アントシアニン
知識チートていっても小学生レベルです。
ご了承ください。
「欠陥ありすぎだろ。風力弱いし、強くしすぎると危険だし、今のところ実用性低いな」
「いえ、先ほどの魔法の注目すべき点は弱さや強くした時の危険ではございません。魔力を消費せずに現象を起こしたということです。本来では魔力を消費して風を起こします、研究すれば必ず画期的なものになるます」
「いや、一応魔力は回すのに使ってるぞ?」
「いえ、従来の風魔法と比べて風力を同じくらいで比較しても差がとても大きいです。おそらくほとんどの人に可能なレベルの魔力で行使ができる量です」
「ふーん」
そんなことを昼食を食べながら話す。通常の風魔法も見せてもらったが風自体は安全かつ強い風を出していた。魔力を見るからに風を吹かしているというより空気を作ってそれを前方のみに飛ばしている感じだった。
「そういえば、魔法を使っている時名前を言っていたがそれの意味は? ウォーターボール、ウィンドリライズ、ライトだったか」
一応光魔法も見せてもらったが魔法を光エネルギーに変えるというのはこの世界の思考も一緒だった。
「はい、魔法に名前を使うのは一度使えた魔法をイメージで補助して再現しやすくするためです」
なるほど、じゃあ俺が発明(模倣)した魔法も名前つけた方がいいのか。
魔法〈扇風機〉! ――センスとかあまり気にしない俺だがいくらなんでもダサい。
「そういえば紫キャベツがあればあれができるとか言ってましたけど……」
アゲートが頬張ったパンを飲み込んで聞いてきた。
「ああ、飯食ったら見せてやる。ちょっと待っててくれ」
………………
ご飯を食べ終わったので中庭にやってきた。
執事さんたちに頼んで用意してもらったものがこちら。
机、ビーカー複数(ちょっと多め)、千切り紫キャベツ、すり鉢、水大体2Lくらい、レモン、石鹸、あと小さいバケツに入ったこの庭の土。そういえば容量の単位も同じだった。
「やっぱり料理ですか?」
「土とか石鹸とか何に使うんだよ。」
「あははー……」
アゲートの性格は二日目にしてだんだんわかってきた。他三人は敬った態度だからそんなわからないが。
「まあちょっと見てろ」
そう言ってキャベツをすり鉢ですり潰していく。
結構地道だ。でもちまちまやるのは慣れてる、そんな感じで100gくらいすり潰したところで水をビーカーに100mlくらい入れた。そして水にすり潰したものを入れた。
「あ、混ぜるものないじゃん」
そんな時の為の魔法だ、スクリュー起こせばいいだろ。
サルトロ、サティエルが興味深そうに見ている。
15秒くらいやって終えた。こんなんでいいか。
「これにレモン汁をたら――」
切れてない、魔法で切る。プロペラができたのだから魔力製カッターくらい簡単だ。
「気を取り直して、レモン汁を垂らすと――」
紫キャベツを溶かした水が赤みがかっていく。
「「おお」」
「魔力をなしに……一体どうなっているのですか?」
サルトロが興味深そうに聞いた。
「紫キャベツにはアントシアニンって言う物質が含まれてるんだ。それが酸と反応して変色するんだ」
「酸を使ってくる魔物はたまにいる」
「あいつら結構面倒くさいですよね」
ルビーとアゲートが話している。
「魔物?」
前世のフィクション知識から、それっぽい物の予想はつくが聞いておく。詳しく聞いておきたい。
「人以外に魔力を持つ生物のことです。発生する原因は他生き物と同じのところもあれば、ダンジョン産、人工的に作られる場合があります。現在まだまだ分かっていないところもありますが」
「色々気になることはあるがまたあとでだな、実験はまだ終わりじゃない。見たい反応は酸だけじゃないからな」
もう一回キャベツを擦り潰そうとしたところで気づいた。
「魔法でできるか?」
ミキサーみたいにすればいいか。キャベツをビーカーに入れ魔力の板で蓋をして、中にさっきの魔力ナイフと魔力扇風機をを合体させたのを小さくさせて半分90度曲げた物を底につける。
早速起動させ……危ない、抑えないと暴れ出す。魔力と手で固定しながら起動させた。
とりあえず秒速50回転くらいで…遅い、もっと速くてもいい。少しずつ速くして秒速150回転くらいで止めた。ほとんど液体にまでできた、水を足せばもう液体だろう。
「意外といけるもんだな、すり鉢いらなかったか」
「タカハル様の風魔法の応用ですか?」
サティエルが言った。
「ああそうだ、羽のところ刃にしてちょっと加工したらいけた」
「近接魔法で応用も……」
ルビーがそんなことを呟いた。
「あー……」
まあ戦争している世界らしいからなぁ、そんな考えにもいってしまうか。
これで攻撃するとか考えたくもねえ。
「まあ、それよりもだ」
ミキサーにかけた紫キャベツが入ったビーカーに水を加えて混ぜた。
新しいビーカーを出し、水を200mlほど入れてそこに石鹸のかけらを入れた。そしてさっきと同じようにミキサーにかける。そういえば魔法に名前つけると再現しやすくなるんだったな……魔法〈ミキサー〉!
