アイスクリーム
「ただいま!」
「はいはいおかえり」
馬車からスティフが飛び出す。するとスキップする。
「アイス、アイス♪」
「大人がスキップするのって結構気持ち悪いんだな。」
「ちょっと!?」
そんな馬鹿なことやってから中庭に集合する。
「ほい、じゃアイスクリームだな」
「アイスクリームってどう作られてるか知らないんだよね」
「それじゃあまず、この容器のこっち側に水、反対側に食塩水を入れて……
電気分解します」
「なんで!?」
「声でけーよ、確かに普通使わないけど色々なもんがねーんだよ。代替品作るしかねーんだよ。で、こっちの液体が水酸化ナトリウムだ!」
ぐへへへへ、化学してる気分ちょー楽しいぜ!
「楽しそうにしてるところ悪いけど本当にアイスクリーム作ってる?」
「お菓子とは程遠い気がしますが……」
スティフとサティエルがそう言った。他のみんなも苦笑いだ。
「まあそう焦るな、一歩いっぽだ。で、次に瓶詰めした牛骨の粉を……魔法で作った塩酸で溶かす!」
「いやなんで!?」
「黙って見てろ。最後にはちゃんとアイスクリームになる」
骨のリン酸カルシウム部分を溶かし出せればいいので魔法で作った塩酸でいい。塩酸が消えれば下にリン酸カルシウムが沈殿していく。
瓶の中で粉末がシュワシュワと気泡をだし溶けていっている。魔力は結構込めて長い時間持つようにしてある。
「溶かしてる間に別のことだ。バニラエッセンス作る」
「おお、聞いたことある」
「美味しそうな名前ですね」
スティフとルビーが言った。
「じゃ、まずローレルっていう昔に冠とかに使われてたらしい植物の葉のエキスをが、こちらになります」
「あ、もう作ってあるんだ」
「作ってあるっていうか作ってあったのを貰っただな。意外と民間的に広まってるっぽいな」
「で、これを水酸化ナトリウムにどばあ! そして煮る」
「まだ、食べ物にはつながりそう……」
一応魔法の塩酸を除去するためだからこの水酸化ナトリウムも魔法由来のでいい。これで出せる物質が残り続けたらどんなに楽なことか。
スティフの言葉を気にせず次の工程に進む。溶かしきった骨を瓶の中で水で処理する、それでもう一度塩酸を入れる。
「でバニラエッセンスに戻る。試験管銅線でグルグル巻きにして、銅線が繋がった鉄の棒入れて。高電圧電流! するとオゾンが出てくる」
「アイスクリームどころか食べ物作ってる!?」
「不思議な香りが」
「変な匂い」
サルトロとデーナが言った。
「あんまり嗅ぎすぎるなよ。体の中錆びるぞ」
「体が錆びるって何!?」
「で、さっきの煮てたやつとオゾンを混ぜれば……バニラエッセンスだ!」
「! 甘い香りがする」
「さっきまであの匂いだったのに」
スティフとアゲートがそう言った。
「で、この瓶だけど本当は半日かけなきゃいけないけど濃度若干強めだったからちゃんと水洗いすれば大丈夫だろ。それに魔法製だから勝手に消えてくれるし。ってことで入念に水洗いを何回か繰り返して、六十度くらいであっためれば」
「これで材料全部揃ったの?」
「いや熱しないで水飛ばさないといけないからまだ時間かかる」
その言葉にスティフは「えー」などと子供のように駄々をこねる。
「まあ時短はする。さっきの骨溶かした液を熱して水を飛ばして……塩化カルシウム。こいつを周りに置いとけば水分吸って乾燥させてくれるから時短ができる」
皿の周りには白い粉が巻かれている……なんとも変な光景だ。
「えっと、何この儀式みたいな……」
「科学的根拠のある乾燥の儀式だ」
……てなことで一時間ほどで水分がほとんど蒸発して無色のゼリーが残った。
「これがゼラチンだ。あとはもう用意してある牛乳、砂糖。これで材料は全部揃った、後は鍋に入れて冷やしながら混ぜれば完成だ! ってことで俺冷やすからスティフこのゴム手袋つけてガラス棒で混ぜて」
「いいけど、手袋いる? アイスくらいの温度じゃ……」
「いる」
スティフが準備できたので俺も冷やす準備をする。
「よーし」などと声を出しゴム手袋を着けて、ルビーにも着けさせ一緒にそれを運ぶ。鍋の前でドンと音をだし地面に置く。
「そちらは……?」
「液体窒素入れたボンベ」
「それで冷やすの!?」
サルトロに答えるとスティフが突っかかる。スティフに答えるとまた質問をする。
「冷えすぎない? それ」
「安心しろ、液体窒素はすぐ温まる。口が凍ったりしねえよ」
というわけで液体窒素を入れてスティフに混ぜさせる。液体窒素の湯気が鍋から出てくる。
「完成、じゃおたまですくってさらに盛れば」
「おおおお! 待ちに待ちわびたアイスクリーム!」
「な、ちゃんとアイスクリームになっただろ。って聞いちゃいねえ、もう食ってるし」
ルビーやデーナ、そして護衛たち全員に盛り付けて渡す。もちろん自分のも。
口にすると――スティフがああなるのもわかる。暴力的にうまい、アイスクリーム発明人天才。口角が緩むほどうまい。ルビーやサティエルもこの快楽の前で顔が凄いことになってる。てかアイスのジャリジャリ感消えて更にうまい、やっぱ液体窒素使用アイスはうまい。(経験則)
「すごい、美味しすぎて涙まで出てきちゃう」
目を潤わせたデーナが言った。
