救出
「この子の兄弟がタカハル君と一緒にいるんだ、それでそこへこの子が連れて行ってくれる」
そう言ってスティフは精霊を浮かせる。
「え!? そっちから行くの!?」
精霊が浮くと窓から出てゆっくりと落ちていった。そこで右腕てサティエルを抱え、左手でスティフの襟を持つ。
「「え?」」
10m程度なら問題ない。二人を持ちながらそこから飛び降りる。
「「ええええええ!!??」
飛び降りて数秒ほどだ。
「ウ、〈ウィンドリライズ〉!」
サティエルが魔法を唱え、風が下から吹き上げ落下が遅くなり着地する。
「あ、新手の絶叫マシンかな……?」
スティフが訳のわからないことを言う。
「ル、ルビー様、少しだけ心の準備の時間を――」
「そんな暇ない」
「はい……」
「うわあああああ、ッ〈ウィンドリライズ〉!」
サルトロを抱えたアゲートが遅れてやってくる。遅い、何を呑気にしているのか、こうしている間にもタカハル様は離れてしまうかもしれないのに。苛立ちが治らない。
「……い、行きましょう」
「サルトロ君、大丈夫?」
「問題ない」
「いや、ルビーちゃんが答えても……」
「さっさとしろ、タカハル様が心配だ」
「――はい!」
サルトロを立たせる。全員で精霊を追いかけながら走る。
「えぇ、これ登るの? 裏道とかは――」
スティフが塀を見渡しながらそう言う。
そんなものは無いと答えながらもう一度サティエルを抱え、スティフを掴む。
「ま、まさか……」
「いくらルビー様でも流石に登るのは――」
「「きゃあああああ!!!」
二人が一々うるさい。跳躍で精霊を追いかけ塀を登る。後から同じようにアゲート達も登ってくる。そして同じように降りる。一分一秒でも早くタカハル様を助けださねば。
「こ、ここからはさっきみたいに絶叫したりはしないと思うよ……」
そうスティフの発言を聞き、精霊を走って追いかける。どこまで離れたのか。早く、早く、タカハル様がとても危険な状態というだけで胸が痛む。
「――このペースなら後五分くらい! サティエルちゃん、サルトロ君、頑張って!」
「「はい!」」
息を切らしながら二人が答える。五分……タカハル様……どうかご無事でいてください。もしタカハル様に傷がつくようなことがあれば護衛である私、ルビーは生きていけません。どうか笑顔をお見せください、笑って過ごせた日々をこれからも……
ただひたすらに光を追いかける、それがタカハル様へと連れて行ってくれるはずだ。
数分程だ……一瞬光が止まった。
「ッ! ……」
「スティフ! 何かあったのか?!」
「その子が、感じ取れなくなったんだ、彼の兄弟を。」
スティフのその発言に驚きの声を出す。
「考えられるとすれば、特別な箱に閉じ込められたか……死んでしまったか……急ごう。」
スティフのその発言に頷く。
…………
「こいつ精霊なんて隠し持ってやがって……!」
「ぐあっ」
腹を蹴られた。クソ痛い、泣きたい。精霊は大柄な男によって光の粉と魔石となってしまった。そしてその粉は光を失い見えぬほど散って行った。
「本当に手間とらせやがって! 最後の足掻きでただ光ったが目くらましにはなったけど何にもできなかったよな!」
頭を踏まれる、そしてじりじりとかかとを押し付けられる。そして耳まで踏まれる。いてえよ……
「もう本当に何にも持ってねえみたいだ、な!」
今度は顔を蹴られる、鼻血が出てくる。頭もはたらかない、もうどうする手札も持ってない。大声をあげたらそれこそ気絶させられた後逃げられる……
助けて……
殴られ、蹴られ、絞められ、叩きつけられ、踏まれ、引っ張られ、掴まれ、同じようなことが何度もされる。なんで……
「なん、で……」
「なんで? さあな、転生させた神を恨むんだな。あるいは役立たずの護衛か?」
