ダイヤモンドでウハウハ?
計画を立ててから一週間経った。なぜこんなにも時間がかかったのかというと、転生者が外出するのは結構色々と手続き(?)が必要だからだ。他国に知られちゃいけないもんな。
あと王様に相談してお金は稼ぐから工場を作りたいと相談したのもあった。肝心のお金の稼ぎ方の方は冷や汗かきながら聞いてたな。
「ここら辺ですね」
馬車の馬を引いているアゲートが言った。
「街から結構離れたな。4、5kmってとこか」
「事故ったらやばい、と伺ったもので」
「ああ、そうだ。油断したら本当にやばい。だからこんな平原を選んだ。本当は荒野とかが良かったけど王都周辺にあるわけないしな」
「あはは、大失敗は勘弁してくださいよ」
「気をつけるがどうなるかはわからん」
「……それで何をなさるんですか?」
サティエルが言った。
「ああ、お前達には言ってなかったな。ほい」
そう言って袋を取り出し、中身を見せた。
「これは……一体なんございますか?」
サルトロが言った。
「こいつは黒鉛、石墨なんて呼ばれ方もするな。んで、そいつを砕いて不純物を可能な限り取り除いた物」
「それで一体何を?」
ルビーが言った。
「こいつからダイヤモンドを作る!」
「「「「!?」」」」
「そんなに驚いてもらえると嬉しいものがあるな。作り方は単純、こいつを高音高圧下に置くだけ」
「高圧とは一体なんでしょうか?」
サティエルが聞いた。
「んーとな、誰か高い山とか登って空気が薄いって感じたことないか?」
「あります」
「自分もあります。騎士団の訓練でそんな経験しました」
近接組はあると。高所での訓練ってこの頃からあったのか。それとも転生者が教えたか?
「それじゃあ逆にいつも高い所にいた人が山を降りたらどう感じると思う?」
「……空気が濃く感じるのですか?」
サティエルが言った。
「正解、高圧っていうのはその濃さがとんでもなく強い状態だ。生き物が入ったら間違いなく空気に押しつぶされて死ぬだろうな。んで、事故ったらやばいっていうのは、この状態の空間に普通の圧をつなげたらどうなると思う?」
魔法組は考えているようで、ルビーは三秒ほど考えてやめたようだ、もうちょい頑張ろうぜ……
アゲートは……聞かれてすぐ魔法組の方を向いていた。
……ヒントが必要かな。
「そうだな、こんな時に兵士の例えだ。今回は色んな兵士が様々な陣形を組んだが外からの力でぎゅうぎゅうに詰まっている状態だ。その力を急に無くすとどうなる?」
「「「一気に広がる(のですね)!」」」
「正解。じゃ、空気に置き換えると?」
「ものすごい突風が……?」
サティエルが言った。
「そういうことだ。合成ダイヤモンドを作るには5GPa必要だ」
「ギガパスカル……とはなんでしょうか?」
サルトロが聞いた。
「パスカルは気圧の単位、ギガはかける一億倍ってこと」
「今なんかとんでもない数字言いませんでした……?」
「安心しろアゲート、普通がおおよそ1000hPaだから五千倍だ」
「おお、なんだか現実味を帯びてきました」
「姫さま騙されないで!」
「騙してなんかねーよ、サティエル。たったの五千倍だ。カーボンナノチューブなら耐えてやれるぜ。
でも一応馬達からは離れようか」
もしもの時わけも分からずかわいそうだ。
「では結界を張っておきましょうか」
「アゲート、結界ってなんだ?」
「魔力障壁と同じです。魔道具によっての物を結界と言います」
そんな違いはないようだ。
……100mほど歩いてきた。
「さて、やるぞ。サティエル、サルトロ、合図したらすぐに魔力障壁を張れ。準備しておけよ。ルビーとアゲートも、もしもの時は防御態勢を取れ。マジで危険だからな」
「「「「はい!」」」」
「と、その前に」
ガラスタイプの魔力障壁で箱を作り、そこに黒煙を入れて蓋をしてから八割くらいの黒煙をドーム状の魔法障壁で囲んで分ける。風魔法で弱い気流を作りながら覚えたての火魔法で残り二割の黒煙を燃焼させる。
「何をしているのですか?」
サティエルが聞いた。
「この中の酸素を抜いてる。酸素がある状態で高温に置くとカーボンナノチューブが燃えちゃうんだよ。って、酸素ってわからないよな」
「はい……」
「物を燃やす素だ。こいつがないと物は燃えない。とりあえずでそう覚えといてくれ」
「そうだったのですね」
「さて、大体の酸素は無くなっただろう。こっからだ!」
ドーム状の魔力障壁を消してガラスタイプの魔力障壁からカーボンナノチューブタイプの魔力障壁に置き換える。
今回は念の為いつもの五倍ほど分厚くする。
ここからこの箱の中の気圧を上げていく。とんでもないエネルギーが必要になるはずだ。手を貸してくれリーマンさん!
