サルトロ
物心ついた時から転生者の護衛になると言われ育てられてきた。転生者は偉大な御方と教えられてきた、この家では詳しく今までの転生者のことを知ることができる。記録を幼い気持ちながら見させてもらうと誰もが英雄だった、鍛治士であるグラム様ですらだ。転生者様を近くで見ていたい、そんな風に思った。
家族に期待されていたのもあったが自分の為に転生者様の護衛になる努力をとても積んだ。しかしそれは自分だけでなかった、転生者様の護衛になるための試験は困難だった。それでも護衛魔法使い男性枠になんとか入ることができた。
ただ悔しいことにサティエルの方が優秀だった、護衛が決定した後も努力を惜しまなかった、きっとサティエルよりも努力したはず。だがその差は縮まなかった、自分の才能、過去の努力の怠りを恨んだ。だが結果は結果だ、それに非自然魔法のみだったら私の方が得意だ。
そして転生者が降臨なさった。その御方、タカハル様は魔法型だった。理由はわからないが嬉しかった、今までの転生者様は魔法型の記録が無いから諦めていた節はあった。
しかし親近感だろうか、私なんかが厚かましいがタカハル様にそんなものを覚えた。だがタカハル様は戦地へ行くのではなく農業を行うと仰った、だがそのお言葉は合理的だ。さらにいくつも驚くべき知識で私は思わされる、戦争に勝つことができると。
――王都周辺を巡ることで私の家族に会えることがわかった、一人で喜んだ。そして家族の顔を見ることができた、私の顔を家族に見せることができた。妹のウラーテはダメだったが仕方ない。
そこで私はウィザライさんから二本ナイフの入った箱を受け取った……それが間違いだった。一体どこで支配されたのか、支配されたとはいえタカハル様に刃を向けてしまった。
こんな私は生きている価値がない…………だがタカハル様は私の処刑を延期なさった。タカハル様はお人好しだ、戦のない世界から来たのだから無理もないが、自分は生きていいわけがない……
――――――
「タカハル様もお人好しすぎです、支配魔法をかけられていたとはいえ刃をタカハル様に向けたものなどすぐに処罰されるべきなのに、タカハル様はサルトロの処刑を延期なさって……」
「まぁ待てルビー、犯人が見つけられそうなんだよ。あいつがいれば」
サルトロのいる地下牢へ足を運び会話をする。
「一応魔覚のあった方向には捜査させましたがそれらしき者は見つかりませんでしたけど……」
「一方向だったら捜査範囲が大きいからな、ちょっと違う方法を使うんだ。ってもう着いたな」
ある牢の前で立ち止まる。
「よー……大体一週間ぶりか、サルトロ」
「タカハル様……そしてルビー様、この度は誠に申し訳ございませんでした。この私、命をもって罪を――」
「おいこら待て、勝手に死のうとするな……その首輪が魔法使えなくするってやつか?」
「はい、『魔法封印の首輪』です」
サティエルが言った。
「さてと、もうちょいこっち来い。そして片腕出せ」
俺はサルトロの腕に紐のついたリングをつけ、首にも似たようなリングをつけた。
「これは一体……」
「教えない。本題だ、いくつか質問するぞ。答えるとき感情的になるなよ。まずお前は自分の意思で俺を攻撃しようとしたわけじゃないな」
「はい」
「――じゃあ、あの二本のナイフはいつからもっていた?」
「私の領にいた時にウィザライ様に渡されたものです。骨董品、観賞用と言われていましたが……」
サルトロの遠い親戚とかだったな。
「お前を支配したやつの心当たりは?」
「申し訳ございません、思い当たる節はありません……ウィザライ様は魔法を使えませんので」
「ウィザライが関わってると考えていいな?」
「おそらくは……」
「どうでしたか?」
サティエルが言った。
「おかしな変化は見られないな。だけど質問自体が向いてないけど支配魔法だっていうことは間違いなさそう」
「それはよかっ――」
「あるいは嘘をつき慣れてるか、だ…………まあでもこいつを知らないわけだしそんなことはないだろ。」
こいつが俺の手元に来たのは少し前のこと……
――――――
「何ですかそれは?」
サティエルが言った。
「えーとな、アゲートちょっとこっち来い」
「はい、何でしょう? ってなんすか?」
「大丈夫だ、危険は無い。ほれ、こいつ見てみろ」
そこにはメーターのような目盛り二つがあり、片方の針はピクピクと、もう一つの針は左にゆっくり行っては戻り、少し止まってからもう一度左へ動いていた。
「脈拍と呼吸を調べる道具、頼んで作ってもらってた」
「それは一体何に使うのですか?」
サティエルが言った。
「医療でしょうか?」
「それもあるけどなルビー、目的は嘘発見器」
「「「!?」」」
「それをつけていたら嘘が分かるのですか?!」
「いやわからないと思う。サティエルみたいに期待するのも分かるけどな、まあ一種の情報を増やす道具だ。発言と脈拍、呼吸から緊張するタイミングがわかる。ただ別の要因で緊張したり、逆に嘘ついても訓練とかで慣れていたりするとわからないことがあるんだよ」
――――
てな訳でポリグラフっていうわけだ。
「さて、そういえば支配魔法は一回設定しないといけないし外部から解除することができる。でもお前のは解除していない、理由はお前を支配したやつを探すためだ」
