転生初日終わりまで
申し訳ございません、まだチートしません。
次話にはチートすると思います。
「最初にするつもりのこと。それは—–———
農業です!」
場にいる俺以外の全ての人が不思議そうな顔をした。
「転生者がわざわざ農業するのが不思議なのはもっともです。ですが、私が農作業をするわけではありません。私の世界の観点から田畑の工夫を農家に与えます。そして農作物の収穫量をあげて兵士の数を増やします」
「確かに兵の数を増やすと戦力は比例以上、二乗以上になります」
有名なランチェスターの法則だ、戦力=武器×人数の二乗。
「しかし、それでは一人あたりの質が下がってしまうので反対です」
表情は変えないまま少し強めな答えが返ってくる。
「プレナイト——」
王様が反対するのを咎めたようだ。どうやら俺の立場は結構高めのようだ。やっぱりこの国だからこその宗教の力か……
しかし納得させずに決行するのは向こうもこっちも気分がよくない。恨みとかは買いたくないし。
本人を納得させることを言えばよし、あるいは周りを納得させれれば恨みとかの矛先は分散するだろうとふんで……
「プレナイトさんの言いたいことはわかります。しかし質と量というのはこの場合両立できます。現在いる兵士の質は変わらず新たな兵士を増やすのですから」
「現在いる兵士の質が変わらないとおっしゃりましたが、残念ながら兵士の怠惰によって質が下がってしまうことは十分考えられます」
「なるほど。では兵士の育成に宗教を持ち込みましょう。信仰の力は絶大です。この国ではそうでしょう? 女神様に選ばれた転生者にあなたたちは選ばれた。そう言うだけで個人の努力量は大きく上がると思いますよ」
「確かにそうかもしれませんが始めてすぐは戦力が乏しくなるかもしれません」
「将来的なことを見据えると戦力は最終的に従来よりも増加量は大きいでしょう。次にレックス国に転生者が現れるまで二十年の猶予があるのです。戦力が増やせるかどうかご心配なら農作物の生産量の増加の結果が出てからでも構いません」
その発言に彼は目を閉じた、多分考えているのだろう。
「ダメでしょうか」
「生産をみてから考えます」
「はい、ありがとうございます」
「他に何かあるかね?」
王様が聞いてきた。
「この国の主食の原材料、その他主要な農作物のそれぞれ土地あたりの収穫量が多いのと少ないのをそれぞれ複数情報がほしいです」
「土地あたりの収穫量ですか……」
サティエルが呟いた。
「どうした? もしかして土地の面積がわからないとか?」
「はい、多くの畑は歪な形で面積は測りずらいので……」
まじか。そこからか、そこまで頭が回っていなかった。
「検地からかぁ……」
そんなこと言うと座っていた老人が話し始めた。
「陛下、ご予算をいただければタカハル様の言う検知を我が国全土行うことができます」
俺はその老人の話を聞いているとこちらに向かって話してきた。
「申し遅れました。レギア国魔導科総括、アウイン・ハットンと申します」
「ああ、どうも。ところで検知ができるというのは?」
「はい、数年前……いや十数年前でしたかな? この歳になると年数を気にしなくなりまして――話がそれましたな。前に土地に面積を測れる魔道具の資料を見ましてな、しかし結果が出るまで少し時間のかかる上、土地の面積を測るということはほとんど長方形の土地を測るばかりで魔道具を使うまでもないと思っていたのです」
「魔道具とはなんですか? 私の世界にはそのようなものはなかったので」
大体の予想はつくが聞いておきたい。
「これは失礼しました。魔道具というのは特殊な製法で物に魔法を使用させるという物でございます。魔法とは違い魔道具でしかできないこともございます。」
ちゃんと理解することはできなかったがそれは後々でいい。
「それではその魔道具を使えばこの国のほとんどの畑の面積をそれぞれ測れるのですね?」
「はい、時間をいただければ可能です。私がもっと早く気付いていればタカハル様にお待たせする必要がなかったのですが、考えが至らず申し訳ないです」
「いや、時間はあるので焦る必要はないです。それよりも、どのくらいかければ検知が終わりますか?」
焦る必要は無いと言いながらせっかちな俺だ。
「一年かければこの国の全てを測り終えられます。ですが五十日で王都周辺の面積は測り終えられるでしょう。」
「わかりました。ではよろしくお願いします」
「待て、どれくらいの予算を出せばいいか聞いておらぬぞ」
「! 大変失礼しました、陛下。」
そう言って姿勢を正した。
「よい、それで、いくら出せばよいのだ?」
「はい、レギア国ほとんど全土をまわるとなると…… 魔道具自体は比較的安価なので人件費と移動費で……これぐらいになります」
アウインは紙とペンを取り出し計算して、すぐに金額を出したようだ。
ちゃんとは見えていないが最後の文字が五桁であることが見えた。そういえばお金の価値はわからないな。それよりもこの言語数字10進法だよな? 頭の中の言語を確認した。大丈夫だった。
10進法以外だったら少々面倒だったのでよかった。
王様は側近のような人と相談している。少し時間がかかりそうか?
