竜
怯えたように見える少女を前に護衛は動揺を見せる。かく言う俺も混乱はある。
「竜人……ですか……」
サルトロが声を上げた。
「竜人?」
「竜人は世界にごく少数の種族です。獣人やエルフと同じように戦争には不参加を示しているはずですが……」
サティエルの言葉に獣人もいるんだと場違いな考えが出ながらも、目の前のその竜人の少女を見る。
「名を名乗りなさい」
サルトロが命令をする。
「デー……ナ……」
震えた声でそう言った。サルトロが続いて話す。
「……なぜ竜人が――」
「ちが、うの……竜人じゃ……ないの……」
その少女は怯えたように声を出しながらサルトロの言葉をさえぎった。
「竜人じゃない……?」
サティエルが驚きを含んだ声を出す。すると少女は小さくうなずいた。ツノを持った種族は他にいないのだろうか……
「それじゃあ一体どういうこと……?」
「えっと……竜…………火竜……人の姿をしてるけど……」
少女は途切れとぎれにそう言った。
「え? 魔物の竜?」
思わずそう言うとそれに対して首を縦に振った。
「おじさんがね……人化の魔法を教えてくれて……山を下りるなら人の姿になった方がいいって……」
ツッコミどころが多すぎる。ただ質問攻めにするのは忍びない。優先順位決めて一個ずつ聞いて行こう。
「えーと、それじゃあまずなんで茂みに隠れてたんだ?」
「……人にあんまり会いたくなかったから……長い間ずっと人とは誰にも会ってないから……」
「そのおじさんっていうのは?」
「おじさんも竜だから……」
まだ色々とわからんところがある。聞いていかないと。
「じゃあ、なんで山下りてきたの?」
「行かなきゃいけないと場所があるから……」
まだそこには行けてないと。なんか圧力かけて質問するの可哀想になってきた……
「あー……親は?」
あ、違う。保護者って言ったほうが適切だったか。
「親は……いないの」
彼女はうつむき着ているぼろい布を握りしめて言った。
「その……強いて言うなら……」
聞かないであげればよかったと後悔しているとそう言い始めた言ってたおじさんのことか?
「プラメアー様……」
「ッ……よくもここでそんな嘘を言えましたね……」
アゲートが怒りの含んだ口調でそう言った。おいこら待てアゲート、竜だったら長寿だから先に同じ名前持ってた可能性だって――
「待ちなさいアゲート!」
サルトロがそう言った。
「いやだって――」
「デーナ……火竜……もしかしたら――いえ、全て真でしょう。」
「一体どうして――」
「ルビー様もプラメアー様の幼い火竜の話をご存知では?」
「え? うーん……」
ルビーは目をつむり首を傾げた。するとハッと思い出したように声を出した。
「あ! 北東に逃げた子供の火竜の話!?」
「はい、そうです。」
「そう! それ私!」
ルビーの上げた声にサルトロが肯定し、デーナが続く。話についていけない……
「ただの童話かと思ってた……」
「えっと……?」
そんな声を出すとルビーがそれについて教えてくれた。どうやらプラメアーさんの最期に彼は一匹の幼い火竜を人にとっては恐ろしい竜のいる北東の山へ逃したという感動ストーリーのようだ。
「うん……ちょっと違うところあるけどほとんどあってる」
その話を聞いた彼女はそう言った。だがサティエルが話し始めた。
「いやちょっと待ってください、そんな話聞いたことありませんよ!?」
「自分もないですよ」
アゲートも続いてそう言った、だがそれに対してサルトロが話す。
「それもそのはずです、デーナ様について敵国に知られないため王家と記録係のスギタニ家しか知らないはずです」
「そういうことだったんですか」
サティエルが納得する。
そのあと護衛たち全員が硬直する……どうしたんだろうか? ふと気がつくとアゲートやサティエル、サルトロの顔には汗が見える。
「「「「申し訳ございませんでした!」」」」
うおっ!? びっくりした。ルビー以外はデーナに向かって跪き、ルビーも俺の横で頭を下げる。サティエルが魔法を解除する。
「知らなかったとはいえ、剣を向け杖を向け、とんだ不敬をはたらきました。我々は現転生者様、タカハル様の護衛故、どうかご許しを頂きたいのですが……」
「え……え!? え!?」
この状況とサルトロの言葉に彼女は大困惑する、そら困惑するよ。
「あ、えーと……許してあげて、俺が言えた立場じゃないけど。俺も謝る、悪かった」
「え、えっと……いいよ……」
「ご慈悲感謝いたします」
サルトロがそう言って顔を上げた。サルトロは続けて話す。
