なぜ、なんで、どうして
「どうしてですか! その痛みは本当に逃げていい痛みなんですか! 苦しみは全部私に打ち明けてください、きっとその苦しみを一緒に抱えられます。それはみんなも同じはずです!」
状況がわからなかった。どうして優しかったルビーが、そんな辛そうに声をあげたのか、わからなかった――いや、理解を拒んだ。
「なのに閉じこもろうとして……なんであんなに必死にタカハル様に立ち直ってもらおうとしてるかわかりますか?!」
……そういうもの――あぁ、わかった。
「転生者だから――」
「違います!!」
ルビーが言葉を遮りそう告げた。もうわけがわからなかった、ルビーもサティエルもサルトロもアゲートも、スティフだってそのはずなのに……
「確かに、タカハル様が転生者様だから出会うことができました。ですがみんながそうまでする理由は違います、みんながタカハル様のことを信頼して、好きでいるからです!」
ルビーが喋るたび胸が痛む。
やめて、もう痛いのは嫌だ……
「もしタカハル様が転生者でなくて、私がタカハル様の護衛でなくともきっと信頼しています」
…………もうやめてよ…………
「私はあなた様のことが、どんなに失敗しても、知らないことにぶつかっても挑戦していくタカハル様が……」
ルビーがゆっくりと息を吸ったのがわかった。もう酷いことは言わないで、そんな胸が痛む顔をしないで……
「大好きです。…………なのに…………」
なんで、ルビーは泣いてるの?
なんで……
「いえ、申し訳ございません……私の不甲斐なさのせいなのにタカハル様に当たってしまうなんて……」
ルビーのそんな泣いて悲しそうにする表情は見たくない。どうすれば……
そんなのわかってるだろ、簡単だ。俺がこんなうじうじしてるのをやめればいいだけだろ。なんで俺は泣いてるんだ? 目にゴミが入ったか交感神経が涙腺に作用したかだな。
「……あーもう、どうして俺っていうのはこんなにも弱いのかな……」
なんも経験してねえガキだからだろ。疑問が出ると頭が回転してすぐに仮説が立つ。さっきまでいじけて何にも考えなかったのが嘘みたいに。
俺に発言にルビーは驚いたように目を見開く。
まず涙拭かねえと後でかぶれて痒くなる。そう考え指で涙腺から分泌された生理食塩水を拭く。
ルビーと話そうと横隔膜を下げ、肺に窒素酸素水その他諸々の混合気体を入れる。
「ありがとう。悪かったな、今までクソカッコ悪いところ見させて――考えるのやめようとか完全にふざけてた。でもルビーのおかげで取り戻せた」
「タカハル様……!」
ルビーは涙を流して、だけど笑顔で、さっきまでみたいな俺に見せてた偽りの笑顔でなく。
すると俺に飛びついて抱きしめてくる。驚いてなんか変な声が出てしまったが気にすることはない。
「ハンカチかなんか持ってるか? 涙拭いとけ」
するとルビーは返事をしてハンカチを取り出した。
「って俺じゃないよ!?」
「あ……すいません。その、タカハル様が戻ってきてくれたのが嬉しくて……!」
ルビーが涙を拭きながらそう言った。ルビーの笑顔を見ていたいがなぜか視線が逸れていく。
「タカハル様も――」
そう言ってルビーがハンカチを顔に持ってくる。驚いて顔をちょっと引きまた変な声が出てくる、気づくと俺もまた泣いていた。ルビーは声にと顔を引いたことに何か気づいたように「あ」と声を出した。
「すいません、同じのでは嫌ですよね……」
「えっと、なんていうかその……嫌じゃないけど……」
そう言うと、ルビーは涙を拭いてくれる。ルビーの笑顔がまともに見ることがきなかった、前の世界だとバカやって騒ぐくらいの笑い顔くらいしか前は見ることはなかった。だからこんなにも真っ直ぐな笑顔を向けられることが初めてでどうすればいいかわからない。
……どうすればいいかなら、ルビーに応えて一人で、でもみんなと立っていられるようにならないと――
「……ッ!」
「タカハル様!?」
ルビーから手を離そうとしたら反射的に体の方がそれを拒絶した。それにルビーが心配して俺の手を取る。
「ごめん、まだルビーから離れられそうにない……」