「たしかにそうだね。僕だったら相手の次に護衛を恨むね。あはは。」
痛めつけられながらそんなことを言われる。くそ……こいつら……今に見てやがれ……きっとルビー達が……
「あ? 今物音しなかったか?」
「え、そう? ……探知魔法には何も無いよ」
「ちょっと黙ってろ」
俺は横たわり、靴で口を押さえられる。すると床を通じて小さな足音を聞けた。
絶対に知られてはいけない……! 口を押さえられながらも無理矢理咳き込む。
「黙ってろつってんだよ!」
そう言われながら蹴られ、転がる。すると足音は聞こえなくなっていた。違ったか……
「……なんも聞こえないな。気のせいか。」
「兄さん、どうする? あの精霊、道しるべだったりしたら危ないしもうそろそろ移動しない? 道具も欲しいしさ。」
「そうだな、じゃもう一回気絶させるぞ。」
や、やばい。ここから出たらいよいよ終わりだ。もう見つけられる方法は皆無だ。
「や、やめろ。来るな…………」
「ようやくいい目するようになったじゃねえかよ……!」
「早く移動しようよ――ッ!」
そいつがドアを開けると……
……そこにはみんながいた。すぐさまアゲートが剣を突き刺そうとする。
だが紙一重で避けられてしまう、さらにそこへ煙幕をかけられる。
「お兄様! 悪い、先に行ってる!」
「ああ、大丈夫だ!」
そこから思考は早かった。ここで一番やばいのは俺が人質になることだ、なんとか態勢を立て直し柱を間に置くような位置へ動こうとする。
魔力が溜まるのがみんなの方に二つの魔力が溜まるのがわかる。サティエルとサルトロだ……!
「〈魔力障壁〉」
大柄の男は氷の矢と魔力の塊を魔力障壁によって受け止める。大丈夫、ルビー達の時間稼ぎができればいい。
「「〈バインド・チェーン〉!」」
大柄な男の足に鎖が絡みつく。
すぐ後に煙からルビーとスティフが出てくる――
「……ッ」
「おい、こいつの喉元にこのナイフが刺さって欲しくなければ言うことを聞きな。」
失敗だった。悪い……みんな……
「ほら、〈バインド〉を解除しろ。さっさとだ!」
言うことを聞かされ、二人は鎖を解除する。
「武器を下ろせ……おら、さもないとちょっとずつ喉に入れてくぞ?」
喉に鋭利なものが刺さる感覚がある。怖い、死ぬのが……
すると銃声が聞こえたと思ったら上から血が流れた。そして俺を持っていた男は後ろへ倒れた、俺も一緒にだが俺は大丈夫だ。
サルトロが持ち手の先から煙が出ていることに気づいた。それ鍵じゃないくて銃だったのか……
「タカハル様……!」
ルビーが近づいて抱きしめてくれる。
「〈ヒール〉」
サティエルが魔法を唱える。身体の痛みが引いていく……
「タカハル様、こんな痛々しい姿になさって――」
……ルビーに抱きしめ返す。……緊張の糸が切れルビーの胸元ですすり泣いてしまう。
「申し訳ございません。私たちが不甲斐ないばかりに、こんな恐ろしい目にあって……」
「大丈夫、ルビー達は悪くない……」
「……ごめん、もうすこしだけこうさせて……」
「はい、私はいつまでも構いませんよ」
サティエルとサルトロの小さな会話が聞こえる。
「銃魔法は使用禁止のはずですが」
「……非常事態だったので――どんな処遇でも受けるつもりです」
「……今回は目を瞑りますけど……」
……しばらくルビーの元から動けなかった。
「もう大丈夫ですから、タカハル様を傷つけるものはもう何もありません」
「――痛かっだ……ごわがっだよ……」
――ルビーの言葉に子供のように声を上げて泣く。こっちに来てから俺は泣き虫になった気がする。戦争を舐めていた…………
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