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科学少年の異世界戦争  作者: 歯並び悪い人
戦争準備編
32/84

魔力

「よっっっしゃあー!!」


「おめでとうございます!」


 そうサティエルから声をもらう。実験大成功だ! 小走り程度のスピードの小さな車を止めることができた、次は同じ構造の実寸大を作ってもらって試してそっからさらに魔改造で車計画はokだ。


「タカハル君、ところでなんで蒸気機関やエンジンとかにしなかったんだい? 僕らの世界と同じ方がやりやすかったと思うんだけど」

「なんでわざわざ魔力を熱エネルギーに変えてからそっから気圧で運動エネルギーに変えるなんてめんどくさい手順踏まねえといけねえんだよ。魔力から運動エネルギーに変えた方がロスが圧倒的に違うだろ、エネルギー保存の法則くらいわかるだろ」

「いやわからないよ!?」

「半分そうだと思ったよ」


 スティフとそんなくだらない会話をする。意外と早くできたな、予定よりも早かったからしばらく寄り道できそうか。



………………


 それから数日。


「タカハル様、今日はどのようのことをなさるのですか?」


 サティエルが興味ありげに聞く。


「大分予定より色々と早く進められたからな。今日はちょっと寄り道の実験だか。なんの役に立つか分からない、なんの役にも立たないかもしれない、そもそもどうなるか一切わからない。だが結果次第で魔法の根本につながり、応用できるかもしれない、そんな実験だ」


 サティエル、サルトロが息を飲む。ルビーは真面目に聞いているが重要性がわかっていなさそう。アゲートとスティフはまあそんなにちゃんとは聞いてない。


「で、具体的に何するかっていうとだな、魔力を目で見る、これが予想できる中での成功、目的だ」

「魔力を目で見るっていうと簡単だと思うけど? こんな風に」


 スティフはそう言って手のひらに水や炎を作ってみせる。


「それは魔力が変異したものだ、炎も別に魔力の物質と結合の発熱反応してのプラズマ状態じゃない」

「反応……? プラズマ……?」


 魔法を止め、目を丸くしてそんな発言をする。


「要は燃焼反応ってこと」

「最初からそう言えばよかったじゃないかな……」


「ま、最初の言い方が悪かったな。見たいのは魔力の単体、さらに変異してない状態だ」

「ではどのようにして……?」


 サルトロが言う。


「用意するのは瓶、分厚い金属鍋、水、後俺。まずは瓶を真空にしなきゃいけない。大量の魔力を瓶の中に詰め込んで無理矢理空気を押し出す。で蓋を閉める」


 急いで無理矢理瓶の口を閉じる。さて、次が――

 そう考えるとピシッのような音が手元から聞こえた。目をやった瞬間瓶に亀裂が入り、数秒で砕け散った。


「タカハル様! 大丈夫ですか?」

「ああ、大丈夫」


 ルビーに声をかけられて我を思い出し返事をする。片付けようとしたらサルトロが変わると言うので変わってもらう。


「そら耐久性の低いやつだったらそうなるか。でん! 強化ガラスの瓶(魔道具仕様)」


 それを先ほどと同じように魔力だけ入れた真空(?)をつくる。失敗したから大分魔力持ってかれた、あんまり失敗できるわけじゃないな……よし、今度は大丈夫だった、次用意するのは……


「厚い金属の容器と水!」

「なぜそれらが必要なのでしょうか?」

「なんか知らんけど魔力を魔法使うくらい動かすと薄かったりするものは貫通してしまうんだ、で今までの実験の結果厚い金属は通さず、さらに水があると効果増大だった。放射線の透過かよって感じだ、もしかしたら放射線の性質持ってたりするのかもな」

「放射線……とはなんでしょう?」

「高い運動エネルギーを持った粒子と高いエネルギー持った電磁波の総称、四種類あるな」


 サティエルの質問に返していく。だが放射線の説明にはあまりわからない様子だった。昔から説明は下手と周りから言われている、理系科目すごいできるのに友達少ない理由……自爆は置いておこう。


