誘拐
「タカハル様(君)!」
大急ぎで医務室へ向かい扉を開けた。しかしそこは窓が割られ、タカハル様はいなかった。窓が割れていることからただ部屋から出たというわけではないことは明白、つまりは誘拐されたということだ……!
「……ッ! 一足遅かったか……」
「――タカハル様は?!」
ルビー様、アゲートが数秒遅れでやって来る。少し遅れてサティエルも息を切らしながら来た。
「――ご覧の通りです……」
「そんな……」
ルビー様は少しした後窓へ寄る。するとその窓を乗り越えようとする。
「ルビー様!? 何をなさっているのですか!?」
「探しにいく!! 誘拐したということは人質としての目的のはず、ならまだ生きてるはず! それにまだ遠くないはず!」
ルビー様は怒りに満ちた表情でサティエルに向きそう仰った。
「当てはあるのですか?!」
「……そんなもの片っ端から――」
「大丈夫だよ、そんなことしなくても大丈夫。僕の友達が教えてくれる。……生きているかはわからないけど場所はわかる」
スティフはそう言って手のひらに黄色に光る精霊を乗せた。
…………
――首が痛い、主に気管が……ってどこだここ。床に転がされ手足は縄で縛られている、さらに手首の縄には柱に繋がれている。首には首輪がつけられている、顎でなんとか形状を確認しようとする……これあれだ、魔法封印の首輪とかいうやつ。多分きっと恐らくメイビー。
周りは……窓が一つある。半月、下弦の月が差し込む。時間がわかればある程度の自分の位置がわかるんだが……
ん? 服の中に何か……あの精霊! よく見るとこいつ一回り小さいな、子供か? まあナイスだ、よくバレなかったな! これで助かる可能性は大きく上がった、色は薄い黄色か、えーと色は魔法のイメージカラーだろ。薄い黄色――なんだ? ゲームやアニメっぽく考えると……光? 回復? まじでなんだ……?
すると会話が聞こえた。
「俺らにかからればこんなものだ、なにせ俺らは転生者の孫なんだ。殺せれば楽だったんだがな」
「仕方ないよお兄様、なぜかオブシディアが喋れる状態で持ってこいなんて言うんだ」
「ほんと何考えてるんだか……転生してすぐに俺らを向かわせればおしまいだったのによお」
二人の男性の会話が聞こえた。声質が似ているし【兄様】とか言ってたから兄弟だろう。
てちょっと待て、こっちに足音が近ずいて来る。精霊は隠さないと。体操座りになって足で隠すか。唸れ俺の腹筋! うおー!!!
ガチャという音で鍵が開けられてそして扉も開く。なんとか起き上がることが間に合った。
黒髪黒目の二人の男が入ってくる。俺みたいな黒髪黒目は珍しいと思ったんだけどな、転生者の孫と言ってたな。そして少し体格が良い方の男がそう言った。
「起きやがったか」
さて、どうするべきか……
・俺は転生者じゃない……殺してよくね? 却下
・寝たふり……さらに遠くに逃げられる 却下
「おいなんとか言ったらどうだ?」
「うっせーな今考えてるんだよ」
・精霊が戦闘ワンチャン……不確定要素が大きい 却下
・会話で時間稼ぎ……これだ、さらにどうする?