「でも一体どうやって……」
サティエルが言った。
「ちょっと難易度高いけど……三角関数を使う。支配魔法の限界範囲は2km程度だ。50m移動すれば誤差は大分小さくなる、それでサティエルはもう〈魔覚敏感化〉を会得したよな?」
「はい、タカハル様ほどではありませんが」
「サルトロは、この魔道具を首に付けてもらう」
俺は小さい水晶がついている黒い首輪を取り出した、ルビーがリハビリ中の時に大急ぎで作ってもらったものだ。
「支配魔法がかけられた時こいつが光る、それに気づいたら魔覚の方向を印つけて、直角に50mルビーかアゲートが走って連れる。んでそっから魔覚のある方向にもう一回印をつける。それが終わったらサティエルがすぐに支配魔法を解除する。
――てな訳で釈放だ、出ろ」
「その……よろしいのでしょうか?」
「理由は言っただろ。とりあえずアゲートに着いてって諸々準備してこい。その首輪もこっちに変えて」
「ほら、行きますよ」
………………
「てことで反応あるまでやることは研究くらいだな」
「あの……本当にもう一度支配魔法は使われるのでしょうか?」
ルビーが言った。
「支配魔法かけたやつが設定解除されずにどっかをほっつき歩いてたら気になるはずだ。」
「確かにそうですけど――――」
サルトロが言った――
「ってもうかよ!? 〈魔覚敏感化〉!」
急いでチョークを取り出し研究室の床に可能な限り正確に印をつける。
「アゲート! ジャスト50mの紐だ、こいつの端とサルトロ持ってあっちに走れ! 微調整の合図は打ち合わせした通りだ」
「了解です!」
幸いにも小屋の出入り口方面だ、もし違ったら壁ぶち抜くつもりだったがそんなこと必要なさそうだ。
道具で直角を測りながら紐を確認する。どうやら向こうは着いたようだ、手を上げて少し左右に揺らし微調整させる。
そしてサティエルがアゲートの方へ頑張って走っていた――やべえ、サティエルの移動どうするか考えてなかった、あの感じだと少なくとも後七秒かかるぞ、どうすれば――
ルビーがサティエルの腰を抱えた。
「え? ……キャアアアーー!!??」
サティエルが絶叫を上げながらルビーに運ばれていた、たった三秒ほどで着いた。はっっっや……
サティエルはふらつきながら魔法で地面を傷つけて印を作り、サルトロに手を向けるとサルトロの首輪の光が消えた。
えっと、確かここら辺に用意を……あった。
小走りでみんなの方へ向かう。
「タ、タカハル様、88度です……」
「大丈夫か……? えっと、tan88°は28.635か。かけ50で百倍の半分だから1431.8……こっから下は意味ないか。だから研究室からあっち方向に1kmと430mだ!」
研究室に急いで戻る。
「地図はー……誤差込みで大体ここら辺!」
「すぐに連絡します!〈伝達〉」
サティエルが言った。
「……アゲート、どういう風に運んでましたか? すごい首が痛いんですけど、主に気管が……」
「襟元をもって、こう……ガッと。文句言わないでくださいよ、一番早くできる方法だったんですから……そういえばその紙何ですか? 地図じゃない方の」
「三角比の表、流石にこの世界にもあったからな」
「あう、見るだけで頭が痛くなるあの文字列……」
アゲートと一緒にルビーも視線をこの紙からそらした。
「苦手かもしれないんだけどな、こいつらは世界で大活躍なんだ。この世界の過去の学者に大感謝だ、もし無かったら俺が一度ずつ調べてくしか無いし……」
作図で求めるのも、テイラー展開で使って1度ずつ調べるのも地獄か。
「過去に本当にやった人がいるのですね」
いつの間にか復活していたサティエルが言った。
「そういうこと」
――――――
「で、とっ捕まえた訳か。サルトロは見覚えある?」
「いえ、ありません。なにせ最近入国したそうじゃないですか、レックス国から南方国を渡って」
騎士さんに取り押さえられて魔力封印の首輪をつけた男を見て言った。
「なぜ王女も転生者も生きている……」
なんか言ってるけどガン無視。構ってる暇なんかねえ、次だ。エルフ暗殺者の雇い主を探す、こいつの尋問は全部そっちの仕事の人任せる。
――――――
「ほらよ、出やがれ。仕事だ、てめーの雇い主ところまで連れて行け。混乱に乗じれることがわかってるっていうならこの事件と同一犯のはずだ」
「はい……ですけど馬車なんか使ったらすごい怪しまうと思いますよ……?」
「近くまで馬車で行ってあとは徒歩、幻影魔法使って着いてくから」
「その、彼の近くにいる仲間がすごく魔覚に敏感でして……」
「問題ない、無駄口言ってる暇ないんだよさっさとしろ、恩赦出さねえぞ」
「は、はい!」
俺を狙ったその面拝みに行ってやるぜ。覚悟しときやがれ、同一犯かはしらんがサルトロを支配しルビーにあんな思いをさせたふざけた野郎――――!
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星一評価、辛辣、一言感想でも構いません、ちょっとした事でも支えになります。世界観や登場人物の質問もネタバレにならない程度に回答します。(ガバあったらすいません)
科学質問も出来る限り回答します(ネット知識なので大したことはできないしガバガバですが……)




