科学少年の恋愛
魔法の研究の為に護衛と共に中庭へ出る。
「あー、一々そんな驚かなくていいだろ。別に俺とルビーが手繋いでないだけだろ」
なぜか着いてきたスティフに向かって言う。護衛達にも同じように驚かれた。ちなみにデーナはいない、サティエルいわくふかふかのベッドでくつろいでいるらしい。
「いや、あんなラブラブだったのに今日は違ったからさ」
〈タライ落とし〉
「いっったあい!?」
魔法で作った鉄とアルミニウムの合金、つまりステンレスのタライをスティフの頭の上に落とす。するとスティフは頭を両手で抱えしゃがみ込む。人の心を土足でズカズカと……
顔を赤くするルビーが見えたがなんとか切り替える。
「アゲート、準備いいか?」
「いつでもいいですよー!」
上にいるアゲートに対して声を上げて聞き、そしてそう返される。
長い目盛りを貼り付けた壁に行き魔力を精一杯上に伸ばす。その魔力を変異させる、とりあえず作りやすく丈夫なカーボンナノチューブを。
「9.6mです!」
「ありがとー。若干俺の体感の測定とずれてたか、それとも……」
「タカハル様、一度この実験はもうなされたのでは?」
サティエルが聞いた。
「ああ、確かにやった。だけどちゃんと測定してないのもあるし、それに条件が違うんだよ」
「条件、とは?」
サルトロの質問を聞き、真上を見上げ「あれ」という。それに対してスティフが未だに頭を抱えながら口を開く。
「あれって?」
「見りゃわかるだろ、太陽と月。世の中には万有引力っていうのがあってだな、端的に言えば全ての物には引っ張る力があって重けりゃ重いほどその力が強くなるっていう法則だ。で、それが海の水を引っ張って潮の満ち引きを起こしてるってわけだ」
護衛組は驚いたりへーという反応だったりまちまちだ。てかいつのまにかアゲートはここまで来てた。スティフは「そこまでは知ってる」とコメントを言う。
「そこで、魔法を使う何か、もしくは魔法を使わせない何かも満ち引きが起きてるんじゃないかっていう観測のためだ。だから深夜――が一番いいけど流石にきついから日没後にもう一回やるぞ。ま、役立つかは知らんけど」
そう言って上を見上げる。一体魔法を使えなくする、もしくは魔法を使えるようにするものこ正体はなんなのか。
「あー、マジで高くに行くと誰もが使えないのはなんでなんだ?」
「――タカハル様」
「ん? なんだサティエル?」
「そのことについて実は例外がございまして……」
「……てなわけでデーナ、ここで飛んで魔法使えるか?」
デーナに中庭に来てもらいそう言った。
すると「えっと」と声を出しながら周囲を見渡す。すると「できるよ!」と答えた。そういうわけなのでやってもらうこととなった。
デーナからちょっと離れてその様子を見守る。デーナは翼竜の持つような2mほどの翼を広げてさらに屈んで足に力を入れた。
そして、足を伸ばし翼を羽ばたかせたと思ったら風がくる。一瞬目をつむってしまう、目を開くと目の前にはデーナはいない。魔覚で上で炎をつくっているのがわかったので上を見上げる。するとそこにはカボチャパンツが――
「「「「あ」」」」
男性陣四人で声を出す。
するとサティエルが杖でスティフと護衛男性組の後頭部を三連増で叩く、そしてルビーが真顔で俺の腕を抱える。どうしたのかと一瞬考えると――
「痛い痛い痛い、ストップ! ちょ、悪かったて、腕折れるって! ルビーやめてってば!」
「「「「申し訳ございませんでした」」」」
――――俺含めた男性陣は降りてきたデーナに向かってドゲザする。アゲートはドゲザを覚えた。
デーナは困惑するが、すぐになんのことかわかったようで顔を赤くしてスカートを押さえる。
「この度は、後先のことを考えずこのようなお願いをして誠に申し訳ございませんでした。卑しい気持ちは微塵もございませんでしたが、結果としてこのように――」
「もういいよ」
長々と謝罪の言葉を続ける俺にデーナが止める。立ち上がりもう一度謝っておく。
「で、結局竜ができてその他ができない原因はなんだ?」
護衛達も全くわからない様子。
「でも、もっと高いところに行くと使い辛くなってくるの」
「あー、じゃあ身体の強さとかそのあたりか? ってことは魔石になんか秘密はありそうな気はするな。」
腕を組み頭を傾げ仮説を立てていく。
「わからんことが多い、部屋に戻って本読み直してくるよ」
中庭から戻ることを告げ、護衛を引き連れて部屋に帰っていく。
……部屋に入ってソファに座り本を取って竜の解剖図のページをまじまじと見る。他の動物と基本的な構造は同じだけどよく見ると構造が違いすぎるんだよ。魔法に関してだったらそりゃ魔石はでかいけど……他魔物、鳥系とかですら高くなると魔法使えないみたいだし。
他の上位種はどうなんだろうか、あと人化魔法とき中はどうなってるんだよ。後で聞いてみよう。
にしても肩凝った。本重いんだよ、まあ一冊に情報ギュウギュウに詰め込んでるからだけど。
本を机に置き飲み物を手に取る。
「ところでさ、もう一緒じゃなくてもいいんだけど……」
「お嫌でしたら――」
「いや、そういうわけじゃないんだけど。自由にしてもらって構わないんだけど」
そう言うとルビーはこっちを向いて真剣な顔をした。急になんだと少し身構える。
「タカハル様、お伝えしたいことが――」
ルビーがそう言いかけるとドアからノックの音が聞こえる。ルビーに先に聞こうとするが「後でも構いません」と言ったので食堂に向かうことにする。
なんだろう、気になる。
……食堂でサティエルにそれとは別のことを聞いておく。
「それでさ、竜以外の上位種はどうなの?」
「竜以外の魔物は聞いたことはありません」
「プラメアー様のグリフォンは使えたと記録があります」
サティエルが言った後にサルトロが答えた。それにデーナが首を縦に振る。
「うん、グリフォンのリーさんはできてた。他にもコウモリのバットさんもできてた」
名前まんまじゃねえか! というコメントは飲み込んで。
「えーとプラメアーさんの飛べる魔物は全部できた感じ?」
その問いにデーナは肯定する。こことはまた異世界だからそもそも違うのか?
