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第36話『水着姿の乙女達』

 別荘とプライベートビーチの間に、シャワー室と更衣室があり僕と羽村はそこで水着に着替えることにした。女性のみなさんは大浴場のところにある脱衣所で水着を着替えることになっている。


「いやぁ、天気が崩れる心配もなさそうで良かったよな、蓮見」

「ああ。明日香や咲希達も新しい水着を買うほどだったから、本当にいい天気になって良かったよ」

「そうだな。この夏が過ぎたら、今回のメンバーで行くことは難しくなりそうだし。個人的には陽乃との初旅行だけど」

「三宅さんとは今回が初めてなんだ。生徒会の合宿とかがあるんだと思ってた」

「それがなかったんだなぁ。ただ、女子メンバー3人で、春休みやゴールデンウィークに1泊2日の旅行に行ったそうだ」

「へえ……」


 女子だけなら気兼ねなく旅行にも行けるか。三宅さんにとって、今回の旅行は年上が多いけど、明日香や咲希達とは気兼ねなく話しているようだし、何よりも恋人である羽村が一緒だ。車の中やお昼ご飯のときも楽しそうだった。


「三宅さんとの初旅行、楽しいものになるといいな」

「ああ。この旅行を機に、彼女との仲を更に深めていきたいと思っているよ」

「そうか。応援しているよ。僕にできることがあったら協力する」

「ありがとう、蓮見。ただ……お前にとってもこの旅行が有意義なものになるといいな」

「……そうだな」


 きっと、明日香と咲希のことを言っているんだろうな。明日香は咲希のように公開告白したわけじゃないけれど、彼女の抱く僕への好意は羽村も分かっていると思う。きっと、他の旅行メンバーも。


「それよりも、蓮見。俺、凄く考えていることがあるんだ」

「うん? どんなことだ?」

「陽乃の買った水着がどんなものなのか気になっているんだよ! 新しい水着を買いました。楽しみにしていてくださいね……って、昨日の夜に彼女からメッセージが来たんだよ。考えたらドキドキしてあまり眠れなかった……」


 羽村も眠れなかったメンバーの1人だったのか。車の中でも三宅さんを中心に楽しく話していた感じだったし、眠たそうには見えなかったな。


「僕も芽依とかに新しい水着を買ったとは言われたけど、どんなものなのかは海でのお楽しみって感じだったよ」

「蓮見もそうか。いや、朝霧や常盤、芽依ちゃんの水着姿は見たこともあるから、女性の水着姿を見ること自体は緊張しないけど、やはりそれが陽乃となると別だ。凄く緊張している。事前にどんな水着なのか分かっていれば、妄想して緊張を和らげられるのだが……」


 妄想できるんだ、水着姿を。

 それはともかく、緊張してしまう羽村の気持ちは分かる気がする。僕も水着姿の明日香や咲希ともうすぐ会うと思うとちょっと緊張してる。


「恋人は……特別だよな。さあ、浜辺に行って三宅さん達のことを待とう」

「あ、ああ! 俺は……覚悟を決めたぞ! 水着姿の陽乃と向き合おうではないか! さあ、浜辺へといざ行かんっ!」


 凄く気合いが入っているな、羽村。覚悟を決めるほどのことではない気はするけれど……こういうことでも覚悟を決める彼はかっこいい男だと思う。

 飲み物やタオルなどを持って、常盤家のプライベートビーチに行くとさすがに女性陣の姿はなかった。

 月影さんが用意してくれたのか、サマーベッドが人数分あり、ビーチパラソルで日陰が作られている。毎年、ここまでしていただいて有り難く思う。


「今年もこの海はとても綺麗だな」

「うん、今年の夏も旅行に来たんだなって思うよ」


 しかも、今年は9人。女性が3人から7人に増えたとは。咲希が修学旅行みたいって言っていたのも分かる気がする。

 浜辺で軽くストレッチをしていると、


「翼! 羽村君!」

「宗久会長! 蓮見先輩! お待たせしました!」


 背後から咲希と三宅さんの声が聞こえてきた。隣でストレッチをしている羽村は顔を赤くして固まってしまっているぞ。

 後ろに振り返ると、水着姿の咲希と三宅さんがこちらに向かって歩いてきていた。咲希は緑色の紐ビキニで、三宅さんは水色のスカラップビキニか。前に明日香や芽依に水着を買うのに付き合わされたので、水着の種類は一通り知っている。


「咲希も三宅さんもよく似合ってるね」

「ありがとう、翼」

「ありがとうございます、先輩」


 咲希、これまでに何度も明日香や鈴音さんの胸を羨ましそうに見ていたけど、咲希だって普通に胸があるじゃないか。芽依に比べれば立派ではなかろうか。あと、これまで水泳部で、今もランニングをしているからか体のラインがとても綺麗だ。