魔力障壁は自分の魔力を通す性質を利用して中で気体を作る。作る気体は窒素だ、元々空気に多く入っているのだから入れても問題ないはずだ。これがだめなら窒素を抜いて別の物を入れる必要がある。
――どれくらい入れた? 黒鉛は同じ場所に固まりっている。……100MPaくらいいったんじゃないか?
気圧を測れる魔法を作っておけばよかったと後悔する。
……窒素を魔力に戻さないようにするのがきつくなってきた。だがカーボンナノチューブのおかげか気圧を押さえるのはまだ問題ない。
……もうそろそろ押さえることもきつくなってきた。
魔力が今までにないくらいごっそり持っていかれるのがわかる。……だが俺は転生初日からトップレベルの魔力の持ち主だ! ダイヤモンドくらい黒鉛から作れないわけがない。
黒鉛が光り出してきた。熱持ちすぎて光り出したのか? いいぞ、このままいけ!
一瞬体がぐらついた気がした。その時見えた! 光が分離して何色もの光が見えた。日光が屈折してできたものに違いない。……もう少しやるか……?
……限界が近い、やめておこう。
魔力からできた窒素をちょっとずつ抜いていく。気を抜くなよ俺……!
もうそろそろ半分だ……意識が一瞬散漫になった。
「あ」
箱の一つの角が歪み始めた。
「魔力障壁! すぐ!」
二人が前に出た途端、俺は後ろに倒れそうになったが誰かが押さえて腰を下ろしてくれた。サティエルとサルトロが前の二人のはずだからルビーかアゲートのどちらかだろう。目の前に二つの魔力障壁を魔覚が捉え、そのまま意識が落ちた。
――――――
「あ」
タカハル様がそんな不穏な声を出した瞬間、自分の肩ほどまである長さの杖を握りしめた。
「魔力障壁!すぐ!」
「「〈魔力障壁〉!」」
サルトロさんと口を揃えて言った。訓練は死ぬほど行いましたから連携は抜群です!
魔覚がタカハル様の箱が歪んだのを捉えた。
そのままタカハル様は後ろへ倒れてしまった。だけどタカハル様のことは後ろの二人に任せる。
「今度は手を抜かないでくださいよ……!」
「手を抜いたことなんかないですよ!」
大丈夫……我々は転生者様の護衛、エリート中のエリートだ。護れるはずだ……
本当にできるのか?あのタカハル様の魔法から?攻撃目的でない、二人だから……冷や汗が出てくるのを感じる。
「〈玉大剣の守護〉」
ルビー様が大剣を私たちの前に突き刺しその剣を媒介とした魔法を使った。
「〈火竜の鱗〉!」
アゲートはタカハル様を抱えながら地面にロングソードを突き刺し私たちの前に魔法を出した。
これなら大丈夫なはず……!
