応急処置
タカハル様が急に倒れた。また魔力切れかと思った、今までにそれは何度かあった。
だが今回は様子が違う、タカハル様が強い咳をする、何度も。前触れは何もなく唐突だった、いつも通りのタカハル様だったのに――とにかくどうにかしなくては、体を横にさせて頭を私の膝に乗せる。初めてのタカハル様の膝枕がこんな形ではあって欲しくなかった、とにかく少しでもよくなってもらうために背中をさする。しかし意味があったように思えない。
「タカハル様、タカハル様!」
声をかける、だが咳き込むばかりで反応がない、いよいよまずい。原因はわからないが苦しんでいることは確かだ。
「アゲート! 控えの医師を呼んできなさい!」
「はい!」
サティエルがアゲートにそう指示して、アゲートは走り去っていった。タカハル様の目から涙が出ている。相当苦しまれている……なんとかしなければいけないが、自分にはどうすればいいのかわからない。
「……タカハル様の中の魔力に異常があります、恐らくそれが原因かと――」
「タカハル様に触れないで!!」
タカハル様にサルトロが手を伸ばしてきた、それに対して私はタカハル様を傷つけないようにしながら引き寄せてそう叫ぶ。頭がサルトロにタカハル様を触れさせてはいけないと感じる、本当なら近づけさせたくもない。
「私が行います」
サティエルが腰を下ろしタカハル様の胸に両手を触れる。彼女は目を閉じて集中しているようだ。
「ッ……!」
サティエルが手を痛がるかのようにタカハル様から手を話す。
「大丈夫かい!?」
スティフがサティエルに声をかける。
「……まるで魔力が危険を感じたかのようの暴れています。魔力量は十分あるので魔力切れは考えられません。……外部からの魔力操作を一切受け付けられません、能力がないので私ではどうしようも、ただ悪化させてしまうでしょう」
「……精霊達の中でもどうにかできる子はいなさそう、タカハル君をすごく力量的に恐れている。」
一体どうすればいいんだ、タカハル様の背中をさすり続ける。
そこから数秒ほど……タカハル様の咳が止まった。
「タ、タカハル様? ……タカハル様?」
声をかけるが反応がない、寝てしまわれたのだろうか?
「ちょっと失礼するね」
スティフがタカハル様の喉に手を当てる。妙なことをするなら手の骨を粉々に砕く……
「ッ!! タカハル君息してないよ!!!」
「え!?」
その言葉に間抜けな声が出てしまう。私もタカハル様の喉に手を触れてみる。確かに呼吸がない。顔から血の気が引くのがわかる。脈はあるのが幸いか、しかし放置したらそれが止まるのも時間の問題だ。医師が来るまでなんて待てない。
「サティエル! 早く!」
「……申し訳ございません、今のタカハル様の魔力の前では呼吸を取り戻す回復魔法が使えません……」
なんたることか、スティフに視線を向ける。彼に頼るほかない。だが彼は下を向いてしまう……
「……人工呼吸っていうのが僕らの世界では呼吸が止まってしまった時に使う方法があってね――」
「ならそれを早く!」
「えっとね、それをするには、口と口をね、合わせて空気を送るから……キスになっちゃうんだけど……いや、緊急事態だからね、タカハル君には悪いけどやるよ!」
スティフの肩を手で押さえる。
「私がやる、やり方を教えて」
「あ、うん。ずっと昔に教わってうる覚えだけど……頭を上げて、もうその状態で大丈夫かな。それで鼻から空気が出ないようにつまんで、口と口の間に隙間ができないように当てて空気を送るんだ」
タ、タカハル様と、と、キ、キス……いや、助けるためだ、不純なことは何もない。遅くなればなるほど危険だ、早くせねば。言われたように鼻をつまむ。申し訳ございません、タカハル様……!
鼓動が早く強く感じる。悦に浸っている場合ではない、空気を送り込む、息をタカハル様の口へ吹き込む。もし起きたら怒られるだろうか? そのまま護衛を止めさせられてしまうだろうか? それでもタカハル様が助かることが優先だ、今度は私が助ける番だ。それにもしかしたらこれがきっかけで好意を抱いてもらえるかもしれない。
……いけない、タカハル様に不敬だ。そもそもタカハル様が助かることが第一だ。そんな思考なんて捨てろ。
……ただ助けたい一心でタカハルへ口移しで空気を送る。お願い、生きてください……
「ケホッ」
タカハル様が弱々しく咳をした。
「タカハル様!」
タカハル様に声をかける。しかし反応がない……だけど呼吸はされている。少し安堵する。
……わ、私がタカハル様とキスを……頭の中で描いてはいたが実際となると大きく違う。今更タカハル様のとの接吻が思い出される。一生顔を洗えない……!
顔を両手で押さえる。口角が自然と上がってしまう、顔をきっと赤くなっているだろう。
「とりあえずちゃんと呼吸しているし異常はないね。でも起きるかどうか……」
スティフがそう言う。そうだ、そこが問題だ。早く医者に診てもらわないと――
「連れてきましたよ!! タカハル様は落ち着かれたようですね」
アゲートが医師を抱えて走ってきた。
「――呼吸、心拍ともに問題ありません。体内の魔力の暴れもほんの少しずつ収まっています。時間が経てば起きていただけるでしょう」
よかった、本当に。もし助からなかったらこれ以降生きていけない。
「……それで、ルビー様はどうされたんですか?」
「き、気にしないで」
アゲートがそこに触れてきた、空気を読んで聞かないで欲しかった。
「とにかく、医務室へ運ばれて頂かないと」
アゲートと医師がタカハル様を担架に乗せて城の中へ行く。
「ルビー様、タカハル様のもとへ行かれないのですか?」
「後で……すぐ行く……」
座ったまま、しばらく動けなかった……
ちょっとしたお話
「うへへ、タカハル様と……」
「……本当にルビー様どうしちゃったんですか?」
「「「口止めされてる(から)((ので))」」」
「???」
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