ルビー
幼い頃、転生者様のお話を聞いて憧れた。先代転生者様、二代前転生者様、三代前転生者様、それよりも前もまさに英雄だった。そんな人と肩を並べて共に戦いたいと思った、護衛になると言い始めたのは物心ついてからすぐだった。私にはその素質があった、身分もあった、努力だって沢山した、嫌いな勉強だって頑張った。誰よりも努力をした、その結果はどの転生者様護衛候補とも全く及ばないほど、選ばれたサティエル、サルトロ、アゲートにすら大きな差がある。
そして選ばれた時はとても嬉しかった、これで夢だった転生者様と肩を並べて戦うことができる。
しかし転生者様は魔法型だった、ならば転生者様の前で剣を振ろうと決めた。だが転生者様、タカハル様の本領は魔法でない、戦うことではない。私たちの常識はいとも簡単に覆されていく、最初は農業をすると仰った。その時は何事かと思った、農業など農民に任せておくもの……しかしそのお方が言うことは明かに合理的だった、不敬だが転生者様が降臨なさり戦って戦況を有利にしても敵国の転生者に覆される。それが何度も繰り返されてきた。
だが、タカハル様は違う。直感的にも理性的にもそう感じる、タカハル様と過ごす度そう強く感じる。タカハル様で最後の転生者だと。そうならば私の欲求など小さい、これくらい我慢すれば戦争は終わる。タカハル様をお守りすれば平和が訪れる、これで終わりだ。タカハル様に恋い焦がれ、サティエルと協力して色目を使ってしまった時もあった。
しかし欲求に負け戦いにいくことがあった、しかしその中でもタカハル様はあらゆることを吸収していく、ありとあらゆる経験を糧にして知識をつけていく。私には理解できないことがいくつもあったがそんなことは些細だ。
だが、失態だった。プレナイトの裏切りに注意が行きすぎた、サルトロにもっと早く気付けられたはずだ、一発目を与える隙を与えてしまった。二発目はこの身を使って躱せたと思った、掠った程度問題ないと思っていた。あとはアゲートに任せて終わったと思った。
しかし毒の事実を告げられると恐怖が身を襲った。タカハル様と別れるなんて恐怖でしかなかった、それがタカハル様の代わりに死ねたとしても。呼吸と鼓動は早くなっていた……しかしタカハル様は『絶対助ける』と仰ってくれた、その言葉を信じずして何が信者だろうか。すると呼吸も鼓動も落ち着いた。
私にとっては一日、しかしタカハル様にとっては十日。そんなにも間心配してくださった。とてつもない早さで日が昇り落ちていく中で何度もタカハル様の顔を見ることができた、それで救われた。何回も襲ってくるマイナスの考えから脱することができた。
その後、タカハル様のお話することができた。とても嬉しかった、今までにないほどだ。タカハル様はみんなのおかげと仰っしゃるがタカハル様がいなければ延命も意味などないし私がどう足掻こうが最後は決まっていた。それなのに謙虚なお方だ。
治った時は感極まりすぎてタカハル様に飛びついてしまった、とてつもなく不敬だった。しかしタカハル様は私を受け入れてくれた。泣いてしまった、しかし幼稚に泣く私を抱きしめてくれた。その時からタカハル様への考えが止まらない、もともと恋い焦がれていたタカハル様への想いが止まることを知らない。私なんかが大変失礼なことを考えてしまう時もあった……
こんなことしている私はタカハル様の隣のいるべき人として相応しくないだろう……いや、きっとタカハル様なら受け入れてくれるはず。
「さっきからずっとあんな感じですね、顔を赤くして頬杖をついて」
「かと思えば急に布団の中に潜ったりする。これは間違いないですね、もう私は無理そうですね。応援しますよ」
「二人にこの気持ちはわからない、いらない」
顔を少し布団から出して言う。するとノックが聞こえた。
「ルビー、入るよ?」
「タカハル様!」
ベッドから飛び降りタカハル様に抱きつく。この時がとても幸せだ。
「うおっ、もうだいぶ元気じゃないか?」
「はい! 剣も今まで通り振れるようになりました」
「もう復帰も近いな」
「明日からと許可も出されました!」
「それはよかった、まだまだやることはいっぱいあるからな。てか増えたし」
「はい……その、タカハル様……」
「うん?」
「……えっと……あ、危険な目に遭ってしまったと聞いたのですが」
言いたいことが言えない、サティエルとアゲートの視線があるからだろうか、それとも私の心が弱いからだろうか。
「あー……ちょっとな、でも大丈夫だ」
――――――
ルビーが戻ってきた、本当に良かった。片っ端から役に立たねえと思っていたことも調べてよかった。
「で、今何してるの?」
「アゲートとルビー様の試合です。力量を仲間内に知らせておくことは重要ですので」
「それはもちろんですけどリベンジです! 病み上がりですからって手加減しませんよ!」
「要らない、それでも勝てる」
「では……はじめ!」
アゲートが地面を蹴り、右手に持った剣を左から振る。しかしそれはルビーの大剣によって簡単に受け止められる。すると反撃しようとするがバク宙で躱す。ここまで一秒もない、動きが速い。俺の世界の体操とか比べ物にならねえ。
するとアゲートは連続で攻撃する、しかし全て受けられる。するとルビーが斜めに横に振り反撃する、だが簡単に躱す……
だがルビーが慣性で前進しながら大剣を一回転し地面に叩きつける。衝撃波がここまで来た、とんでもないエネルギーだ。バックステップで避けたアゲートも体勢を崩す。すぐさま剣を前に構えるがその剣はルビーの大剣によって弾かれ宙を舞う。
アゲートは両手を上げ降参を示す。
「ルビー様の勝利です。」
「全く敵いません、五秒くらいは伸びましたかね?」
「四秒、でももう少ししたら元通りになる。精進が足りない。」
「どれだけ時間使えばいいんですかね?!」
「いつもだったらこれより四秒早く終わってるってまじか」
「足元にすら及ばないとはこのことですね。ところで、ルビー様が戻ってきましたが、何をなさるんでしょうか?」
「ああ、言ってなかったな。
サルトロに会いに行く――――!」
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