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科学少年の異世界戦争  作者: 歯並び悪い人
戦争準備編
16/84

貧しさ

 あれ以降、魔物は出てこなかった。二日間、何も問題なく目的地まで来れた。ここは下から二番目の生産量の場所だ。

 目的地はすこし涼しい、今は初夏のはずだが。それもそのはず、高度が高い場所に今位置しているのだから。だが、それくらいじゃ大麦の場合は生産量が減ったりはしないと思うが。


「転生者様……この度はこのような場所に来ていただき、誠に――」


「そういうのは大丈夫、ちょっと調べにきただけだ。サルトロは同じようにお願い」


 畑を見ると畑自体も狭い、灌漑もしていないようだ。三圃式ではあるようだが。生えている大麦の量は少ない、農家さんも見ると痩せ細っている。俺が今までどれだけ甘やかされて生きていたのかがわかる。


 流れ作業のように〈ろ過〉を使おうとすると気づいた。魔力スコップが表面部分は変わらないが少し深くなると少し硬く感じた。表面部分の土は団粒構造になっているが、少し深い場所は単粒構造っぽい。


 〈ろ過〉を使うっていくと色がわかった。


「ほんの少し赤みがかったな、弱酸性か」


 サルトロに質問し終わった用紙を見せてもらう。


「働いている人数今は五人、肥料堆肥、放牧地には牛、と。雨は乾季で月1程度、雨季で週五以上と。あんまし変わらないけど、牛の量は土地が前のよりも小さいにしてもちょっと少ないか」


「はい、なので堆肥もあまり確保できず……多くの作物は取れず……」


 ちょっと失礼な質問にも答えてくれた。しかし、話を進めるごとに彼は落ち込んで行ってしまう。


「なあ、農具――鍬を見せてくれないか?」


「――かしこまりました。」


 農家さんが持ってきたのは木の棒に金属の曲がった板が付いた、いわゆる平鍬だ。耕しが弱いからそれ目的なら備中鍬がいいのだが……


「使っている鍬の形はこれだけか?」


「はい」


「わかった」


 肥料だけじゃない、一緒に農具も開発する必要がある。それも無償で配布だ。


 近くの家の窓の向こうに痩せ細った男の子がいるのが見えたがすぐに母と思わしき人物が死角へ隠した。その女性は腹部が膨らんでいた。


「一家でこの畑を?」


「はい、ですが末の子は幼い上に妻は身重でして……」


「……俺が家族全員満足に食べさせられるようにしてやるから。――もう行くぞお前ら」


 なぜサンドイッチやビーカーは教えられて農業は教えられていないんだ。それに転生者は俺の世界だけじゃないだろ、一体今まで何人の流れ含め転生者がこの世界へ来た?

 ……俺がその最初の人ってだけなのは納得できるけどさ。理不尽じゃないか、彼らが。俺らが砂糖菓子食ってる間に飢えている人達は数知れずいる。一刻も早く適した肥料を作り結果を出したい。今この世界では俺しか出来ないことだ。





 ――――そのまま特に何もなく領主の館へ行けた。


 ――その夜庭にて――


「次はスギタニ領だったか?」

「はい、護衛となってから家族と会えると思っていなかったので嬉しいです」

「上から二番目だったけな。そっちもよかったじゃん」


「はい。ところで今何をなされているんですか?」

「外の空気でも吸いながら星見てる。やっぱ俺のところとは星の位置が全然違う」

「ええ、そうでしょう」

「城いた頃には惑星のことも見せてもらったけど数が俺の世界とは違うみたいだし」

「そんなとこまで見ておられるのですか……タカハル様は天文がお好きで?」

「ああ、大好きだ。天文学以外もだけどな。小さい頃は空の向こう側、宇宙に行くのが夢だった」

「今では?」

「運動能力がなくて無理! 関わるとしても支援する側だな」

「……それはまるで能力があればそこへ行けるように聞こえるのですが……」


「俺の世界では何百人も行ったよ」


 ククク、めっちゃ驚いてやがる。そりゃそうだ、天動説地動説がウダウダ言いあってる時代に、宇宙行ったでー。とか言うみたいなもんだ。


「行ったとは言うものの、月くらいがギリギリだよ。でもな、この世界でも行けるようになるよ。俺がその科学の礎を築いてやるから」


「タカハル様、以前から気になっていたのですが科学とは、何でしょう」

「――科学っていうのは、世の中の現象、真理を解き明かすこと、そしてそれを応用することだ。それを職業、もしくは趣味にしているのが科学者だ。俺は世の中の全ては科学だと思っている、人の思考すら今まで起きていた事柄が要因となって出てきた結果だと思っている」


