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こまけぇこたぁいいんだよ!!  作者: 承り太郎
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参上!地獄からの使者

 軽トラックにはねられて異世界に転移したアルケミーは、ジラスの世界征服により飢餓と暴力が渦巻く世紀末と化した世界で戦い続けていた。


 エルオー大陸の南に位置する国、トロの砂漠地帯を一台のトラックが土煙を上げながら走る。


「今日も大漁!鮮度も抜群だ!」


 助手席の男が煙草をふかしながらご機嫌そうに言う。


「フフフ。これでしばらく食いっぱぐれることは無いね」


 運転席の女がそれに応える。


 トラックの狭い荷台には七歳から十七歳までの二十人の少女たちがすし詰めにされていた。

 この男女はさらった少女たちをジラスの兵士に売ってお金を稼いでいるのだ。日本円に換算すると三十万で売れる。顔立ちがよければ付加価値がついて五十万で売れることもある。売れなかった少女を病院に渡せば臓器提供料をもらえた。

 普通に働いて稼ぐよりずっと儲かる仕事。彼らに良心の呵責は無い。彼らもこの世紀末を生き抜くのに必死なのだ。


「おい。道端に誰か立ってるぜ」


「ヒッチハイクかね?」


 トラックを停止させ、運転席の窓を開ける。


「砂漠のど真ん中でどうしたんだい?よかったら乗せてあげよっか?」


「いや、いい。それよりも……」


 アルケミーがトラックの荷台を指差す。


「あの女の子たちをどうするつもりだ」


 アルケミーの語気に危険を感じ、女はトラックを急発進させる。


「貴様!兵士に売っているな!?」


 時速百二十キロで走るトラックを追いかける。


「逃がさん!」


 サイドミラーに写るアルケミーの姿が少しずつ大きくなる。


「こうなったら……」


 女が助手席のシートベルトと扉のロックを解除し、助手席の男を蹴り飛ばす。


「悪いね!捕まりたくないの!身代わりになって足止めしろよ!」


 走行中のトラックから放り出された男が砂漠を転がり、アルケミーに激突する。


 仲間を見捨てて逃げるとは。あの女。頭が切れるな。


 アルケミーはすぐに立ち上がり、倒れたままの男の胸ぐらを掴んで平手打ちで叩き起こす。


「あのトラックはどこへ向かった。答えろ」


「あ、あっち……」


 男は北を指差す。


「どこへと訊かれてあっちと答える奴があるか。俺が知りたいのは行き先だ。もう一度訊く。どこへ向かった」


「ゲイル……」


「ゲイル。トロの首都か」


 男の首を握り潰し、遺体を放り投げる。


「もう用は無い」


 北を目指してアルケミーは走り出し、加速から四秒で時速九十二キロに到達する。


 ここからゲイルまでは五千キロ以上。のんびり走っていては女の子たちが売られてしまう。ならば、あれを使うまで。


 更に鋭い前傾姿勢で走り出すと、空気との摩擦により全身が炎に包まれたアルケミーは低空飛行を開始する。


 ヴィルバス直伝。秘技炎人火蝶。


 火の蝶と化したアルケミーはマッハ七で砂漠を突き抜けた。


 一方、ここはトロの首都ゲイルの繁華街。

 宿屋の前に先程のトラックが停まっている。


「どうだい?みんな活きがいいだろう」


 運転手の女が得意気に言う。


「どいつもこいつもマジで可愛いな」


「ああーっ!早くヤりたい!」


 ジラスの下級兵士たちがにやける。


「んじゃ、このチビッ子は俺がもらう」


 首輪の鎖を引っ張り、下級兵士の一人が七歳の少女を抱き寄せる。少女は睨むがそれがますます兵士の劣情を掻き立てる。この兵士は反抗的な幼い子供が好きなのだ。


「前のは死にやがったが、お前はもってくれよ。ヒヒヒ」


 その時、少女は隠し持っていた木の枝を取り出した。


「い、一体何を!?」


 予期せぬ事態に慌てる兵士の目の前で、少女は枝の先端を突っ込んだ。


「う!」


 激痛が走り、破瓜の証がふくらはぎを伝い落ちる。


「このガキ!」


 激昂した兵士は少女の頭頂部を掴んで石の床に叩きつける。


「中古になりやがって!死ねえ!」


 ゴツいブーツで少女の頭を踏み砕く。


「あーあ。可愛い子だったのにもったいない」


 そう言いながら死体を拾い上げてトラックの荷台に投げる。


「さて、代金をいただこうか」


「払う金なんてねーよ!」


「そ、そんな……。今のは事故だよ。枝を隠していたなんて知らなかった」


「いい訳するな!お前の落ち度だろ!オラ!帰れ!」


 運転手の女を蹴り飛ばし、宿屋から締め出す。


「おい!代金だせ!食いっぱぐれちまうよ!頼むよ!おい!」


 何度も扉を叩くが返事は無い。


「やっと見つけたぞ」


 振り返るとアルケミーが立っていた。


「子供たちを売り渡したのか」


 死体だけが置かれた荷台を指差して問いかける。


「あ、ああ。そうさ。でも、ひどいんだよ!あいつら代金を踏み倒しやがったんだ!」


「それはひどいな」


「だろう?」


「だが、年端もいかぬ子供を親から引き離し、売り飛ばした貴様はもっとひどい」


 次の瞬間、女の胸にアルケミーの貫手が刺さる。アルケミーの指先が女の心臓に到達する。


 ヴィルバス直伝。秘技静電心滅。


 アルケミーに蓄電した静電気が指先でスパークして心臓を燃やし、女の口から黒煙が立ち上る。絶命した証だった。


 外道に安らかな死は無い。


 女の死体を道端に捨て、宿屋の扉を正拳突きで破壊する。


「だ、誰だ!あんた!?」


 宿屋の主人が怯える。


「主。女の子たちはどこだ」


「お、おっ、おっ、奥の宴会場に……」


「そうか」


 右手の人差し指から静電気を発射して主人の眉間を撃ち抜く。


 ヴィルバス直伝。秘技静電射。


 主人が倒れる音を気にせず廊下を進み、宴会場の引き戸を蹴り飛ばす。お楽しみ中だった兵士たちが一斉にアルケミーを見て目を丸くする


「誰だ!貴様!」


「アルケミー・フォーミュラ。お前たちにとっての……地獄からの使者!」


「ほざけ!」


「粋がってんじゃねーぞ!若造!」


「死ねえい!」


 ナイフを手に兵士たちが飛びかかり、アルケミーがそれら全てを両手で受け止める。


「お前たちの負けだ」


 ヴィルバス直伝。秘技静電通殺。


 次の瞬間、金属製のナイフを通して兵士たちが感電死する。黒焦げになった屍を蹴り飛ばし、少女たちに歩み寄る。


「君たち。もう大丈夫だ。さあ逃げよう」


 アルケミーは少女たちと共に宿屋を脱出、トラックで首都ゲイルを後にした。

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