試行錯誤で
思い出せ、三代前転生者様、ウィンザー様のときに当時の護衛たちはどうされていた? 幼き頃に読んだ書物の記憶を思い出すんだ……
まず、精神状態を回復なされた時は力にお気付きになられた時だ。その時から枷が外れたように幼いながらも我々の為に強い信念をお持ちになったと書いてあった。
それまでには色々な試行錯誤をしていて、失敗も多かった。偶然にも置いてあった人形を無意識に動かせたことがきっかけだった、そこから信じられない程のお力が目覚めたのだ。
……タカハル様の力は本当にそれだけだろうか……?
「……タカハル様のお力は本当に魔力だけでしょうか……?」
「すごい知識があるじゃないですか」
私の疑問にアゲートがそう返した。
「いえ、その知識は故郷で培ったものです。転生なさる際の目覚める力とは関係ありません」
「サルトロはタカハル様のお力に不満が?」
「いえ、不満ではなく期待を――」
「それを不満というのです!」
「だからそうではなくタカハル様の中に可能性が!」
「兆しもない中でそんなことを言うのが不満と――」
「はいはい、話進まないよ?」
スティフが手を叩きながらサティエルとの会話を止めた。
「じゃ、何でサルトロ君はそう思ったんだい?」
「……不思議でならないのです。転生者様は信じられない程のお力を持つと言うのに魔力量は8でした。この国でも8は数十名いますし、9でも現在一人います」
「タカハル君は魔法の無い世界から来たんだよ? 0から8なんてすごい差だと思うけど。」
「確かに差は大きいですが、タカハル様は体の構造から違うと仰っていました。それならば信じられない程の魔力を持っていてもおかしく無いのです。現に二代前転生者様、プラメアー様は魔力量が10でした。それに転生前と比べて信じられない程の魔力を持っていたと記述されています」
「ワーオ、10はすごいね。確かに僕も転生しただけで信じられないくらい剣の腕が上がったよ、精度も力も」
「流れ転生者ですら、そうなのです。ならば女神タルク様がお選びになったタカハル様ではさらにお力が大きいはずです」
「……結局どうしたいんですか? 考えてもどうするか決めないと意味ないですよ」
アゲートがそう言った。
「タカハル様にはきっかけ、刺激が必要です。少なくともあの状態から目覚めていただける為に。私たちは試行錯誤するべきです」
「それがタカハル様を傷つけてしまうかもしれなくても?」
サティエルがそう言った。
「でもやらないよりはマシだと思うな。力とかよりもタカハル君が戻りそうなのはそれだし」
スティフが腕を組んで言った。
「――具体的には何を?」
アゲートがそう言った。性急なのだから……
「それを今から考える必要があるんです」
その言葉に全員が考え込む。伝えたはいいものの自分では答えは出ない。
「……うーんと、科学や魔法の面白さを再認識してもらうとかはどうだい?」
「良い案だと思います。何か具体的な案はありますか?」
「え、えーと……タカハル君が喜ぶようなやつでしょ……炎色反応とか……?」
スティフがしどろもどろとしながらそう答えた。
「それくらいではタカハル様の興味はいただけないと思います。」
「僕の科学『中世ヨーロッパ』以下レベル……」
サティエルの意見にスティフが意味のわからない言葉を使いながら落ち込んだ。恐らく彼とタカハル様の世界の固有名詞だろう。
「魔法ですと――回復魔法に興味を持っていらしたので聖属性系の魔法をご覧いただくというのはどうでしょうか?」
「悪くは無いと思います。……闇魔術について教えるというのも――」
「ダメです。巫山戯ているんですか」
サティエルにすぐさま止められる。
「なにそれ? すごくヤバそうな響きなんだけど……」
「知らなくていいです。話を変えましょう――」
サティエルはカップに入った紅茶を飲みながらそう言った。
「――ともかく、具体的なことは後々考えて、試行錯誤してタカハル様魔法や科学にもう一度興味を持っていただく方針でいきましょう」
………………
最近、みんなが色々としてくる。炎色反応くらい知ってる、聖魔法とか言う不思議な物を見せられたけど――
――――そういうものなんだろう――――
なんでみんなこうしてくれるんだろう?
――――そういうものなんだろう――――
どうしてルビーはこうしてくれるんだろう?
――――そういうものなんだろう――――
俺がこの世界に来たのはなぜ?
――――そういうものなんだろう――――
俺が今までしてきたことは?
――――――――思考が途絶える、考えることを拒絶する。
きっとこのままルビーに守られていられるだろう。こうしてルビーの横にいれば大丈夫、何からも守ってくれる。何もする必要もないし何か考えることもない。
だけど、みんなが何かしてきても反応がないとみんなは顔を悲しそうにする。それを見ると胸が痛くなる、一体なんでだろうか? そういうものなのだろう。
でも痛いのは嫌だ、どうすればいいだろうか……みんなの顔を見なければいい。もうルビー以外の誰も。
「ルビー……」
そう呼びかけると「なんでしょう?」と笑顔で答える。
「…………もう誰も部屋に入れないで」
「……なぜでしょうか……?」
ルビーは少し震えた声でそう言った。
「何かされて、胸が痛くなる……痛いのは嫌だから……」
「タカハル様………………」
名前を呼びかけられるが、その後ルビーは言葉を続けなかった。顔を覗こうとするとルビーの深く息を吸う音が聞こえた、そこでルビーが口を開いた。
「どうしてですか! その痛みは本当に逃げていい痛みなんですか! 苦しみは全部私に打ち明けてください、きっとその苦しみを一緒に抱えられます。それはみんなも同じはずです!」
ルビーは赤い瞳を潤わせて、真っ直ぐに言った。
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