ん? 俺今さっき変なこと無意識に言わなかったか!? もう遅え、助かる前提で時間稼ぎしながら情報探るか。
「で? 考えは終わったのかよ? あんまり怒らせねえ方がいいぞ、死なせはしねえが痛い目に合うぞ」
「そいつは嫌だな。俺はヒョロガリだからちょっとしたことで死んじまうだろうな。そしたら目的には使えなくなっちまうだろ?」
「安心しろ、死ぬか死なないかのラインはわかってるぞ」
目的については喋ってくれないか……
「……それに俺は痛みには慣れてねえ、本当にちょっとした痛みでショック死しちゃうかもしれねえな」
「それは痛めつけがいがありそうだ」
もう一人の男が言う。……サイコパスが。
時間を稼げ、一文字一文字をゆっくりと喋れ、文をできる限り怪しまれないように長くしろ。返答を長くさせるような会話を作れ。
「それで? お前らは何をしたいんだよ? わざわざとこんなペチャクチャと無駄口叩けるくらい綺麗に持ってきて。ただの人質目的じゃねだろ。しかも――」
「お前に山ほど喋らせたいことがあるやつがいてな。気が狂わねえように、喋れるように持ってこいとか言われてるんだよ。無駄口言ってるってわかってんなら黙りやがれや。」
ったく人の話くらい最後まで聞けよ。
「で、お前の転生して得た能力はなんだよ?」
「……」
「おい、黙ってるつもりか?」
「黙りやがれって言ったのそっちだろ」
「ゼロか百しかできねーのかよてめーは!?」
「兄さん、このふざけた転生者一回痛めつけた方がいいんじゃないの?」
ちょやめろ。まじで痛いの勘弁しろ、それに近づかれるのはまずい。
「わかった、わかった。話すから落ち着け、そっちもわざわざ痛めつけるのも面倒だろ? 実はな、何が得た能力かわからなくてな、それできっかけ探しに王都周辺をうろうろと――ッ」
比較的小柄な方に顔を蹴られた。横になりうずくまる、痛いのもそうだが精霊を見せるわけにはいかない。ッ……口の中切った、いてえ……
「そんなの嘘って簡単にわかるんだよ、怒らせない方がいいってわかってるよね? それに誤解してるようだから痛めつけるのは面倒でもなんでもない、お前はそういう風に生きてた人は見たことないの?」
「……ねえ、よ」
「あそ。それじゃ、早く言いなよ。能力」
真顔で髪を掴まれ持ち上げられる。痛い……やばいバレる――足の方に移動してた。ナイス、あとは俺の立ち回りだ、足に視線をいかせるな。注目を逸らせ。
精霊がいる足を心なしか後ろにずらしながら、咳をしながら口の中の血を出す。
「……魔法……だよ……」
「それだけ?」
「ああ、そう……だよ。」
「お兄様、こいつ何か隠してるよ。」
「だろうな、それだけじゃあいつがこんな風に命令するはずがねえ。」
「いや、そうじゃなくて……
体に何かを」
やばいやばいやばいやばい。非常にまずい。どうするどうする? 窓から脱出試みるか? まず縄をなんとかしねえと。話術でなんとかするしかねえ、思い出せちっとしか触ってねえ心理学――ミスディレクション……どう応用する? まず二人を近づける――
「何隠してやがるんだ?」
「な、なんも隠してねえよ」
視線を右上に送る。
「すごい隠してる反応だね。」
だろうな、演技の才能あるかもな。さあ近づいてきやがれ。
「ああん?」
よし近づいてきた! そして唾を少し離れた床に吐きつける。そして鼻で笑いなんとか少し口角を上げる。
「今何したの?」
「教えると……思うか?」
「また痛い思いしたいみたいだね。」
「ただ唾吐いただけだ、見りゃわかるだろ?」
「本当に痛い思いをしたいみたいだ。」
今度は彼は拳を作る。殴るつもりだろうか?
「ああ、そうそう。どうやら俺の世界とこの世界の人間は体の作りが違うみたいでな……俺の所の人間はな、喉のあたりにな、一個部屋があってな、そこで分泌される物質、えーと名前なんて言ったかな……」
「御託はいいよ、さっさと話せよ」
「ああ、その物質がな、この世界の生き物にとって毒みたいなんだ、外だったら大丈夫だけどここだったら換気悪いから十分もなく死んじゃうんじゃないかな? おっと、思い出した、名前は『ポイズンガス』だ!」
口からでまかせで適当なことを言いまくる。ちょっとでも情報を多くした方が信憑性が上がる。
「マジか!? 早く扉と窓開けねえと――」
兄の方は急いで窓へ向かう。
「待ってよお兄様、そんなの嘘に決まってるでしょ」
弟の方はそう言って兄を止める。予想の範囲内だ。
「さて、どうかな? 信じるも信じねえもお前次第だけどな、実際そう進化したんだよ、文明がまともにできてねえことはそれで身を守ってたらしいぜ。しかも……護衛一人……死なせてしまったんだよ……
ほらもう近かった方のお前は汗かいてきてるだろ、呼吸も早くなってる。初期症状だ、そのうち呼吸が辛くなってくるだろうな。」
汗かいてるのも呼吸早くなるのも、ただ焦ってるだろうけどな。
「……いや嘘だ、そんな話聞いてない。しかもそれなら僕らのどちらかに吐くはずだ」
「ケッ」
無論バレる。だがそれで問題ない、時間さえ稼げればいい。頼むぞみんな……この精霊を頼りにしてるんだろう? スティフ――!
「んだよ、ビビらせるなよ……ん? 虫かなんかいなかったか?」
「え、そう? お兄様。」
「いや、大丈夫だ。気のせいか?」
や、やばい……
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星一評価、辛辣、一言感想でも構いません、ちょっとした事でも支えになります。世界観や登場人物の質問もネタバレにならない程度に回答します。(ガバあったらすいません)
科学質問も出来る限り回答します(ネット知識なので大したことはできないしガバガバですが……)




