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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ファンタジー寄せ集め

自ら死地へ体を投げ込んでいくスタイル

作者: アロエ




キラキラとした眩い光が収まればそこにいたのは黒い髪、薄紫の肌の年若い妖艶な女性。



突然呼び出された事に多少なりとも困惑や驚きがあるのか目をパチパチと瞬いてから首を横に振り周囲を確認している様子は、少し可愛らしいようにも思えたが。



「何だ、この気味の悪い女は。私はこんなものを嫁になどしないぞ!もう一度召喚をやり直せ!!」



召喚に立ち会っていた王太子は不満であったようで、何かとても汚らわしいものを見るような目で彼女を見、そしていつものように癇癪を起こした。


指差され、言葉を投げつけられた召喚されたばかりの異世界の花嫁もあまりの事にその美しい表情を歪め、眉間に皺がよる。そして尚、喚き続ける王太子に埒があかないとその女性を魔法陣より引きずりだし、城から追い出そうと兵が動いた次の瞬間。大地が揺れた。


ゴォン、ズドォン、バキバキバキと腹に響く鈍い音に、何かが軋み割れた音。ふと気付けば上から光が差していた。我々は地下にいたはずだ。なのにこの暖かで眩いばかりの光は、紛れもない太陽光。


理解しようとする前に女性が太陽光の差す向こう側へと顔を向け、安堵したかのような表情で息を吐き、声をかけた。


お父様、と。


その鈴が鳴るような声に答えるよう、ぬぅっと大きな手が女へと伸ばされれば女は躊躇う事なくその手に歩みよりひょいと腰をかけてみせた。


その手の主は30メートルはあろうかという巨体に、薄紫の肌をした鬼のような形相をした何か。いや、何かと表現するのはおかしいのかもしれない。それは召喚された女性と同じような特徴を持った男だった。


巨体な男は女性を乗せた手を己の顔に近づけると大事ないかと彼女にそっと問いかけた。そっと、というのはその心配そうな表情や様子からそういう表現をしたが、彼の声は大気を、地を、そして我々、矮小な人間たちの体を震わせるほどのものだった。


しかしそれを間近で受けていたはずの彼女はええ、何も体に影響や後遺症などといったものなどは現れていませんわ、と軽く答えてみせるとクスクスと楽しげに、そして嬉しそうに笑って父親らしき彼を心配性なんだからと笑った。


そんなやりとりを暫し続けた彼らだったが、ギロリと視線をこちらへと再びやると先程の空気とは打って変わって底冷えするような声と雰囲気でもって我らに対峙した。



『我は破壊の神であるディリトーク。貴様ら、我が娘ディネマティラを拐そうとするとは……。そんなにも星を滅ぼされたいか』



その怒りに充ち満ちた声を聞いた者、彼女の召喚に携わった者、とりわけ王太子と王族の反応は凄まじかった。


その場に倒れ、或いは伏し、許しを乞う。そのような事をするつもりではなかったと言い訳を連ねる。意味のわからない言葉を連ねては泣き出したり、失禁や脱糞までする者など見るに堪えた。


結局、破壊の神と娘が呆れ果てた様子で彼らを無知故の哀れな所業と断じたのみで世界を渡る旅費を負担するだけで事は怒りを収められた。


だが甘いということなかれ。神の望みというだけあってそれは一国どころか数ヵ国をも巻き込むような額の金銀財宝の山であり、それを漸くかき集めた時には国は様々な国からの顰蹙を受けて疲弊しきっていた。


神々はそれらが揃うまで、慌て駆けつけたこの世界の神に持てなされ有意義とまではいかずともそれなりに過ごし特に娘の方は父の目の届く範囲を物珍しそうに観光し、民、貴族の垣根無く人々に声をかけて回っては親しい友を作り、またその人となりで信者を成していった。


別れの時はそんな明るく誰にでも親しげな彼女と彼らの別れを惜しむやり取りもあったが、彼女の父は最後まで頑なに今回の騒動の引き金となった者達を許しはせず様々な者どもを()めつけ、次は容赦はないとそう口にして帰還を果たした。


異世界の神々をも巻き込んだ騒動にこの世界を管理する神も己の恥を意図せず見せてしまった形となり、大変取り乱し嘆き、凡そ数百年、彼女は一切の交流を断ち引きこもり世界の情勢も荒れに荒れ。


召喚は危険が及ぶ恐ろしいもの、との新たなる意識が世界に浸透していくのも当たり前の流れに。




王太子?ああ、それは当然、後継から外され王家から名を削られ処刑となりました。王族の名を背負って死ぬ責すら認められないと遡って生まれ等を抹消されたので彼の死後は彼を記憶に残したものしか彼の存在を留められず段々と忘れられましたとさ。


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