「へえ、意外と翼って胸を凝視するタイプなんだ」

「咲希に言われたくないよ。でも……スタイルもいいし大人になったんだなって思うよ。綺麗になったね」

「……あ、ありがと」


 咲希は照れくさそうに笑った。普段は爽やかでかっこいい印象もあるのに、こういったときの可愛らしさも素敵だ。


「宗久会長、こっち……向いてくださいよ。会長に見てほしくて、新しい水着を買ったんですし」

「水着姿の三宅さんと向き合うって言っていたじゃないか。三宅さん、とても可愛いよ。……そうだ。三宅さん、羽村はメガネを外しているからすぐ側に立ってあげて」

「……ふふっ、そうですね」


 すると、三宅さんは羽村のすぐ後ろに立つ。


「……よし、じゃあカウントダウンするぞ! 3、2、1……ゼロ!」


 勇気を振り絞ったのか、羽村は勢いよく三宅さんのいる方に振り返る。すると、目の前に立っていたことに驚いたのか目を見開いた。


「は、陽乃……」

「……昨日、みんなと一緒に買った水着です。どう……ですか?」

「も、物凄く似合っているぞ。とても可愛らしい。こういった陽乃の姿を初めて見るからか、ドキドキしてしまうな」

「そ、そうですか。でも、私にとって……最高の褒め言葉です。この水着を買って良かったと思います。会長もかっこいいです」

「そうか。……陽乃!」


 羽村は三宅さんのことをぎゅっと抱きしめる。一瞬、驚いた様子を見せたけれど、すぐに三宅さんも羽村のことを抱きしめて……あぁ、より暑くなってきたな。


「さすがは生徒会カップル。さっそく抱きしめ合っちゃって。お熱いね」


 常盤さんはデジカメで2人のことを撮影する。一緒に来た明日香の水着姿も写真を撮っている。思い出をたくさん作りたいのかな。ちなみに、常盤さんは黒色のホルタービキニ。過去2年よりもセクシーさが増しているような。


「ここはプライベートだし、みんなカップルだって分かっているからね、みなみん。お、お待たせ、つーちゃん。昨日買った水着だけど……似合っているかな」

「凄く似合っているよ」

「……ありがとう」


 明日香は頬を赤らめながらも嬉しそうな笑みを浮かべる。

 明日香の水着は桃色の三角ビキニ。正統派だ。優しい桃色を選ぶのも明日香らしい。彼女の持つ体が織りなす技なのか、普通に立っていても立派な谷間が。意識をしているからか、咲希と明日香についてはどうしても色々なところを見てしまう。


「つーちゃんは今年もかっこいいね。一番かっこいいと思う」

「かっこいいよね、明日香」

「そうだね、さっちゃん。爽やかだけれど落ち着いている感じもして大人っぽい」

「……ありがとう」


 僕も実は昨日、この青い水着をバイトで貯めたお金で買った。去年までは黒色だったんだけれど、新しい水着もいいかなと思って。明日香と咲希に似合っていると言われて正直とても嬉しい。


「うわあっ、綺麗な海! これがプライベートビーチなんだ!」

「凄いですよね、鈴音さん。今年で3年目ですけど、毎年そう思います」

「こんな素敵なところに芽依ちゃん達は何度も来ていたんだね。いやぁ、久しぶりの水着だれど、開放的になれていいな」


 鈴音さん、芽依、松雪先生の姿も見えた。鈴音さんは赤色のクロスホルタービキニ。芽依はオレンジ色のフリル付ビキニ。松雪先生は黒色のパレオ付ビキニか。

 鈴音さんはあのときに分かっていたけれど胸が凄い。松雪先生もスタイルが良くて大人の色気が感じられる。芽依は……さすがは我が妹、可愛すぎる。ここがプライベートビーチで本当に良かった。


「まさか、蓮見君からこんなに熱い眼差しを送られるとは。この水着を買って正解だ」

「新しく買ったんですね。似合っていますよ。大人の女性って感じがします」

「……昔、彼氏に言われたときよりも嬉しいな」


 言葉通りに嬉しそうに笑う松雪先生。学校ではあまり見せない表情かな。きっと、昔の彼氏にも今みたいな姿を見せていただろうけど……彼の浮気が原因で別れたんだっけ。もったいない。


「ねえねえ、お兄ちゃん。鈴音さんや私の水着姿はどう?」

「2人とも可愛いですよ」

「良かったですね、鈴音さん」

「う、うん! こういう形のビキニは初めてだけど、思い切って買ってみて良かったよ」


 水着姿の鈴音さんを見ると、どうしても告白されたときのことを思い出してしまうな。鈴音さんも同じなのか、恥ずかしそうな様子を見せていた。


「さあ、全員揃ったところで海に向かって叫ぼう!」

「海だ! とかって叫ぶのか、羽村」

「その通り!」


 そんなこと、今まで一度もやったことがないじゃないか。行きの電車の車窓から、初めて海が見えたときに「海だね!」と言ったことはあったけども。


「いいじゃないですか、宗久会長!」

「羽村君の提案、先生もいいと思うよ。こんなに綺麗な海を見せられたら、何かを叫ばずにはいられない」

「じゃあ、一列に並んで海に向かって叫びましょうよ!」


 咲希のその言葉をきっかけに、僕達は海に向かう形で一列に並ぶ。両隣にはもちろん明日香と咲希がいて、2人とも僕の手を掴んだ。


「それでは、みなさんご一緒に。せーの!」

『海だー!』


 僕らの叫びは遥か彼方まで響き渡ったのであった。

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