……て、石鹸が浮いてしまってうまく混ざらない。もういいや、こんだけ動かしてりゃそのうち溶けんだろ。
溶けるまで混ぜ続けた。
「よーし、それじゃあこの石鹸水を紫キャベツ液に入れると」
紫色の液体が青色に変色した。
「今度は青色ですか……これはなぜ?」
「アントシアニンが今度はアルカリに反応したんだ。すると、こんな風に青色になる。ちなみに石鹸だから弱いが、もっと強いアルカリだと緑、そして黄色になる」
「アルカリ...…ですか、酸を弱めるとかいう…あまり研究がされていませんが」
サルトロが言った。
「ああ、そうだ。まぁ研究が進まねえのは戦争中だし、そもそもアルカリは酸に比べて自然界でほとんど見ない。聞いている感じ人工でも灰からくらいしか作れんだろ。多分この石鹸も」
「はい、石鹸は植物の灰から作られています」
サティエルが教えてくれた。
「……頭痛くなってきた」
「姫様! 聞くのを諦めるとそんなことは起きませんよ」
ルビーとアゲートが話している。この会話の中に入るのは難しいだろう、この世界のこの時代からしたら専門的な話だ。
「ところで土は一体何に使うのですか?」
サティエルが聞いた。
「実を言うと、こっからが実験本番だ。さっきまでのは確認実験だ」
「さっきのまでが確認ですか、酸、アルカリ、土……
全くわかりませね」
「まあ、酸アルカリがあるのは液体だけだと先入観があるからかもな」
「! もしや土にも酸かアルカリが?」
サルトロが期待しながら声を発した。
「大正解だ!」
「私だって気づいてたましたのに」
サティエルが不満そうにしている。
「まあまあ、とはいえもしかしたら中性かもしれない。あ、中性っていうのは酸アルカリの真ん中な。さっきの紫キャベツ液に入れても変色しない。水とかがそれに当たるな。しかもこの方法だったら液体しか測れない、一回液体にする必要がある。だからもう一回紫キャベツ液作って、土を水に溶かしてだな」
「紫キャベツは私がやります。先ほどの魔法のようにはいきませんが」
サティエルが言った。
「ありがとう、じゃあ頼む」
さて、俺はスコップで土を少し、水を300mlくらいビーカーに入れ、スクリュー魔法で混ぜる。今回はよく混ぜなければいけないが、速すぎても飛び散るので時間をかける。
「今のうちに聞いておくか、魔物がダンジョン産って言ってたが、それはどういう意味だ? 湧いて出てくるのか?」
「はい、それはもう地面から這い出るように」
サティエルが言った。
「食べられる魔物が出るダンジョンは食糧事情としてとても有用です 」ジュルリ
姫様? なんか変な音しませんでした? 参考にするべきところは取捨選択したほうがよさそうか。
「でも危険が伴いますがね、稀に出る変異種は事故を多く引き起こしています」
「変異種……」
サルトロの言葉にそう呟いた。突然変異のことか?
「そいつらも美味しい」
「わかります姫様!」
ルビーとアゲートがそう話した。言っちゃったよ、美味しいて言っちゃいましたよ姫様!