しかし、五十日か。その間に魔法やら魔道具やら教わって、その後方針立てて……最短でも一年かな?いや種蒔きと収穫時期次第で最短で二年か。いやでも種撒きから収穫が春から秋とは限らない。
今はそう考えても無駄か。試してから結果が出るまでに並立で別のするべきことを考えておくべきだな。
そんなこんな考えていると相談が終わったようである。
「わかった。その予算を渡そう」
「誠に感謝いたします」
アウインが深々と頭を下げて言った。
「タカハル殿、期待しておるぞ」
「お任せください」
「他には何かあるか?」
「いえ、特には……」
「では、私たちが話すことは以上だ。そなたが今日してもらうことは多い」
「え? はい。わかりました」
「タカハル様」
後ろを見るとサティエルがドアを開けて待っていた。
もう終わりなのか。向こうが話すことは結構あると思ったんだが。そんなことを考えながらドアの前まで行った。
「失礼しました」
軽く会釈しながら言った。
部屋の中の人達は変わりない。
そのまま出て行ってまたサティエルに着いて行く。
「これだけなのか? 向こうが話したことといえば戦争の状況くらいなんだが」
気になったので護衛のうちの誰かに聞いた。
「はい。一番の目的は転生者の顔を見ることなので。」
戦争状況の方がおまけなのか。
「噂ですけど、プレナイトさんがどうしてもっていうから話させてあげたそうですよ」
アゲートが言った。少々小馬鹿にするような感じだった。
「そういえばアゲートはレギア国騎士団とか言ってたな」
「はい! プレナイトさんは自分の上司です」
「怒られないの? そんな話しちゃって?」
「タカハル様の護衛してなかったらぶっ飛ばされてたでしょうね」
少し調子に乗っている……他護衛も呆れている。あの人結構がたいよかったもんなぁ。
話を変えよう、聞きたいこともあるし。
「これから何をするんだ?」
「次は魔力測定です」
「魔力測定?」
「はい、体に保有している魔力を調べます。この数値が高いと魔法を多く使えます」
「もしかして、タカハル様の世界では魔法は存在しませんでしたか?」
「ああ。無かったな。」
もっとも、ないとされてるだけである。実はあったとかだったらおもしろいんだが――
「珍しいか?」
「いいえ、魔法がない世界からの転生者は珍しくございませんが、その世界からの転生者は今まで我々が知らなかったことをお与えになったと記録にあるので、実は楽しみでして」
「ああ、楽しみに待ってろ。絶対に驚かせられる」
そんなこんな話していると……
「着きました」
サティエルが言った。そして扉がサティエルに開かれると一つの机がありその上に小さな水槽とその中にいくつかビー玉ほどの大きさのガラス玉のようなものがいくつか――十個あり、その横にタオルがある。
そしてその横に一人の男性がいた。
「お待ちしておりました。ではこれで……五分後に戻ります」
そう言って男は出て行った。接触する人間は少なくするとかだったな。
ただの見張りのような人か? それともこの机の上のものを用意してくれた人か――
「それでは魔力測定の仕方を説明いたします。とは言っても簡単でして足をこちらのカーペットに置いた上で一分間以上両手をこの水槽に入れてもらいます。そしてこの玉が濁れば濁るほど魔力が高いことになります」
「わかった。手はどのくらいまで入れればいいんだ?」
「底までつけてください」
「じゃあ、もういれていいか?」
「どうぞ」
そう言われ裾をまくり水槽に手を入れた。このガラス玉は魔道具というものなのだろうか? そういえばカーペットの上ということも言われていた、カーペットも何かあるのだろう。
まだ数秒なので玉に変化はない。一分ほどだが聞く時間はありそうだ。
「この玉が魔道具っていうやつなのか?」
「はい、玉だけでなく水と足元のカーペットも魔道具です。魔道具といっても水は使い捨てですが……」
「それじゃあ魔力測定って結構お金かかるんじゃないのか?」
「一般貴族には問題なく出せる金額でしょうが、平民、農民には難しいでしょう」
水までもとは思わなかった。平民農民にはやらないとなるとたまたま天才が見つかるとかはないのか。
そんなこんな考えていると玉が白く濁ってきた。どのくらい濁るかと言われていたが白色でわかるのだろうか、それともここから変色するのか。
「そういえば、人の魔力? は増減したりするのか?」
「はい、魔力を使っていたりすると増えます。また、歳をとって魔力を使わないでいると減ってしまいます。」
「なるほど」
人の器官と似たようなものか。
「ところで、普通はいくつぐらいに測るんだ?」
「私は七歳の時でした」
「私も七歳でございます」
サティエルとサルトロが答えた。基本は七歳か?