後ろめたくルビーに告げる。だがルビーはその言葉に安心したような表情を見せて口を開いた。
「――大丈夫です。ゆっくりといきましょう、なんなら私はずっとこのままでも構いません」
「うん、ゆっくりと戻っていこうと思う」
………………
「ま、立ち直ったところで療養生活は継続なんですけどね」
護衛たちとスティフが集まってくれていた。俺は若干おちゃらけ気味にそう言った。
「うん、それは仕方ないね。でもそういう風に笑っていられるのすごいと思うよ。何かあったかい?」
「そりゃなかったら変わんねえだろ。ものはエネルギー加わらないと動かねえし変化もしねえよ」
その言葉にスティフは軽く笑って詳しくは聞かないと言ってくれた。正直叱られて戻れたなんて恥ずかしくて言えない。
「大分時間費やしちまったからな。後三日で魔法使えるようになるから、そしたらちょっと急ぐぞ」
そう言うと各々が返事をする。
「じゃ、今のうちに何するか伝えておくか。できれば夏のうちにしておきたいことだ、スティフ、夏といえば?」
そうクイズ調にスティフに問う。
「え? 僕!? うーんと……アイスクリーム!」
「そうだな海だな」
「クイズの意味は……?」
「長くなりそうだったし」
多少落胆するスティフにそう言う。
「それじゃあ何のために行くんだい?」
「それが本命だ……
……貝殻取りに行く!!!」
「なんで!?」
スティフの反応一々面白いな。コロコロ表情変える。
「チョークってあるだろ、あれ実は肥料になるんだ」
「え? そうなのかい?」
サティエルやサルトロも少しだけ驚いた反応をする。
「そうだ――炭酸カルシウム、いわゆる石灰だ」
「石灰で何をなさるのですか?」
サティエルが疑問を口に出す。
「順を追って説明すると、今建設中の工場のからできるアンモニアをなんやかんやしてできる肥料が酸性なんだよ。そこで、アルカリ性の肥料になる石灰を取りに行くってこと。今作られてる石灰は山から掘ってるってことだったからな、しかも需要少なくてその量も少ない。で、手軽に取れそうなのが貝殻だ。ま、正確には欲しいのは水酸化カルシウムだけど作り方は簡単だ」
「貝殻でしたら良い場所があります」
俺の横に座っていたルビーがそう言った。貝殻拾える場所知ってるなんて結構女の子っぽいところもあるんだな。
ルビーは地図を取りに行かせた、結構早くメイドさんが取ってきた。そしてその地図のあるところを指差した。そこは俺たちが今いる王都から西南西の方向にある一つの湾だった。少し東側の方が海の方に突き出ている。
「んーと、この地形だと偏西風による海流に乗った微生物やらが入り込むけど出て行きにくいから生物自体が多くなるのか……」
「よくこれ見ただけでそんな考察できるね――でも、いつものタカハル君が戻ってきたって実感できるね」
スティフがそう言った。
「それにしても海楽しみだなあ」
………………
「なんで僕いけないの!!???」
俺が療養が終わって出発しようとする頃、スティフがわめいていた。
「しゃーねーだろ。お前には城監視の役目があるんだから、留守番くらい子供でもできるぞ?」
「海いきたかったよお」
なだめようとしても聞かない、子供かよ……
「それに海行って遊ぶわけじゃねえよ。貝殻拾うだけだぞ」
「別に君が遊ばなくても僕は遊ぶ気満々だったのに……」
「お前戦争中ってわかってるか……?」
多少呆れながらスティフに言う。ふと気付くとみんなを待たせていた。馬車に乗れる順番は俺が一番、例外で今は一緒にルビーだけど。茶番で待たせるのも悪いので適当に切り上げる。
「じゃ、二週間くらい待っててくれ」
「……アイスクリーム……」
「は?」
「帰ってきたらアイスクリーム作って! でなければストライキするつもりだよ!」
「子供かよ!? はいはい、わかった。作ってやるから、めんどくせえなあ……じゃ」
「うん、また会おう」
そう言ってルビーと共に馬車に乗る。サティエル、サルトロが続いて乗った。最後にアゲートが御者台に座って手綱を動かし馬車は動き始めた。
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