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科学少年の異世界戦争  作者: 歯並び悪い人
戦争準備編
15/84

魔物遭遇

 空気が重い。まじでそういう空気感作るのなんとかしてくれませんか。とはいえ仲良くしろ、とか発言をできるほど俺はコミュニケーションをできるほど前世で他人と会話していない。マジで同年代の友達と呼べる人は片手で数え終わってしまうレベルなんだよ。無論女子なし。

 この空気をいつまで吸わなきゃならんのだ……

 そう考えていると馬車が止まった。


「どうした?」


「出ましたね」


 いや何が出たんだよ、主語を言えよ主語を。そう感じていると素早くルビーが出ていった。本当にどうした?


 窓から少し顔を出して見ると前方でルビーがあの大剣を振っているのと複数の首が飛んでいるのが見えた。その切られていた生物は緑の皮膚をして耳は人と比べて鋭く、みすぼらしい布を着て棍棒や錆び始めているナイフを持ってい()。それはまさしくゴブリンというイメージの生物だ。しかしその生物はそのまま首は地に落ち体はがくりと倒れた。


 日本でぬくぬくと育ってきた俺にとって結構衝撃的な場面なんですけど!? しかし他の人達は特に反応はない、これが普通なのか。ルビーは大剣を玉に戻し死体へと歩いていった。返り血は浴びていない。

 

「誰かナイフ」


「こちらでよろしいでしょうか?」


 サティエルが魔力からナイフを作って渡した。するとそのナイフでみぞおちのあたりを切り裂いていった。


「あれ何してんの?」


「魔石を取ろうとしています。ゴブリンから取れるものはこれくらいですし」


 サルトロが答えた。


「ゴブリンって言う名前なのな。」


 マジで昔一回異世界行って帰ってきた人いるだろ。


「ゴブリンの肉は不味いですし。」


 ルビーが言った。


「不味いって言われてるってことは昔食べようとした人がいたんだろうな、どの世界にもチャレンジャーはいるもんなんだな」


「昔……と言いますか、ねえ?」


 サティエルがルビーの方を向いて言った。


「ん? ……ルビー?」

「毒がなくて食べられそうなものはほとんど食べました」

「おう……なんで食べようと思ったの……?」

「もしかしたら美味しいのではないかと」

「普通思いませんよ、思ってもすぐ別の考えがはたらきますよ……」


 アゲートが言った。


「まあ、姫様ですし」


 サルトロが言った。大国のお姫様がそんなのでいいのか。ゴブリンの死体に近寄るとなんとも言えない嫌悪感を覚える匂いがした、体内の構造は哺乳類とほぼ同じだが心臓のすぐ近くに見慣れない大きさ数cmほどの紫色の宝石のような物があった。


「これが魔石か?」


「はい、ほとんどの魔物は体の中心、主に心臓のすぐそばに魔石があります。小さいながらも人にもありますよ」


 サティエルがそばに寄って答えた。


「え? 人にもあるの?」

「はい」

「……えええええー!!!??? なんかいつの間に俺の体の構造変わってるんだけど!!!???」

「えっと、魔覚があるならおそらくは」


 あの女神、人の身体をなんだと思ってやがる……よくよく考えたら服持ってけてポケットの中身持ってこれないのもおかしいし元の世界に体は置いてきたはずだ。

 おそらくは魔石が魔法もしくは魔覚のもと、あるいはその両方だろう。


「あれ、それならリーマンさんリッチ化される必要なかったんじゃない?」


 杖を見て言う。


「おそらく目的はリッチとしての戦闘力でしょうし、そして人が魔物になると魔石は成長して人のとは全く異なるものになります」


 サルトロが魔力障壁で魔石を取り終わった死体道端に転がしながら答えた。


「全部質が悪い」


「まあ倒したのなら魔石を取っておかないと面倒ですし」


 サティエルが言った。


「理由は?」


「魔石を獣が食べてしまうと魔物化してしまいますし、魔物が魔石を食べると凶暴性が強くなってしまいます。土に還っても周りの植物が魔物化してしまうことがあります。また、そのまま放置されていたらアンデットなどにもなってしまうことがございます」


「アンデット?」

「死体が動き出し全ての動物に敵対的な行動をとるようになってしまった魔物の総称です」


 本当にファンタジーだな。人が魔物化されるのは魔石食わされてるのかね。そんなことを考えると死体を処理し終えられていた。


「ちゃんと手を洗ってくださいよ」


 サティエルが水の玉をを差し出しながら言った。するとルビーはその水に手を入れると、水が回り始めた。

 洗い終わって馬車に乗り込み、馬が走り出す。

 走り始めてからサティエルが言った。


「次に遭遇した時はタカハル様に戦ってもらうのはどうでしょう」


「……やっぱり必要、か」


 魔物で訓練しておこうっていうわけだな。できることが終わったら俺は戦地に出た方がいいがあると思っている。一年後か二年後か、はたまた十年後か。今まで直接殺めたことがあるのは魚、カエル、後はネズミも一回あったか、あとは虫くらい。