「まあ、難しいよな。知りたいなら後々教えってやるよ。いよいよ実験だ。これらを外に持っていって……」


 …………金属容器重い、魔法で持っていくか。手に持った容器を机から動かそうと力を入れたがビクともしないので手を離してどの魔法がいいか考える。だがルビーが持つと言ってくれた。外の適当なところへ運ばせる。……なんで魔法なしであんな軽々運べるんだ……

 置かれた水に魔力を詰めた瓶を浮かべる。


「はいはい、離れて。危ないから」

「何するの? ……爆発でもするの?」

「爆発か、それとは熱を生むという点で真逆だな。こいつをおもいっっっきり冷やす。目指すは絶対零度だ!」


 スティフに答える。そして全員がその単語に反応する。まあ響きがかっこいいよな。


「絶対零度…………ってなんだっけ?」


 スティフがそう口にした。


「……絶対零度っていうのは物質の温度の最下限。スティフはわからなきゃやばいだろ、なんならお前の国は華氏温度採用してるから普通わかるだろ」


 呆れながらそう答える。しかしわからないのが普通みたいな態度をされる。これ以上なんか言っても無駄だな――


「で、何が目的かっていうと……物質の三態、とはなんでしょうか?」

「「気体、液体、固体です」」


 サティエル、サルトロが答える。二人とも俺の口に出したことをちゃんと覚えてくれている。てかスティフは頑張れよ。


「そう、で魔力が物質だとしたら温度を下げれば目に見えない気体ではなく他の状態、絶対零度なら個体が見えるはずだ」

「見えたらどうなるんだい?」

「だから言っただろ、なんの役にも立たねえかもしれない、極論言っちまえば俺の知的欲求だ。つかもうほぼ魔力がエネルギーではなく物質であることはほぼわかってるんだ」


 その発言にサティエルが「なぜでしょうか?」と聞いてきた。


「俺の世界でちょっと昔、アインシュタインさんって言う人がある公式を導き出してな、それが【E=mc^2】っていうやつなんだけど」


 サティエル、サルトロがどんな意味を持つのかかと好奇心を寄せる。


「Eがエネルギー、mが物質、cが光速度。つまりエネルギーは物質の光速度の2乗、ちなみに光速度は秒間約30万kmだ!」


 自分のことでもないのに自慢げに言う。だがこのびっくり速度に全員反応が薄い。


「光速度……とはなんでしょうか?」


 サルトロが口を開く。あ、そういうことかなるほど。


「えっと、もしかして光の速さって無限大ってイメージ?」


 その質問に魔法二人組は口を揃えて「はい」と返す。


「あー、実は光の速さは無限大じゃなくて秒速30万kmなんだ。くっそ早すぎるから無限大と認識してただけだ。色々と証明する方法はあるけど、まあ滅茶苦茶早いけど無限大ではないって覚えといてくれ。

 で、エネルギーっていうのは物質の30万kmの二乗……あいや、m(メートル)に直すから3億mの二乗だから……結局はエネルギーっていうのは物質を3×10^16(じゅうろく乗)だ!」


「もう数多すぎて何が何だか訳がわからないよ……」

「そう! わけわからんくらい数字でかいのが重要だ。だから魔力がエネルギーだとしたら、とんでもない一時的にでも物質を作れる魔力はもうおかしいと考えてもいいので魔力は物質だ。逆ができるけど魔力は消費された訳じゃないからとんでもないエネルギーが生まれたりはしないのはわかる」


 その説明にサルトロもサティエルすらもあんまり理解してない。しかたない、これはもう難しすぎる。どうしてそうなるのか説明してたら日が暮れるどころか日が昇ってもう一回日が落ちるくらい時間かかる。


「悪い、これより簡単に説明は難しい……御託はここまでだ、長くなるから質問は終わった後だ、一応ちゃんと離れておけ、容器はタングステン仕様で熱伝導しにくいはずだが空気もしてしまうから気をつけろ、下手したら皮膚が凍る」


「タングステン?」

「質問は後」


 スティフの言葉にルビーが制する。


「ああ、後でな。始めるぞ」


 リーマンさんの杖を構える。魔力で無理矢理物質の熱運動を押さえつける感覚だ。すぐに水は凍りつく、水の凝固による体積の膨張でのガラスの破壊は大丈夫であったようだ。そのまま温度を下げていく、目標0K(ゼロケルビン)だ。思えば熱力学第三法則に逆らうのか、だが魔法だったらそれは例外か。振動を完全に抑える…………


 なかなかに魔力を持っていかれるな。あの中の魔力は元々俺のだったが体外に出て時間が経つと操作できなくなる。つまり自然界に存在する魔力と同じと予測は立てている。俺の意思には左右されないということが重要だ。

 氷のせいで見にくいが、瓶の中は変化がない。頑張れ俺の魔力――!