「自分は十歳です」
アゲートがそう言った。そういうわけでもないそうだ。
「私は三歳と言われています」
ルビーが言った。王女だから英才教育か?
「この後は何をするんだ?」
「採寸、身体能力測定を行います。そして城の案内後、食事、風呂で後は終わりです」
もうすぐ終わるようだ。だが、身体能力測定……いやな予感しかしない。予感というよりかは今までの経験から導いた予想だ。
「タカハル様、もう大丈夫です」
そう言われたので手を水槽から出して差し出されていたタオルを受け取った。するとサティエルがいつのまにか持っていたガラス棒で水槽を混ぜ始めた。すると中のガラス玉が白色の濁りから黒くなっていき、濃いめの灰色で止まった。
「この濁り方でわかるのか?」
「はいこの濁り方は……8ですね」
いつのまにか持っていた紙と玉を見比べながら言った。
サティエルは俺の世界で生まれていたらマジシャンになれたんじゃないだろうか。
「8? それはどうなんだ?」
「はい、一等魔法使いの中でもトップレベルの魔力です。もちろん、魔力量だけで強さは決まりませんが。」
「おお。ちなみにサティエル達は?」
「私も8です」
「私は7です」
「私は3です」
「自分は2です」
んーと、サティエル8、サルトロ7のルビー3、アゲート2か。宗教上トップレベルの転生者の護衛に付けられる人達だ。エリート中のエリートが選ばれるのだろう。そう考えるとルビー、アゲートも魔法向きではないのか?いや平均も中央値も知らないからなんとも言えないが。でも使ったことのない魔法でこれだからもしかすると身体能力も上がってるんじゃないか……?
………………
はい、根拠もない自信なんか空虚な妄想です。
俺は所詮50m10秒のインドア派高校生だ。跳んだり走ったりしたが身体能力など上がったりしない。
採寸は思ってたとおりだが身体能力測定も思ったとおりだ、もちろん悪い意味で。魔法を伸ばそう、身体能力は最低限で十分だ。
その後は予定通り城を案内されて、食事したり風呂入ったりと色々だ。数人のメイドや執事の紹介もされたな。食事は俺の世界でいう西洋風の料理だ。主食はパンだった、原料はおそらく小麦だろうか。
しかし食材が俺の世界ととても似ている。生物の多様性は突然変異と自然淘汰から作り出されたもののはずだ。自然淘汰はともかく突然変異までほぼ一緒なのは違和感がある。まだ見た生物は少ないので今後調べて行きたい。
風呂は湯船に入れたのは内心嬉しい。確かローマに風呂があって中世ヨーロッパに風呂がないのは伝染病の問題だったか。それが無ければ風呂文化が続くのは普通だろう。ただ入れるのは金持ちだけだろうが。
そんで今いる俺の部屋だがすごく広い。ベッドもでかい。だが落ち着けないとかは無い。俺は寝なきゃいけない時は寝れる人間だ。
というわけで寝よう。
……起きたら夢だったということはないだろうか...?
不安のような期待のような感情を覚えながら眠りについた。
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