「無理はなさらないでください」


 サルトロが言った。


「……必要だろうしな。やってみるけど精神的にきつくなったら無理はしないよ」


 ――それからおよそ一時間半程度、そいつらは現れた。


「出ましたよ」


 アゲートが言った。馬車から降りて敵を見据える。先ほどと同じゴブリンが三体、距離は10m程先。イメージトレーニングはしていた。人型のゴブリンに場合はこれだ。

 すぐ終わる、ただの作業だ、躊躇なんてしなくていい。魔力を飛ばしゴブリンの首の周りに纏わせる。魔覚で感知したのか焦り始めるがもう遅い。ほんのコンマ数秒作業が止まるが、その魔力をカーボンナノチューブのロープ状にし巻き結びと呼ばれる簡単かつ強力な結び方で絞め、10m程を一秒程度で道端上空に飛ばす。おそらく即死だろう、ゆっくり下ろすとゴブリンは白目を向いている。


「おめでとうございます」


 サティエルの声が聞こえた。生き物を絞殺した魔覚が記憶に刻みつけられる。視線が亡骸を向いたままぼーっとする。俺がやったのだ……三つの命の未来を俺が消した。たった数秒で。


「……タカハル様、奴らは我々に敵意を向けていました。戦闘を回避していても誰かに被害が出るでしょう」


 サルトロの声で意識が引き戻された。


「あ、ああ」


 気付いたらルビーが剥ぎ取り終えていた。

 馬車へ戻る。全員が馬車へ乗り、馬車が動き始める。

これを繰り返すのか……この感情に慣れるのだろうか、慣れてしまってもいいのだろうか。これはどこまで考えたら結論が出るのだろうか。これは倫理観の問題で答えが無いことはわかっている、だが納得できる答えが欲しい、考えることを終えられる方法が欲しい。


「あまり思いつめないでください、自分の心を傷つけてしまいます」


サティエルが言った。


「うん、そうだな……」


 よく考えろ、俺の親戚なんか学生時代で微生物を一日に何億匹を高熱で葬ったとか言ってた? 母さんは今まで何匹のマウスを遺伝子をいじくった?

 それに比べて俺は駆除の必要がある生物をたった三匹? 母さんに鼻で笑われるぞ。


 だがこの考え方は人では通用しない……すぐには考える必要のないことだが……

 片手で頭を抱えてしまう。

 そもそもなんでそんなことしなければいけないんだ。あそこで飛び出したから? 飛び出した後最善の行動をとれなかったから?

 ……学校で少ない友達とワイワイやって、好きなのも嫌いなのも勉強して、家で親の聞き飽きた愚痴も自慢話も聞いて、父さんと母さんで笑ってる変わらない日々が楽しかった。あの時に戻りたいよ……



 ――考えが飛躍しすぎだ。慣れないことしたせいで精神状態が結構やばいな。くっそ、どうすればいい……前世のストレス解消とはわけが違うぞ。考えろ、いっそ精神なんか取っ払ってロボットみたいに過ごしていくか? そんな簡単にできないだろ。

 本当にどうすればいいんだよ――

 誰か助けてよ……




 ――腕に温かさを感じた。見ると隣のルビーが手を当てている。


「辛かったら頼ってください、できることならなんでもします。タカハル様は知らない場所に来て、その上たくさん頑張ってきました。私たちに文句も言わず私たちのために。

 ですが抱え込みすぎても疲れてしまいます。私はタカハル様がどう生きてきたかわかりません、どう感じてきたのかはタカハル様だけしかわかりません。……ですがあなた様の苦しみを私たちに投げかけてください、どうか一人で苦しまないで」


 …………たった数十日の抑えていた感情が表に出始める。


「…………世界をよく知らないで平穏に育てられてきたガキが急にその生活から離れて、戦争なんか感じたことをない奴が戦争してる国に連れられて。まともに生き物を殺めたことがない奴がだよ。それでも、できることがやってきたよ、助かった、そのまま消えていくところを拾ってもらった命だから」


 ――本当に俺はできることをやったのか?

 本当はもっと合理的な方法がある。それは俺は魔法を使えば、使わなくてすら可能なはずだ。俺は合理性でなく感情を優先した愚か者だ。



 ルビーは変わらず俺の腕を支えていてくれる。


「はい、とても強く優しい選択をなさりました」



 ――ルビーみたいな人達がこの世界にいる。戦争で傷ついた、幸せを奪われた人がいる。それを終わらせようと両国の多くの人がこの問題と戦ってきた。しかしそれは全て失敗だった。俺にはそれを終わらせることができるはずだ、この知恵で。俺にしかできないことだ。

 だからと言って残虐なことはしない。


 ――非合理的――


 ――俺は人間だ。感情で動かしてもらう、戦争に勝った後の話とか御託並べてもいいが結局は感情だ。向こうにもルビーみたいに優しい人がいるんだ。そんな人、その周りの人を残虐科学兵器で俺つえー? そいつはバカで愚か者だ、俺は違うだろ。科学の未来は俺が決めるんだ。


「――ありがとうな、ルビー。それに他のみんなも」


 ルビーは微笑んでくれた。その眼差しがすごいありがたかった。


「タカハル様、こちらを」


 サティエルがハンカチを差し出していた。気付くと雫が頬をつたっていた。そのハンカチを受け取り顔の半分以上を隠す。

 泣いたのなんていつ以来だろうか、もう十年以上は記憶にない。

 本当に恥ずかしい、穴があったら入りたい。

 でも、本当に気持ちに整理がついた。


 ありがとう。


 ちゃんと声に出たかは定かではない。

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