過去の転生者の遺した
満面の笑みをした赤い髪、目、角を持った少女がいた。
時間にして四十分、その一瞬で彼ら彼女らはその少女とぴったりな服を作り上げたのである。ほんとお疲れ様……
白と赤が基調の服で、背中には穴があり下は長くもなく短くもないスカートを身につけていた。
で、背中に開けられている理由だが。
「人化の魔法を使っていても翼はあるのな」
「うん、ローブ着てた時はずっと折りたたんで窮屈だったけど」
彼女はそう言うと翼をパタパタと開いたり閉じたりしていた。
「わざわざ翼があるってことは飛べるの?」
「うん! ここじゃ無理だけど」
「室内ですしね」
そうアゲートが言った。で、なんで集まってるかっていうと普通に食事である。やることがないのでちょっと早く来ただけだ、みんなはいつも俺よりも早く来ているようだけど。
……時間なので席に座って食事する。机の大きさが貴族仕様なので基本距離は遠くなるが俺とルビーだけ例外で肩が触れるほど近くなる。
ただサティエルとデーナも比較的近く座っている。なぜかというとテーブルマナーの指導である、俺も転生してすぐはお世話になりました。
でもそんなに食事がし辛いほど苦ではない、俺は一週間くらいで覚えられた。
……食事が終わったら帰るために馬車へ乗る。
……それでさ、どうしてこうなった? そうだな、それには俺たちの立場の順を考えればわかる。なんとなくだが大体こんな感じだろう。
俺>デーナ>ルビー>サティエル>サルトロ≒アゲートと言ったところか。
で、馬車は真ん中に最も偉い人が座ってその周りの順番で下がっていく。てなると自然と俺の横にはルビーとデーナが座るわけだ。偶然ではなく状況が起こした必然である。
でも俺の守備範囲はルビーだけです。
「そういえばデーナの行かなきゃいけない場所ってどこなんだ?」
その質問に彼女は俯いた。まずいこと聞いたかな、と考えるとそのことについて話し始めた。
「……プラメアー様の、お墓。人は死ぬとお墓を作るって知って、わがままで行くって言ったらおじさんを困らせちゃったけど山を下りてその後どうすればいいか教えてもらって」
何も言えなかった。親しい人を亡くしたことがない自分には察することができても理解することができなかった。
「プラメアー様の墓なら王城に、他の転生者様と同じ墓地に」
サルトロがそう言った。馬車の中の雰囲気も悪くしてしまった。申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「デーナ様はその後どうされるおつもりで?」
そんな俺を見かねたのかルビーがそう質問した。
「えっと、何にも決めてなくて……」
……話が続かん。
ふと一つ悪巧みが思い浮かんだ。
「デーナ、乗り物は好きか? とは言っても馬車くらいしか見たことないか」
「乗り物? あんまりわからないけど……」
「なら別にいい」
なんとか全面的な味方に引き込めるようにすれば――
……その後の移動は特に何もなかった。色々と俺がここで何をしてきたのか聞かせたり、逆にデーナのプラメアーさんについての話を聞いたりした。サルトロの反応を見るにおそらく初めての情報が多いのだろう。
「てかそもそも召喚魔法ってどうなってんだ? ワームホールでも出してるのか?」
「わーむほーるが何かわからないけど私も召喚前の記憶がないの。でもプラメアー様が主人ってことと生きるのに必要なことはわかってて……ともかく私にもなんにもわからないの」
「この世界の謎が増えるばかりだ……」
で、色々と謎が増えながら。数日後の昼ごろに王都に到着した、ルビーと手を繋ぎながら王城の中へ行く。
「ようスティフ、ただいま」
「おかえり……」
彼の目は虚となり視線は下を向いていた。
「どうしたそんな暗い顔して……」
「……今日の夕方にはちょっとティグリス商会さんのところ行って紹介されなきゃいけないんだ……」
「そんな嫌か?」
