夢
突然ですが……
僕って現在は会社員なのですね。
三年前、会社からフランス転勤の辞令が降りました。
ずっと、僕が目標、夢にしていたフランス支部への転勤。
だけれど、僕には、『命よりも大事な彼女が、日本にいるから行かない』という結論をだしました。
そう、それは即決だった。考えるまでもなかった。
彼女は僕にとって、かけがいの無い人なのだから……
けれど、彼女に、転勤の話をしたところ、
『自分の夢を大切にしなよ、私待ってるから、ずっと待っているから』と。
……僕は、彼女の信頼、優しさ、強さに心を打たれ、感銘し、フランス行きを決めたんだ。
そして、彼女の言葉を胸にフランスに旅立った。
――それで、今。
フラッと日本に帰ってきて……
仲間から、
『どうしたんだよいきなり?』
『いや皆を驚かせようかと思ったんだよ。』
『なんだよー!連絡しろよな!』
……的なやりとりがあった後に彼女に会いに行ったんだ。
『な、なんで……?』
いきなり目の前に現れた僕に、彼女の目は、みるみるうちに潤んでいく……
彼女と運命的な再会で、熱い抱擁をかわす。
耳元で彼女から『何しに日本へ?』って、聞かれたから、こう答えたんだ……
「忘れ物を取りに」
って、彼女の手を握ってニッコリ微笑む。
潤んでいた彼女の目から、大粒の涙が次々と流れ出す。
――って言うのやりたい。(なげえよ)
あ。
彼女いなかった。(おい)