海
「おお、見えてきたな。あそこら辺で貝殻が取れるんだな?」
窓から行く道を覗き込みながらルビーに聞く。
「はい、それも大きいのが」
いい知らせだ、大きいのが沢山取れるっていうのはその分炭酸カルシウムを得られるということだ。ま、後々拾わせに行かせるから俺らが多く取る必要は無いんだけどね。確認しとけば最低限良い。
…………海岸から少し離れたところに馬車をとめ、海へ歩いていく。するとそこは最初思い浮かべていた砂浜とは大きく違い、岩場だった。
「こういう岩場だと貝殻っていうよりは貝自体が多そうだな、その分貝殻も多そうだけど」
周りを見渡すと小さな生き物がいるのがわかる。その中には岩に張り付いている貝の姿もあった。ただ言うほど大きくは無い、よく探せば見つかるのか? それとも一般的な貝がそもそも小さいのか? でも前の世界と生態系の大きな差は魔物以外見られなかったしなあ……
そんなことを考えているとルビーが「失礼します」と言って近くにあった石を拾った。それを……投げた。あれ3kgはあるだろ、片手でしかも助走なしであんな飛ばねえだろ普通……てかなんであんなことしたんだ?
石が放物線を描き海に飛沫をあげ着水する、すると数秒後に地響きが起こる。無意識にルビーの手を強く握ってしまう。
「な、なんだ? 地震……?」
震度2〜3ってとこか。震源地が海方面だったら津波がやばそう……そんなことを考えるとサティエル、サルトロは杖を構え、アゲートは腰の剣を構えて警戒する。ルビーは俺の手を握る方とは反対の手で玉を大剣に変えて持って海を見据える。地震というのはここにとって異常事態なのだろう、日本とは違って。
だが恐らくこの地響きはただの地震でないだろう、きっとあの石を海に投げたのが関係しているのだろう……
数秒後その仮説は見事的中したことがわかった。だが状況を飲み込むのに数秒間かかった。
海が波立ち、それらが海面から上がって来る見えてきた。岩のような物がいくつも浮上してきた、さらに上がってきてからそれが巨大――大体アフリカ象くらいの大きさの巻貝ということがわかった。しかもおかしいくらいの魔力を魔覚で感知する。魔物だな。
「大きいのが取れるって、デカすぎだろ!?」
驚きのあまり声を上げてしまう。
で、それが七体。
「ルビー様が以外にも女の子らしいところがあると思ったらこういうことだったんですか……」
「サティエルそれどういう意味?」
「あ、いえ……言葉の綾でして……」
「それは後にしていて、この状況どうにかしない? ……そもそもこいつら何……?」
ルビーとサティエルの会話を止めに入る。
「バケモノ貝です……ご覧の通り貝の魔物です」
サルトロは杖を持ち警戒しながらそう言った。名前にかなりの違和感を覚える。なぜなら『バケモノ』という日本語が使われているからだ。
「え、『化け物』? なんでそんな名前なの?」
「ゼンジュウボウ様が名付けたとされています」
「はえーそうなんだ。」
あっさりと疑問は消えた。
「で、どうしたもんかこれ……」
「貝殻が目的でしたよね? やっぱ壊したらまずいですよね」
「あー、いやこんだけあるなら多少――いやむしろかなり破損しても問題ない」
「了解です!」
アゲートとそんな会話をすると彼は剣を抜きその巨大な貝に向かって走っていった。まじかあれに突っ込んで行くのか、魔力量多いから魔法とか大丈夫なのか……?