 数十秒ほどだろうか? 冷えた空気が俺の周りを漂う。空気から氷に熱を受け渡すのがウザすぎる。だが今更だ、続けるだけだ。

 さらに数十秒ほどだ…………


「「「「「!!!」」」」」


 その場の全員がそれに気づいた。



 瓶の底に少量の紫色の液体が広がっていた。

 魔覚でも瓶の分子は無理矢理押さえつけていると感じる。絶対零度だ、まあ俺の感覚しか観測するものなくて確実性は無いけど。

 もういいよな、凍らせる魔法を止める。


「あれが……魔力……!」

「素晴らしいです! タカハル様は……!」


 サティエルがとサルトロがそう言う。ってみんながそれに近づいていく。


「ストーップ! 近づかない、離れて。」

「なんで?」

「いいから」


 スティフと会話して、みんなが離れていく。すると氷が溶け始める。瓶の中の紫色の液体は蒸発していく。そして――水が全て溶けると今度は沸騰し始め………爆発した。


「うわっ! なんで!?」

「魔力で何かの温度を冷やすと今度は温度を上げようとする、別のものだったりはするが、まあ無理矢理押さえつけてたのがパーンと弾ける感覚。今回は全体から押さえつけてたから物質自体がパーンと弾ける上に魔力も温度を合わせようとする。


(以下早口)


 前の実験から得られた結果だが魔力は温度を下げようとしたと時、絶対温度を下げた分後々上げる性質を持っている。つまり今回は絶対零度にしたから大体摂氏三百度くらいになってそりゃ蒸気爆発するよなって言うこと。そうそう、タングステンっていうのは見つかってるなかで熱伝導がすごい低い金属。ロケットや真空管なんかにも使われてて、灰重石とかから取れてすげえ貴重な金属なんだ」


 あ、抑えていた悪い癖が出てしまった。全員ポカンとしている。


「はい、悪い喋りすぎた。まあ、要するに魔力っていうのはエネルギーの均衡を保とうとするってこと。それよりも、お前ら見えたよな? あの紫の()()を」


「見えたよ、すごいね、世界で初めて魔力を見たんじゃないかな?」

「はい、そのようなことは聞いたことがないです」


 スティフとサティエルが言う。


「そこじゃない、液体かどうかだ」

「? 少し波打っていて液体のように見えましたよ」


 ルビーが疑問を持ちながら答える。なぜだ……両手を組み首を傾げながら考える。「うーん」とかそれっぽい声が出てしまう。


「どうなさったんですか?」


 サルトロの声に思考をまとめる。


「……冷やせば冷やすほど物質は固体になりやすい、絶対零度で十分な量の物質があるなら目に見える固体になるはずだ。だがあれは明らかな液体だった。……考えられる理由はいくつかある、俺が絶対零度にできたと思っていても実は違った、液体に見えたけど実際は固体の集まりだった、魔力はそもそも固体がない物質だった。あとは何かあるかな……? ま、俺の失敗か三態の法則の枠から外れてるってことだろうな。

 そこまで不思議なことじゃない、ガラスなんかあれ固体に見えるけど実は液体なんだぞ」


「え!? そうなの? でも流れたりはしないよ?」


「ああ、正確には固体にはならずガラス状になるって言うのが正しい。固体が規則正しく並んでるのに対してガラスは無理やり押し付けて規則もなく敷き詰まっている感じ、他の物質との違いは今でもよくわかっていない」