 そんな話をしているとサティエルが来た。


「失礼します。タカハル様、どうか誰かと二人きりになるのは避けてください。姫様はともかく、サルトロとなると……サルトロもわかっていたはずですよね?」

「はい、そうですがどうしても気になってしまって」

「全く、自分が護衛だとわかっているのですか?」

「もちろんわかっています。しかし、タカハル様といると戦地で兵士が戦っていることなんてこと忘れてしまいそうです」

「俺も実感はわかないな。だけど起きていることは事実だ、こんなの早く終わらせるべきだ。――サティエル、来てすぐで悪いけどもう寝るよ」


「はい、おやすみなさいませ」

「ああ、おやすみ」




「サルトロさん、タカハル様の好みとかわかりません?」


「完全に下心丸出しじゃないですか」

「仕方ないですよ。転生者様の護衛になった上、その方が若い男性なんですよ。妻にならなければ家族に顔向けできません」

「そうですか。――ああそうそう、タカハル様は一夫一妻の国出身だそうですよ」


「はい?」


「タカハル様が愛国者ならルビー様と一緒には難しいかもしれませんね」

「……タカハル様の好みは?」

「憶測ですが経験がないならタカハル様から言ってくるのは難しいのではないでしょうか? しかし自分から距離を詰めるのを私含め他護衛が許しませんよ」


「姫様相手に一体どうすれば……姫様と違い頭脳明晰をアピールすれば――」

「タカハル様相手に?」


「うう……ハッ、これか? 姫様と違いこの大きな――」

「一人でやっててください、私はもう戻ります。」




――翌朝――


「足止め?」


「はい、ブラックテシフコブラがご予定中の道に出現しまして……」


 館の使用人の男性が言った。


「何そいつ? 魔物?」

「はい、我が領のあるダンジョンに稀に現れる魔物です。巨大なのでダンジョンから出てくるところを早く発見できましたが、討伐するまでには準備が必要なほど簡単には倒せないので」

「問題ない、遭遇したら倒せばいい。予定通り行ける」

「姫様がいれば戦力的に問題ないですけど、タカハル様の安全第一ですし。――ふて腐れた顔しても無駄ですよ」


 コソコソとアゲートに話しかける。


「姫様がいればって言ってたけど実際ルビーってどれくらい強いの?」

「不意打ち除いたら三人の中で最強です。三人がかりでもギリギリですかね」

「最初から距離取れてればサティエルとサルトロは有利な気がするけど?」

「ものの数秒で距離詰められるし、なんなら大剣をえげつない速度で投げてきます」


「まじか……本当に国のお姫様?」

「まあ、母方に剣豪を多いツヴァイ家の血を引いていますし。その家に失礼ですが化け物揃いです。姫様のお母様も現役で戦場で暴れてます」


 ルビーが何歳かはわからないがお母さんは全盛期ではないことは確実だろう……血筋ってすごいんだなー。俺も人のこと言えないか、どっちかっていうと教育方面だったな。ルビーはもしかしたらスパルタ教育からの結果なのかもな。


「――さて、それじゃあ一日空いちゃったけどどうしよか」

「焦る必要はございません、一日程度」

「それはわかるけど本当はサルトロが一番悔しいんじゃないのか?」

「確かに残念ですが護衛となってから家族に会えるということが思っても見なかったので」

「まあ、転生者は聞いた中だとほとんどがちょっとしたら戦場行っちゃうタイプだもんな」

「はい、タカハル様のようなのは珍しいです」

「ははは、実はビビってるだけだったり?」

「ご冗談を、タカハル様の行動はとても合理的です」


「でもなー、本当にどうしよ。一日ぼーっとしてるわけにはいかないだろ」

「では、ダンジョンに行っては見ませんか? 近くに手頃なダンジョンがあるそうですよ」

「姫様私の話聞いてましたか!?」

「何か文句あるの?」


 ルビーが威圧をかけているのがわかる。正直俺もちょっと怖いっす、相手が片手で頭蓋を握り潰せるんじゃないかっていう人だし。


「……っ! タ、タカハル様がご決断なさるんですからね?」

「もちろんわかってる」

「それで、何か目的とか面白い物とかあるの?」

「近くのダンジョンではコアが見る事が出来ます」


 これまたよくある異世界ファンタジーの設定出てきたな。


「コア?」

「ダンジョンがダンジョンと至らしめている要因です。これが破壊されれば物も魔物も生まなくなります。それらが霧散してしまわない秘密もそこにあると言われています」

「よし行こう」

「ぐっ……姫様にタカハル様を――」


 サティエルがボソボソと何か言っている。


「それで、それはこっからどれくらいのところにあるの?」

「馬車で半時間ほどです」


 こんな面白い物、戦争のせいかどうかは知らないが未だに研究が進んでいないとかだったな。この一日で研究し尽くしてやるぜ――――

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