そんな疑問はあったがアゲートはそれらから撃たれてくる水魔法をジグザグ走行で回避しながら海岸ギリギリのところで跳ね上がり貝殻に飛び上がる。すると海面から薄桃色程の触手が数本登ってきた。何あれ気持ち悪い……
アゲートはそれを回避しながら貝殻に剣を突き刺す。そして貝殻は砕け散った。だが見えた中身が無く空洞に見えた。
アゲートはその事実に「ええ!?」などという声を上げる。
「でかい貝は貝殻の割に中身が小さいことはよくあることだ! だが中には入るなよ、多分あの触手が暗闇の中から襲ってくるから!」
声を出しアゲートに告げる。だが彼はそれどころじゃないようだ。殻が割られたことに激昂して触手がブンブン振り回される。だが触手を切りながらこちらへ戻ってくる、気付くと触手は青い血を流していた。
あー、貝は軟体動物だから血が青いのか。今はどうでもいい、さてどうしたものか……どう倒そうか考えているとサティエルが魔力を動かし始めた。
「〈数多の礫の弾丸〉」
そう唱えると彼女の周りにいくつもの小さな岩が出現した。それが一体の貝に向かって発射された。連続で受け続けてヒビが入っていき、最終的には一部が砕け散った。ただ一部が砕けるだけでダメージはそんなにない、なんならむしろ怒らせてる。思考を巡らせていると触手がこちらをめがけて飛んできた、急いで魔力障壁を張ろうとしたが気づいたらアゲートが切り刻んでいた。ボトボトと触手の切れ端が落ちる。30mは離れてるだろ、どこにそんな筋力があるんだか……
考察はあとだ、触手が身と繋がっているっていうならいつものでいけるはず。
「触手が来たら任せろ」
その声にみんなが答えた。あとは待つだけ――すると一本の触手がまた飛んできた。うっし、直線で進んできてくれている。魔力で銅線を作りそれに当てて絡み付ける、驚き触手は止まるがもう遅い。
「数百万V、数A」
普通の生物は電気を受けることはない、まれに電気を発生させて攻撃するやつはいるが全体で見たら本当にまれすぎる、なんなら海水には存在しない。生き物が電気を受けると痙攣したり最悪死ぬのは体の中のイオンの受け渡しが電気でバグってうまくいかなくなるからだ。ただ冬のドアノブ触って数十万Vでも静電気程度じゃなんら問題無い。電圧はそれくらいあっても電流がすごく小さいからだ。だが今回は数百万Vに数Aでさらに数秒だ。それに生物の体は電気を流す、いくら巨体といえどこれだけの電流電圧を受ければ、ほら触手が痙攣してから落ちていく。
「ってああ、殻ごと水中に落ちたらまずいって――」
カーボンナノチューブロープで触手を絡み付ける。魔力圏から出たら締め付ける力がなくなるからなんとか引き上げないと。
ただ、そのロープを無意識に持ってしまったのがダメだった。相手は軽く数tあるのにこっちはヒョロヒョロの40kg程度、綱引きの結果は明白である。
変な声を上げながら引っ張られる。あの貝は水に沈んでいくわけなのでスピードが速いなんてことはないがパワーはでかいので踏ん張れず顔面から転びそうになる。だがルビーが体を抱えて止めてくれる、そして体勢を戻してくれた。ルビーはさらに片手でロープを持った。
いやいや、流石にルビーも無理だって、反対の手で大剣を半分くらい突き刺したところで――
はえ? 見ている光景が間違っていなければ確かにちょっとずつロープが引かれていっている……ほえ? 瞬きが心なしか多くなる。
切り替えろ、見ている光景は本当だ。それに頑張ってもちょっとずつだ、魔力で引いていく必要がある。
「ありがとう、こっから魔力で引いていくから。」
魔力でロープを固定しながらルビーにそう告げる。そうするとルビーは返事をした。ロープを魔力で思いっきり引いていく。魔力がゴリゴリ削られていくのがわかる、まあ問題ないくらいだが。滑車とか考えたが確かに引くのに魔力使う力は減るがその分距離は増えるので意味ない。
さてさて、後どれくら――気付いたらルビーから手が離れていた。すぐにルビーの手を取って引き寄せる。それに反応したルビーは「あ」と声を出してから話し始める。
「申し訳ございません、後先考えずに……」
「いや、後先考えなかったのは俺だし……」
申し訳なさそうにするルビーに対して答える。そんな顔はしないでほしいんだが――
魔覚が異常を察知した。引き上げている途中の貝に魔力が溜まった、これにはルビーも気付いたようだ。なんでだ……?
するとその貝は体勢を立て直してから水を大量に撃ち出す魔法を怒り狂ったように乱射した。
「おかしいだろ、人間数百人は死ぬレベルの電撃だぞ、なんで生きてやがる!?」
触手は落ちて動かないが魔法と他の触手は使われている。
考えられるのは絶縁性が強い部分があった、どっかしらから電気が逃げた……これか?
「海水から電気が逃げたっぽいな……いやそれでもおかしいけど」
どうしてかは今は考えるべきでない、どうするかが重要だ。考えろ、本体を殴れる方法を、出せる手札を。触手から何か送るのが手っ取り早い。電気はダメってなると、毒か。だが魔力から作られた毒はダメだ、魔物相手だと消されるのが確認済みだ。ならあるものから毒を作り出す。
何かあるか、……! いいものがあった、ちょっと戻る必要があるが。
「馬車に取りに行きたいものがあある、頼めるか?!」
その投げかけた質問に三人の護衛は無論肯定する。
「馬車まで戻るぞ」
「はい!」
あのバケモノ貝倒すべくルビーと共に馬車へ走り始めた。
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