「あとプラメアーさま自身も召喚された先輩に乗って魔法使えてた」
「ええ、確かそのような記録も」
「例外がポンポン出てくるな」
ま、科学の中でも例外が結構あるのはよくある話だ。
……食事が終わって部屋に戻る。風呂まで少しの自由時間だ。
「それで、話したいことって?」
「……タカハル様」
ルビーの赤い瞳を見つめ話すことに耳を傾けようとする。ルビーの息を吸う音が聞こえる。
「私はタカハル様のことをご慕いしております」
「……ふぁ!? えっと、ご慕いって言うのは俺の誤解とかじゃなければ、なんていうか、その……」
「はい、愛しております」
ルビーは緊張した声が耳に入った。頬を赤らめたのが目に入る、だけどルビーを直視できない。
「えっと、えっと……その…………」
次が続かない。『はい』と言うだけだ、それができないなら首を縦に動かすだけ、それもできないならルビーの体を引き寄せるだけ。
なのに体が動かない。なんで、肺と声帯と口に脳から電気信号送って動かすだけだろ、いつも簡単にできるだろ。そうじゃなければ首のみイオン交換やめて力を抜けば勝手に頷くはずだろ。腕に電気信号を送って肩の筋肉を収縮させてルビーの体を寄せればわかってもらえるはずだろ。
なんで体が動かないんだよ――――
「あの、答えはすぐじゃなくてもいいですから」
ルビーはそう言って、部屋から出て行ってしまった。
その後戻ってくることはなかった。
……数時間後、風呂で湯船の中で背中を壁に寄りかかりぼーっとする。
「タカハル君」
「あ?」
スティフの返事にそう返す。
「なんか機嫌悪くないかい? まあいいや、お節介かもしれないけどタカハル君もしかしたら気付いてないかもしれないから言うけどルビーちゃんはタカハル君に惚れてるんだよ。男の子の方からバシッと言ってあげないと」
「ルビーのことはわかってるよ……てかもう本人から言われた」
「「「え!!」」」
「いつ!?」
護衛組も驚きの声を出す。スティフが続けてそう聞いた。
「今さっき……」
「それでそれで、なんて答えたの?」
スティフが興奮気味にそう聞いた。
「――った」
「え?」
「何にも答えられなかった。」
その言葉に沈黙が訪れる。
「……ええ、一番ダメな結果じゃないか」
「うっせえな! 恋愛初心者に無理だよ、もう何にもできなかったんだよ……」
顔を湯に少し沈める。
「それでタカハル君自身はルビーちゃんに対してどう思ってるの?」
「俺は……ルビーといることでテストステロンにセロトニン、もしくはドーパミン分泌されてその結果ノルアドレナリンが――」
「普通に好きっていいなよ」
「なんでわかんだよ、絶対知らねえだろ」
「フィーリングさ。そう思ってるならちゃんと気持ちを伝えた方がいいよ、向こうも待ってるはずだよ。」
「無理だよ――」
そう言いながら顔を水面に沈めブクブクと気泡が水面に出てくる。
こんなことになるなら父さんと母さんの付き合うまでのことガキらしく聞いときゃよかったかな……興味ないとか冷たくあしらうんじゃなかった……
星一評価、辛辣、一言感想でも構いません、ちょっとした事でも支えになります。世界観や登場人物の質問もネタバレにならない程度に回答します。(ガバあったらすいません)
科学質問も出来る限り回答します(ネット知識なので大したことはできないしガバガバですが……)
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