「アイスクリーム……」
ボソリと彼は言った。
「アイスクリーム夕方までに作れる?」
「無理だな、まず材料を取り寄せないといけない」
その答えに彼は「はああ」と大きなため息をついた。
「それで、そっちの子は?」
「えっと、デーナです」
「二代前の転生者の召喚した子、帰り道で保護した」
「犯罪者?」
「マジック酸かけてやろうかテメー」
「よくわからないけどかなり怖い事言うね!?」
声を荒げたツッコミが入る。
「いつもの感じが戻ってきたな。で、何日くらいで帰れるんだ?」
「大体四日くらい」
「おう、じゃあその日作ってやるから。行ってこい」
「うん、とびきり美味しいのをね」
「当たり前だ」
そんな後々考えると中身スカスカの意味わからん男の友情をやった後、荷物を部屋に戻しに行く。
……で、その後中庭に集合する。
「それじゃ、やる事は頼んでおいたのを確認する」
「確認って、何を?」
スティフが聞いた。
「農具だ!」
「わー! ……とはならないよね?」
「なんねえな。でもかなり重要なんだ、労働の効率化は国を回す。で、用意したのがずらーっと」
荷車に乗せた物を見せていく。
「まず鍬だな。耕さねえとはじまらねえ、それで今までのと違う備中鍬」
その鍬を持ち上げる、フォークのように先が分かれた鍬を見せる。
「……えっと、なんかすごいトラクターみたいなのを想像してたんだけど意外と普通?」
「別にトラクターとか用意してもいいんだけどな、もし壊れてしまったら直せるのが国にそんなにいない。だから素人でも直せるようなこういう単純な方がいいんだ。飢えてる人には魚を与えるのではなく釣り方を教えろと言うのはよく聞くけど、仮にその人にスーパーハイテク釣竿での魚の釣り方を教えるとしたら道具の直し方まで教えないといけない、だがそんなこと国中やるのは厳しい」
俺にとっては重く感じるその鍬を持ちながら続けて話す。
「結局はこういう単純なやつのがいい場合もあるんだ」
「なるほど、ところでなんで先端しか金属がついてないの?」
「鉄が貴重なんだよ、ほとんど鎧や武器に持ってかれちまう。だからちょびっとだけしか使えないんだよ」
そう説明するとスティフは「厳しいねえ」と言葉をこぼした。
鍬を置いて他について話す。
「次にこれ」
「これは……? おかしな見た目してるけど」
「確かにおかしな見た目だな。ちと好奇心がはたらいて、千歯こきと手押し車を合体させた。穀だけ取れるように間を調整して、取れた穀がそのまま中に入るようにしてある。ほい、ここにまだ脱穀してない麦一束がある。スティフ、やってみろ」
そう言うと戸惑いながらもしぶしぶやることとなった。
「タイヤロックして、いいぞ。足かけてやってみろ」
そうスティフに命令すると彼は言われたようにやった。
麦を引っ張ると「うおっ」と声を出しながら尻餅をつく。
「ほれ、ちゃんと取れてるだろ。あと何回か繰り返せばほとんど取れる。ちなみにロック外してから取り外せば普通の手押し車として使える。これで大分労力を別に回せる」
「別にって?」
そうスティフが聞く。
「……あいにく戦争中なんだ、兵士だ。よくて補給部隊だ」
俺とスティフのみくらい雰囲気となる、すぐに護衛たちも察する。
「――その、こちらを国中に回すとなると経費を始め多くのことが課題となりそうですが」
サティエルがそう言った。
「確かに色々大変だけど、経費は問題ない。ゴムと砂糖の収入舐めんなよ。俺の懐はとんでもねえことになてっるぜ。ギャハハハハ」
「すっごい悪い顔してるよ……」
「え、そうか? スティフ。まあでもこの為に貯めていたしな。王家から生活はさせてもらってるからそれくらいしか使い道ないしな」
そう弁明する。農業革命まであと少しだ、数の力、科学の力で俺の代でこの巫山戯た戦争を終わらせる。
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