がない、カッコいいお姿を見せる時も勿論素敵だけど、恥ずかしがるタカハル様も好きだ。
「今日はこのくらいにして寝るよ」
「かしこまりました」
……そしてベッドに入るとタカハル様はすぐに眠りに落ちてしまう。積もるお話があるのに、だけど眠りを妨げるなんてもってのほか、また明日たくさんお話しよう。そう思ってタカハル様の手を握り目を閉じる、いつもよりも早く眠りにつけた気がした。
―――――――
………………ふとした拍子に胸に何かが突き刺さるような感覚を覚えた。状況を確認すると俺の隣でルビーが寝ていた。
飛び起きた俺に対してルビーが目をこすりながら起きようとする。
ただ寝ぼけたのかと思ったが、違う。魔覚が強く刺激されるのがわかる。
「ルビー、起きれるか?」
「――どうなさいましたか?」
口調から事の深刻さをわかったようだ。ルビーは近くの机に置いてあった黄色い丸い宝石を取る。
「〈魔覚敏感化〉……ぁ」
「――タカハル様! どうなさったのですか!?」
ルビーの声で我を取り戻す。とにかくルビーに状況を伝えなければいけない。
「また来やがった。あの時の侵入者だ、もう城壁の中に入られてる。一直線にこの部屋向かってきてる。どうやって登るかはわかんないが……」
「タカハル様、どうかご自分を守ることを優先なさってください」
ルビーと共に部屋の扉側に移動する。それに返答して魔覚を集中させる。こんだけでかいともう少し近づいたら色んな奴が気づくと思うんだが……
そう考えていると壁から少し離れたところで止まった。
「止まった……? 何か待ってるのか、それともただの偵察か……」
……しかしそれから数秒後、それはなんだったのか気づかされる。
魔力がそいつから放出され、そいつが飛び上がる。空気が作られていることがわかった、つまり風魔法だ。
「ルビー、窓から来るぞ!」
その声にルビーは玉を大剣に変えた。この距離ではルビーも魔覚で気付いたのか俺の前に立って窓に向かって大剣を構えた。
それが窓に到達する直前、遠くから爆発音が聞こえた。それに反応するとすぐに窓が割られた音がする。爆発は俺の部屋に侵入する音のカモフラージュか……!
目の前を見ると黒い服を着たそいつが飛び込んでいた。あの時の、俺をボロボロにした例の兄弟の弟だ。
すぐにルビーは大剣を横に振りながら突進する、そいつは剣で受けるが吹き飛ばされ壁に叩きつけられる。だがダメージが少ないようだ、受け身か。
そいつは舌打ちすると腰の後ろから何か取り出した。
紫色に反射する紫色の針を一本手に取ったが見えた。俺は防御に徹して魔力障壁で飛び道具対策をする。
だがなぜかそいつは腕に刺し込んだ。突拍子もない自傷行為に俺もルビーも困惑した。
何が起こるのかと考えたら魔覚がそれを教えた。魔覚がここまで異常を伝えるのは初めてだ、いくらなんでもやばい。あの紫色の針がなんなのかはわかった、魔石を加工したものだ。
魔石を摂取した人間はどうなるかは知っている、魔物になる。経口摂取でなく体内に無理矢理いれるとどうなるかは想像もできない、そもそも生き物が魔物化するところ自体見ていない。
だが相手は口を押さえ屈み込む、そんな隙を逃さずルビーは飛び込む。
……なぜか嫌な予感がした。
予感? 直感などただの妄想だ。情報を整理して起こることを予測しろ……!
魔覚がピリピリとする。魔力が強いことがわかる。魔力が強い……強く動いているわけじゃない、魔力が多い、それに濃度も高い――
まずい……! ルビーに離れるよう伝えようとする。
だが遅かった。ルビーが近づくのをやめ苦しそうに床に手をつき座り込む。
「ルビー!」
ルビーの元に駆け寄る。魔力が濃い……外の魔力が入るのを阻害するように体内の魔力を動かす。肩を組んで魔法で補助しながら距離を取る。剣も魔法による運動エネルギーで引っ張ろうとする。重い……
なんとか引っ張れる。敵は苦しそうにしているままだ。
「ルビー、大丈夫か? 体の中の魔力を外に出せ、濃すぎる魔力、それに他人の魔力は毒だ、なんとか自分以外の魔力を押し出せ」
「は、い……」
ルビーが深呼吸して魔力を回しているのがわかる。
座り込むルビーを支えながら魔力を操作する。毎度同じく銅線+電気だ!
俺の銅線は敵に突っ込んでいく。が、急に現れた敵の魔力障壁に阻まれる。
「くっそ、悶えてるがもう魔法使えるようになってる……」
気づくとルビーは回復して大剣を手に持っていた。
「もう多少部屋壊れても問題ないよな?」
「はい」
その答えを聞くとすぐに魔力を動かす。
「〈高運動エネルギー弾!〉」
バカみたいにエネルギーを蓄えた粒子の塊が敵に向かって打ち放たれる。動かないなら当たる……!
それを撃とうとした瞬間、敵が頭を横に逸らした。
さっさと倒さないと面倒なのに……部屋に閉じ込めて毒ガスを使うか。単純な構造で致死性の高いガス……一酸化炭素が候補……考えてたら向こうが動き出してしまう、これでいく。
致死量は濃度5%もあれば数十秒で呼吸できなくなる、問題は空間か……出来る限り近づいて魔力障壁の中に閉じ込める……!
カーボンナノチューブだったら簡単には破られないはず、逃げ出されないために一気に貼る。一辺2mの箱……
入った! あとは中で一酸化炭素を作るだけで――
……なんだよあれ……
急にやつの体が肥大化し、黒い毛で覆われていく。指先からは巨大な爪が伸び、腕は尋常じゃないほど極端に巨大になっている。顔は人の形をやめ狼のように変わった。
すると囲まれていることに気づいたのか魔力障壁を殴りつける。
ちょ、やばい。押さえるだけで魔力がもってかれる――そう思った束の間、たった三回殴られたほどで壁が外される。
くっそ、一か八か風に乗せてガスを――――
そいつが動いたと思ったら目先に鋭利な爪があった。
え……死ぬ……
だが俺の顔にそれが突き刺さることはなく横へ吹き飛んで行った。
「タカハル様! ご無事ですか!?」
「――ああ、大丈夫だ。こんなスピードで動く生物見たことねえよ……」
どうやらルビーが横から大剣で吹き飛ばしたようだ。そいつはヒビの入った壁の前で倒れていたが、すぐにむくりと起き上がる。
相手も生き物だ、魔物化しようが大きくは構造は変っちゃいない。考えろ、あの超スピード超パワー生物を倒す方法を。
頭を回転させていると俺の前にルビーが出た。すると金属音を鳴らし爪と大剣を打ち当てていた。ルビーならこいつを押さえられる! ならその隙に……
だがコンマ数秒ほどでルビーが殴られドアの方へ吹き飛ばされた。
「ルビー!!」
思わず彼女の声を呼んだが自分の心配をした方が良いとすぐに気づいた。
目の前に獣が立ち、今にも振り下ろされそうな三つの爪が掲げられていた。
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もう50話って……マヂ?




