療養
白い天井が見える。ここはあれか、ルビーが入院(?)していた時の部屋か。今はあの時のルビーとおなじベッドで寝ている。確か……なんだっけ? ああ、なんか急にすごい咳き込んだんだった。周りを確認しようと寝たまま首を回す。
「タカハル様!! 本当に良かったです……」
「ル、ルビー!? ちょ……苦しい、ストップ――」
「! 申し訳ございません……」
抱きついていた素早く腕が離れる。……ルビーを少し悲しませてしまったように思える。多少我慢した方が良かったか…… 窓からは夕焼けの光が差す。周りを見るとスティフと護衛達が――サルトロがいない? まあすぐ来るだろう。
「タカハル様、体に異常はございませんか?」
「特には……いや喉が痛い、あんだけ咳き込んだせいだろうな、水が欲しい」
「すぐに持ってこさせます」
サティエルに答える。
――水で喉の乾燥を潤す。
「原因はタイミング的にあの液体魔力だろうな……」
「やっぱり君は切り替えが早いね」
「うーんと、医者が言うには体の中の魔力が暴れてるんだろ? で、咳き込むっていうのは身体の免疫反応だ。気管から物を出そうとしてるっていうことだろ? つーことは何か吸い込んだってことだ――てなるとおそらく吸い込んだのは液体魔力、つまり人にとって液体魔力は毒ってことになるか? なんで毒なんだ? そもそも毒っていうのは何かを過剰に摂取したせいで身体が免疫反応を起こすってことだから、濃度の高い魔力が身体にとってだめなのか?」
いくらか仮説を立てる、実験は後だ。
「……ともかく、医師に言われた通り最低三日は魔法の使用はおやめくださいよ?」
「わかってるって」
サティエルに釘を刺される。この魔力の状態で魔法を使うと危険だそうだ、仕方がない。大人しくしてるかー。
やることは何かあるか? サティエルやサルトロ、その他魔法使いに科学授業、目を逸らしてきた回復魔法の研究、あれ一体全体何なんだよ、俺もちっちゃい切り傷くらいなら直せるが部位欠損とかじゃ無ければ治せる回復魔法。何にもわからない、細胞分裂させるといっても細胞の成長、染色体の複製、さらに分裂、皮膚細胞だけでなく血管やリンパ管まで治癒させるとかやること多すぎて頭パンクするし魔力もおかしいぐらい使うことになる。だが回復魔法を使われると腹が減るそう。肝臓とかから物質無理矢理持ってきてるのか? それでも傷次第で足りねえだろう。わけわからん、とりあえず観測が必須だ。
あとは何かあるか? 普通に計画進めるとかか……
……廊下に巡回してる精霊がふよふよと移動しているのが見えた。
「そういえば精霊ってどうなってるんだ?」
「……どうなってるって言うと?」
「色々と。あんな小さな体、大体直径7、8cmくらいか。それくらいでまあまあな魔力、芸を覚える程の知能、常に発光し続ける生物的意味、光っている色の意味、食性、浮いている原理、それに――」
「わかったわかった、一個ずついこうか。色々わからないことあるけど、それに芸って……」
俺の質問責めにスティフは両手を開き、俺を制しながらそう言った。
「まず小さい体なのに魔力が多いのは魔石の質が他の魔物とはすごい差があるんだ。だから危険でもないのに多くの悪い人から狙われるんだけど……それぞれ返り討ちか逃げられるくらいの強さはある。光ってる色は使う魔法の属性のイメージカラーだね赤は炎、青は水、風は黄緑といった感じで。あとはわからないよ」
「なんでイメージカラーがそうなってるんだよ、炎は別の色に光ることだっていくらでもあるし、水はそもそも無色透明で海が青く見えるのは水分子が青以外の光を吸収してるからだ、あれ、それはつまり青色か? まあいい、大体風はなんなんだよ、風は空気の移動の現象だろ空気は無色透明だしなんだ黄緑色って」
「いやそんなこと僕に言われても知らないよ!?」
スティフは少し大きく声を上げた。まあしゃーない。
「で、本当にそれ以外わからないか? 食性とかも」
「食性って?」
「何食ってるかってこと」
「ああ、それなら植物の葉や茎、実を食べるよ」
なるほど草食か。
「あと魔石も稀に食べるみたい、狩った魔物の魔石をバリバリ食べた時は何事かと思ったよ」
「バリバリ音がするのか……魔法で砕いてるのか? それともバリバリと食えるような歯が……クリオネみたく内側から開くのか?」
「ここでやめておこうか……」
スティフが微妙そうな表情をしながら言った。 なんだよこれからって時に……
「で、お前は何匹持ってるの? 城の中でたまに見かけるけど」
「ちょうど40だね、みんな個性があっておもしろいんだ」
そのスティフの発言に適当な相槌を打っておく。そもそも光ってて体の外形自体よくわかっていない。適当なサンプル渡してくれたりしないかなー?
そう考えながら時間が過ぎていく……
…………
バルコニーにて日没のの景色を特に意味もなく眺める……
「あ、ここに居たんだ。タカハル君もう起きたよ」
後ろから声がかかる、スティフだ。
「そうですか、それは良かったです」
横目で彼を見ながら返事をする。
「……あんなこと言われちゃったもんね。へこむのも仕方ないと思うけどタカハル君には顔を見せてきたら?」
「いえ…………あのようなことをルビー様が仰られるのも仕方がありません」
「……何があったか聞きはしたよ。そんなつもりはなかったわけでしょ? ちゃんと話せばわかってもらえると思うよ」
こちらの気も知らず、そんなことを言われる。彼は流れ転生者なのだから多くのことがわからないのが当然だが。
「……わかっていただく必要はないです。そもそも自分は本来なら極刑のはずです、タカハル様の温情がなければ今頃こうしていられません」
「――多分温情とか考えてないと思うよ。合理的だとかなんとかしか理由無いと思うよ」
「そんなはずありません。現に自分がこうして護衛のわかだまりを作っているのですから」
スティフは「そんなことない」などの言葉を出す。本当に自分はタカハル様の側に居るべきでは無い。しかしタカハル様の意に反することはさらにあってはならない。タカハル様はご先祖様のゼンジュボウ様やトウシン様と同じ世界の生まれただったが時代が大きく違い、血を流すような争いとは無縁の環境だと仰った。【死】とは遠い暮らしをなさっていたタカハル様がこんな自分に情をかけてくださるのも無理はない。ただそれは背負う罪を償うことができない。
「考え込む必要はないと思うよ」
「…………」
夜の暗闇の中、沈黙が続く…………
その中を一匹の精霊が入る。
「どうしたんだい?」
精霊は焦ったように上下に動く。
「「この合図は……!」」
…………
部屋に一人、ベッドに転がりながら色々と考える。するとドアの隙間から一匹の精霊が入ってきた。すると上下に動き出した。
えーと、上下に動くのは……そうそう、危険を知らせる合図だ。
ってやばい!! 警戒しないと〈魔覚敏感化〉――!! 胸が痛む、魔法が使えねえ……くっそ、誰かしらよばないと……ナースコール的な役割の魔道具が机にあったはず、靴を履き闇の中その魔道具を探そうとする。
窓が割れる音が後ろからした。すぐ振り向こうとするが首を絞められる。どうにかしないと――気が遠のく――――
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