なんというか、お姫様もそういう性格の人だったのか……
そんなことを話していたらいい感じに混ざった。
どうやらサティエルも終わりそうだ。
「タカハル様、終わりました」
「ああ、ありがとうな。それじゃあ早速」
土のビーカーに紫キャベツ液を入れる。
「――土の色が強すぎる……」
地面にうなだれる。土の色が強くて紫キャベツ液の変化がわからなかった。
「えっと、もしかして失敗ですか?」
サティエルがそう言った。
立ち上がって答える
「この実験で色を見ようとすることについてはな。だが、この失敗の活かしようなんかいくらでもある。次の道筋がたった。まずは土の水をろ過してからやってみる」
「ろ過……ですか?しかしそれでは酸、アルカリの素が水にいかないのでは?」
「もっともな疑問だ。そうだな、酸アルカリの素が水に溶けたり、土は流されず素だけ流れれば確認できるな。
まずはろ過の魔法だ。俺のとこのろ過の方法はろ紙を使うのが一般的だな、土壌検査用のろ紙の孔径5μmくらいだったかな。つまり0.005mmくらいだな」
「み、見えるんですかそんな小さな穴?」
サルトロが聞いた。
「確か10μmが肉眼で見える最小の大きさか、虫眼鏡でも使ってもちょっと無理かもな。でもイメージはつく。だったら魔法でやってやるよ。簡単にできなくても、科学に最終的な失敗なんてものはない!」
ビーカーを1つ取り出した。膜を上に張るイメージだ。
「髪の毛が大体800μm、んでその19分の1、大体20分の1……」
イメージするために実際髪の毛を見たほうがいい。自分の髪の毛を一本抜いて先端を眺める。
イメージをマクロ化しろ、一体どれだけマクロの世界を見てきたと思ってる。最初に使わせてもらったのは5歳か、細胞に酵素に結晶。
両親揃って子供をこんな科学少年にしやがって、大感謝だな。
小さい頃に見た皮膚細胞が10〜20μm、それの半分弱か。
そこで一つ穴が開いた感覚を得た。とんでもなく小さい穴が。いいぞ、このまま穴の数を増やしていくんだ。
100、150、200・・・500・・・今1000くらいか。
コツがわかってきた。4000くらいで終えてろ紙を曲げる感覚で魔力製のろ紙を歪める。
「だれか……この上にさっきの土の水を流してくれ。慎重にな……」
集中しながらの会話は疲れる。
「かしこまりました。」
サルトロがやってくれるようだ。低い位置からゆっくりとながした……
魔覚でそれが起きたのを感じ取った。
「「「「「あ」」」」」
そこにいる全員が口に出した。魔力製ろ紙が破れてしまった。
「申し訳ございません、もっと慎重に行うべきでした。」
「まあ仕方ない、多分もっと慎重にやっても同じだったろうよ。それよりも次だ。今度は頑丈にしてやろう。」
そう言って少し入った水を戻しもう一度魔力でろ紙を作る。穴を開けるまではコツを掴めた。そして耐久性だ、折ってからのほうがやりやすいだろう。
頑丈のイメージ、魔力同士を強く結合させる。穴を開けたまま……
「っ! 頑丈にしようとすると穴が塞がっちまう……」
どうすればいい――紙と同じで繊維のイメージで一から作り直すか……?
「タカハル様、お手伝い致します。頑丈にするのはお任せください。」
サティエルがそう言って魔力を抑えてくれた。確かに硬くなったように感じる。このまま穴を作れば……穴は開けずらくなったが問題はない。
「サルトロ。頼む……」
「はい」
サルトロがさっきよりも慎重に注いでいく。ポタポタと滴り落ちていく。
「成功ですか!?」
「まだ油断するなよ」
「は、はい」
サティエルも結構集中している。頼むぞ、できればここで終わらせたい。
ものの数分で300mlくらいろ過し終えた。
「もうサルトロはいいぞ」
「はい」
「サティエル、こいつをゆっくりと移すぞ。ここ大事だからな、頼むぞ」
「はい…!」
元のビーカーに寄せ、それをゆっくりずつ動かす。息を合わせなければならない。なんとか別ビーカーの上に行ったところで魔法を解除した。サティエルもだ。
「はー……疲れたー。集中しただけじゃなく魔力使うとこんな風に疲れるのか」
なんとも形容し難い疲れに見舞われた。なんというか、身体の中枢が疲れたような感じだ。
「はい……細かい魔法をすると出る疲れと継続した時の疲れですね」
サティエルも疲れたみたいだな。
「そうなのか。それにしてもありがとうな。本当に助かった」
「いえ、そんなことございません」
「ところで、こちらはもう紫キャベツ液をもう入れても?」
「ああ、頼む」
サルトロが紫キャベツ液を注いでいく。色は紫色が薄まっていくだけだ。
「え? 失敗ですか?」
「ええ!?」
ルビーとアゲートがそんなことを言った。
「ちげーよ。これはただの中性だったてことだ。実験大成功だ」
「そうなんですか!? おめでとうございます!」
アゲート流されやすくないか。俺の世界だったら悪い人に簡単に騙されちゃうんじゃないか? なんか心配だ。
「ともかく今日は終わりだ。にしても本当に疲れた、慣れてないことやったからだろうな」
「では休憩がてらお茶でもしませんか?」
サティエルが言った。戦争中にお茶ねえ、貴族様やら王族様だからできるんだろうな。でも農作物の情報が来るまで時間はある。ゆっくりやっていこう。
「ああ、そうしよう」
ちょっとしたお話
「これ飲めたりするんですか?」
アゲートがそう言った。
「え?そこの赤色のやつだけは飲めるだろうな、レモンと紫キャベツだけだし。とはいえ味はそんなによくは
...ってもういってるし!?」
アゲートが半分くらい飲んで机に置いた。
「ど、どうだった?」
「・・・まあ、レモンのおかげで飲めなくはないです。」
(※あくまで個人の感想です)
「あ、そう」
本当に転生者の護衛なのだろうか・・・
他の護衛も呆れてる。
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