すぐあの箱が破れるのを感じ取った。
爆音が私たちを襲う。衝撃が私の魔力障壁を叩きつけるのを感じる。
……たった数秒で終わったがそれは長い時間起きていたように感じた。
一安心するがすぐに確認しなければいけないことに気がついた。
「タカハル様は!?」
「大丈夫です。魔力切れですね」
「よかった。とりあえず馬車まで戻って寝かせましょう。
……って姫様、どこへいくのですか? 馬車はそっちじゃありませんよ」
「わかってる、こっちに飛んだのが見えた。」
「見えたって一体……」
「! あった、これ……熱っ!」
ルビー様は地面の何かを触ったようだ。
「!……これは」
サルトロも確認したようだ。……ってこれは!
「流石タカハル様というか、表現の仕方がわかりませんね」
――――――
馬車の天井が見える……頭が重い、頭だけじゃなくて体全体も重い。
「あ! タカハル様!」
ルビーの声が聞こえた。頑張って頭を横に向けると心配そうに顔を覗いていた。
「大丈夫ですか……?」
「ああ、体がすごいだるいけど大丈夫だ。魔力切れってやつか」
「はい、おそらくは。あまり無理はなさらずに」
「うん……他の人達は?」
「外にいます。アゲートは馬の世話をしてて」
「あー、驚かせちゃったな。悪いことしちゃったか」
「いえ、えっと……そんなことないと思います」
微笑みを返しながら体を起こす。
「無理なさらずに……」
「そんな無理してないよ。それにもう夕方だろ? 俺がいつまでも寝っ転がってたら帰れないし」
「膝枕とか……」
「え? なんて言った?」
「いえ! なんでもございません!」
「あ、そう」
そんなに重要なことじゃないなら聞き出す必要はない。
「三人を呼んでくれ、帰ろう」
「かしこまりました」
ルビーが外へ出て行った。とにかく体がだるい、体調悪い時に徹夜したみたいだ、そんなことしたことないけど。
壁に寄りかかって窓を見ると視線の先にクレーターのような穴がある。
絶対俺のだよな、本当にみんなには悪いことした。
「タカハル様、大丈夫でしょうか?」
サティエルが入ってすぐ話してきた。
「ああ、倦怠感はあるけど大丈夫だ。本当に悪かったな、ちゃんとした安全もない実験して、実際爆発起こした上に倒れちゃって」
「気になさらないでください。タカハル様の護衛になったからには危険は承知です。それよりも……」
サティエルの視線はサルトロの方を向いている。一体なんだろうか?
「タカハル様、こちらを」
サルトロは手のひらを見せてきた。そこにあったのは豆粒程の小さな、だけど確かに光り輝く宝石があった。
「……! ダイヤモンドじゃないか! 成功してたのか!」
小さいし形は歪だ。だがダイヤモンドを黒鉛から生成出来たことに変わりはない。
「タカハル様の力の賜物です。倒れてまで作り上げたのです、どうかお受け取りください」
それを受け取りまじまじと見つめる。そしてそれを拳に入れ感動を噛みしめる。
「ありがとう……」
とても嬉しかった。ダイヤモンドを手に入れたからではない、ダイヤモンドを作れたからだ。たったこれだけ、質も悪いだろう。
ただ、倒れてまで作ってダイヤモンドはできないと思ったからだ。これがあっさり作れていたらまた違っただろう。これからどれだけ失敗するかわからない、魔法は事故を起こしやすい。取り返しのつかない事も起こるかもしれない。
しかしそんな危険度じゃ俺は止まらない。前の世界でも何度事故になりかけたことか、実際事故になったこともあったな。
好奇心は猫を殺すというが俺はそんな簡単に死んでしまう猫じゃない……!
ご閲覧ありがとうございました。
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星1評価、辛辣、一言コメントでも構いません。
作品に関係あることならなんでも構いません。今までコメントが一度もなく、読者様にどう思われているか心配です。
面白くないなら面白くないとだけでも構いません。