「デーナ様、どうかその身を我が国で保護をさせていただきたく、王都まで同行していただけたら幸いなのですが。」
「え?」
「ようするに今戦争中で敵国にさらわれてもおかしくない人物(?)だから安全な場所、食べ物、服を渡すってこと。てか行かなきゃいけない場所があるんだろ? そこに行くのも多分助けてもらえるぞ」
「うん……そういうことなら……」
その言葉にサルトロはまた感謝の言葉を述べる。
「まず、次の街で服装をどうにかしないとだな。もう歩いて二十分もないくらいだし。そこまで歩ける?」
その問いに彼女は頷いた。
……というわけで徒歩で二十分ほど一緒に歩いて、街の門まで来た。すると門番が話してきた。
「転生者様並びに護衛の方々、歩いてこられてどうされたのですか?」
「タイヤが破損してしまったので」
「それはとんだ災難を」
サルトロが対応した。
「ところでそちらの方は?」
ローブを着たデーナのことを見てそう言った。
「そのことなのですが、上の者を呼んできなさい。タカハル様達は先にご行きになってください」
サルトロがデーナのことを話すようだ。
俺達が歩く道はどうやら衛兵達が人払いするようで、まあアイドルみたいに動けないみたいなことはない。
建物からすっごい視線を感じるけど……
そんで領主の家に訪れて、サティエルが事情説明したところ、デーナは採寸した後サティエルと風呂に行くようだ。で、俺たちは部屋でのんびりとする。
「ご所望のものをお持ちしました」
ノックと共に女性の声が聞こえる。扉を開くと台に数冊本を乗せて持っていたメイドさんがいた。
礼を言って台ごと受け取りソファの近くまで持っていく。そのままソファに座り上の一冊を手に取って膝の上に置き、表紙をめくる。
竜、それは爬虫類の魔物の中で特に強力な種類のことを指す。蜥蜴や蛇、極々まれだが亀もいる。中には知能が高く人と意思の疎通が可能なものもいる。ただそのようなものは大抵人に見つからぬよう魔力を抑え人里離れたところで暮らしている。
竜に限ったことではないが上位の魔物はその種類の魔物として生まれる場合と魔石の捕食によって魔物として成長する場合がある。なので竜かそうではないかの微妙な状態がある。
竜は魔石はもちろん、鱗、骨、角、肉や血まで需要があるので狩猟することは多い。だが、その強さから下位種まで狩るにはそれぞれ十分な戦力を持った数十人で戦ってすら犠牲が出る。
「あれ、デーナ見た目以上に強い感じか……?」
「恐らくは」
独り言のつもりだったがルビーが答える。俺の周り強い人多いな、いやそりゃそうなるだろうけど。
「そういえばルビー、小さい時から国中まわって魔物と戦って修行してたって言ってたけど竜と戦ったことは?」
「下位の竜なら十体――」
結構多いな、何回も討伐隊に入ったりしたのだろう。
「単独で」
「単独で!?」
さっきまで読んでいた犠牲者が出ると書いていたところを四度見くらいする。規格外すぎだろ。
ルビーは自慢げな顔をする。
「すごいな。えーと、どんな奴を?」
竜図鑑と書いてある本を手に取り、下位種のところを開く。
「こいつを二体と、これとこれと、あとこれが三体の――」
ファミレスでたくさん注文する子みたいになってる。
「単独でしたら、中位のこの竜を一体だけ。」
「えーどれどれ……亀竜、硬い甲羅に篭りながら魔法を放ってくる。甲羅を砕かない限り倒すのは困難。亀種の竜は中でも長寿なので中位のうちに倒さないと上位となりやすく危険である」
「甲羅をこれで一発でやりました」
首に下げている大剣となる宝石を見せてそう言った。
「確かにルビーが叩き割ってる光景が目に浮かぶよ」
「タカハル様は幼い時どのようなことをなさっていたのですか?」
ルビーがそんなことを聞いてきた。なので昔のことを思い出そうとする。
「うーんと、色々と工作とか化学実験とかしてたな。ルビーと同じで自分だけでやったのはマルクスジェネレータだな、あれができた時の達成感はすごかった」
「まるくす……」
「マルクスジェネレータ、落雷装置だ。とは言っても30cmくらいだけどな。一ヶ月かけて一人で作ったんだ、まあ材料とかはもちろん市販のやつからだけど。あとはそうだな、父さんと一緒に作ったのだったら連射式空気砲とか――」
多分わかってないけど笑顔で聞いてくれる。
他愛もない話で楽しい時間を過ごしていった。
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