 みんなは他人事のように反応する、まあ感覚とは全く違うし信じずらいか。


「でもこれを解き明かさないわけにはいかないな、どーしたもんか……そもそも分子だとかの物質と一緒に扱っていいもんなのか……」

「絶対零度よりも低い温度とかで冷やすというのは?」

「絶対零度が物質の温度の最下点と仰ったはずです」


 アゲートの提案にサティエルが返答する。それに対して便乗しようと口を出す。


「そうだぞ、そもそも温度っていうのは粒子の振動の動きで絶対零度が全く動いてない状態だ。だから絶対零度以下の温度は存在しな……い……」


「ん? どうしたんだい?」


 それは転生する数年ほど前のこと……





「タカハル! ちょっとこの記事見てみろ!」

「ん? 絶対零度以下の温度を出すことに成功……えええ!!?? ……読んでもわからねえ!」

「カリウムにレーザーと磁界を使って負の絶対温度を作るんだ!」

「父さんの説明でなおさらわからねえよ!! なんだ負のエネルギーだからって重力に逆らうって……」

「さあ隆治も量子力学に興味が――




「存在しないわけじゃないな……」

「え? そうなのかい? ならそれを再現すれば!」

「スティフてめーは俺の説明聞いてなかっただろ。いいか? 絶対零度以下の温度なんて俺なんかよりも地頭が良くて俺の何倍、何十倍も勉強した奴らが寄ってたかって考えて失敗してなんとか成功してそれを観測してようやくできたものだ、それでも数十億分のいくつかの負の絶対温度だ。大学にすら行ってない俺が敵うものじゃない、魔法があるからって俺だけで何十年かかるか……」


 手を額に当ててそう喋る。


「えぇ……それはかなり難しいね……」


「あああ! そういえば零点振動なんかもあったな!」

「零点振動……とはなんでしょうか?」

「有名なのはヘリウムだな。あいつは絶対零度でも液体のまま、ようやく思い出せた」


 サティエルに答えるとサルトロも聞いてくる。


「なぜそうなるのかは――」

「すまん、わからん」


「ええ、タカハル君でもわからないの……?」

「別に俺は完璧超人じゃねえよ、零点振動なんか大学の量子力学でやることだ。位置の曖昧さ×運動量の曖昧さがうんちゃらかんちゃらで二分のプランク定数とかなんだよ。さわりしかやってねえよ」

「普通触りもしないよ、高校生だよね……」


「おう高校生だ。ま、魔力が物質であることがわかったのが一番大きい。そうなればこんな風に――よっ!!」


 顔の前に指先から直径5mm程の魔力の液体の球体を作ってみせる。


「ん? 絶対零度じゃないとできないんじゃないの!?」


「これは圧力をめっちゃ上げたんだ、水が高いところ行ったら沸騰しやすくなるっていうのは知ってるだろ? だから見た目以上に魔力が持ってかれる。もう無理」


 指先を振りそれを霧散させる。さて、これをどう応よ――




 足から崩れ落ちる。立っていられなかった。それをルビーに横から支えてもらった。


「エ゛ホッ!!!」


 これまでにない咳が出る。それが何回もだ。


「タカハル様! 大丈夫ですか!?」


 ルビーの声が聞こえるがそれどころじゃない。やばい、呼吸ができない。ゆっくりと身体を倒され頭がルビーの膝に乗る。背中をさすってもらえるが効果がない。思考ができない、どうにかしなければいけないのはわかる、がそこから頭がはたらかない。

 胸がすごく痛い、今までにない程に。心臓の鼓動が身体全体に打ち付けるように強い。

 何か色々と聞こえたり見えたり感じ取ったりするが理解できない。理解する隙がない、たった一瞬が数十分のように時間を感じる。どれだけ時間が経った? 地獄のような感覚が延々と身体を襲う。

 言葉にならないような音が咳として出る。喉が痛い、胸が痛い。まずい思考が…………

ご閲覧ありがとうございました。よろしければ評価、感想をお聞かせください。気軽にお願いします。


星一評価、辛辣、一言感想でも構いません、ちょっとした事でも支えになります。世界観や登場人物の質問もネタバレにならない程度に回答します。(ガバあったらすいません)

科学質問も出来る限り回答します(ネット知識なので大したことはできないしガバガバですが……)


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