「ああ、自然界にはねえもんだからな。大自然の山で生きてたやつにとっちゃとんでもない味覚の暴力のはずだ」
気付くとスティフはもうお代わりしてる。気持ちはわかるけどさあ。
そうそう、スティフに聞いとかなきゃ。
「おい、スティフ。聞いとかなきゃいけないけど。紹介受けた時余計なこと喋らなかったよな?」
そう聞くと口に入っているアイスを飲み込み答える。
「んーと、ほとんど企業秘密でなんとかなったよ。あの授業は絶対いらなかったと思うんだよね」
そう言って虚ろな瞳をしながら真顔で近づいてくる。
「あの時は悪かったって。別にそういうことならいいんだ」
不満そうな顔をした後いつも通りに戻って話を続けた。
「紹介って意外とラフなんだね。こんな凄い人雇ったからこれからもよろしくねみたいな感じだったんだ。そうそう、親が忙しいからって十歳近い子もいたんだ。すごいねーこの世界の子は」
「おっさんか」
どうでもいい話をしてアイスを食べていると横にいるルビーが話しかけてきた。
「タカハル様の世界にはこのような食べ物が?」
「ああ、沢山あった」
その言葉にルビーは目を光らせる。ルビーの期待に応えてやりたいからこれからも頑張ろう。
「美味しい……えっと、あいすくりーむ……? ありがとう! かがくって凄いね!」
デーナが話してきた。笑顔で答える。
「ああ、すげーだろ科学は……! まだまだ凄いことは沢山あるぞ!」
その言葉にデーナは目を光らせる。ククク、味方に、科学に引き込めてるのは順調だ。
……しばらくして、部屋に戻る。それでデーナを呼んで俺とルビーとデーナの空間になる。それでデーナを適当なソファへ座らせた。それで俺の今の現状を伝えた、
「それで、聞きたいことがあるんだけど。嫌なこと思い出させてしまうかもしれないけど。プラメアーさんから離れて、きっと沢山悲しんだと思うんだ。それで、どうやって立ち直れたんだ?」
「えっと……うん、とてもとっても悲しくなってずっと泣いてたの。でもおじさんがプラメアー様の言っていたことを思い出せって、それで辛くても幸せになる道を探せ、探すのを一人じゃなくていいって言われたのを思い出したの。それで気持ちを前向きにできたの」
辛くても幸せになれる道を探せ、探すのは一人じゃなくていい……
一つの記憶がフラッシュバックする。
◯
◯
◯
「母さん、父さん、みんな隆治のこと気持ち悪いって言うの。なんで……?」
小さな俺は家で泣きべそかきながら聞いていた。
「気にすることないぞ隆治! スケープゴートといって特に理由もなく――」
「父さんは黙ってなさい。いい? 隆治はね、みんなよりいろんなことを先に教わってるの。だからみんなより違うことが多いの。だから同じような子たちがかたまるの。これがどうしてみんな隆治にひどいことを言う理由ね。それじゃあ隆治はどうしたい?」
「……みんなと仲良くしたい。」
「それじゃあどうしようか考えて試しなさい。いつも言ってるようにどんなことも仮説、実験、考察よ。どうしたらみんなと仲良くできるか仮説を立てて実験しなさい。一人だけでやるんじゃないの、母さんだて父さんだって協力するし、きっとクラスの〜〜君も助けてくれるわ」
「うん」
◯
◯
◯
……どんなことも仮説、実験、考察か。
今回の問題はさしずめ荒れてる俺の精神状態に対する回復方法か。
原因は間違いなくあの事件だ。いや、正確にはその中の何かだ。痛み、孤独、敵意、もしくはそれらの複合、あるいはその他……
客観的に見ろ俺、どうして俺がこうなってるか考えたら簡単だろ、孤独感じゃねえか。別に実験ミスって怪我してもバケモノ貝に襲われてもなんにも問題なかったじゃねえか。
――知識つけて大人ぶってたやつが孤独感でトラウマとか結局ガキじゃねえか。笑い話にもできないくらいくだらねえ。
じゃあ、どうするかだな。孤独感を取っ払えばいい、俺は別に孤独でもなんでもねえ。味方はいるだろ、ルビー達の護衛にスティフ、他にも見えないところまで……
「ったく自己分析して気づくの遅すぎる」
上向きになり、左手で額を押さえる。側から見たらただの駄々っ子だったじゃねえか、スティフとかよりよっぽど俺のが気持ち悪い。
もう、時間はかけただろ。竜としては子供のデーナでさえ立ち直ってるんだ、それも大切な人を亡くして。条件が同じどころか俺の方が条件甘々じゃねえか。
――ルビーが驚いた顔を見せる、がすぐに笑顔を見せる。
俺の右手はルビーから離れることができた。
「ありがとうデーナ。お陰でようやく気付けた、身近にあったはずのこと」
「私はそんな……」
そう言ったデーナに笑顔で返す。
「ルビーもありがとう。ずっと支えてくれて」
「いいえ、タカハル様がきっと立ち直ってくれると信じていましたから――」
そう言いながらルビーは俺の手を取った。別に今までみたいに触れていなければならないわけじゃない。
Dr.STONE様のパクリですどうぞ貶してください。
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科学質問も出来る限り回答します(ネット知識なので大したことはできないしガバガバですが……)
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