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こまけぇこたぁいいんだよ!!  作者: 承り太郎
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壮絶!フェスタム死す

 軽トラックにはねられて異世界に転移したアルケミーは五人の仲間と出会い、同じ釜の飯を食べて絆を深めた。


 そして、異世界に転移してから半年が経過した。


「目標を中央に入れて押す!目標を中央に入れて押す!目標を中央に入れて押す!」


 今日もアルケミーは格納庫でシミュレータによる訓練に励んでいた。


「終わりか」


 リザルト画面に命中率七十五パーセントと表示される。


 五パーセントの壁は高いなあ。


「お疲れ様です。どうぞ」


 パフィがタオルを差し出す。


「ありがとう。パフィ」


 ふかふかのタオルで汗を拭く。


 こっちに来てから半年経つけど、隣の国とドンパチはやってない。何事も無いのはいいことだ。しかし、俺はいつになったら元の世界に戻れるのだろう。


 汗を拭きながらそんなことを考えていたその時、格納庫に警報音が鳴り響く。それは隣の国が武力行使を開始したことを意味していた。


 遂に来たか。この時が。


 アルケミーはこれまで生身でしか戦ったことがない。ロボットに乗ってカメラ越しに外を見て戦うのは未経験である。


「大丈夫ですよ」


 緊張で震えるアルケミーの手を優しく握る。


「私がバックアップしますから。安心してください」


 この子、天使だ。


「あ……。ありがとう。パフィ」


 笑顔に癒されたところで出撃準備に向かう。


「出力よし。カメラよし。燃料満タン。オールオッケー」


 ハイエッスを動かし、出撃カタパルトへと移動する。


「アルケミー・フォーミュラ!ハイエッス!行ってきまーす!」


 雲一つ無い青空にハイエッスが飛び立つ。


 慣性の法則で胃が圧されて苦しい。こんなことになるなら、お昼にラーメンを替え玉二杯も食べなきゃよかった。


 悶絶しながらも合流ポイントである森林地帯に無事着地する。


「アルケミー。到着したぜ」


「よし。全員揃ったな。敵は一機だけだ。囲い込んで集中砲火で叩く」


「了解!」


 リーダー機のゼオラを先頭に森林地帯を進む。


「敵機発見!」


 索敵に優れたストナンから通信が入る。


「あれが敵か」


 森林を抜けた先の砂漠に八本脚の巨大ロボットがたたずんでいる。胴体のみでアルケミーたちのロリックの二倍以上の大きさがある。


 よく見ると頭が三つ、いや四つある。ということは、複数のロリックを組み合わせて更に魔改造した変態メカってことか。


 変態メカがアルケミーたちに気づいたのか動き始める。それはまるで、四つん這いになった人間がゲジゲジ並みの速さで動いているようだった。


「あいつ、変態か!?」


「気持ち悪い……」


「これはひどい」


「リーダー。さっさと奴を退治するぞ。目が腐る」


「おう!作戦開始!」


 変態メカを囲むように散開する。


「ファイヤー!」


 フェスタムの声を合図に一斉射撃を開始する。


「馬鹿な!」


 変態メカはその巨体からは想像できない変態的なアクロバティックな動きと変態的なスピードで全ての弾丸を回避していた。


「クソ!動きが速すぎてオルガスタのオートロックが追いつかない!」


 マジか。射撃の鬼の異名を持つディランですら当てられないのか。これはヤバいぞ。


「リーダー!一旦撤退した方がよくないか!?」


「ダメだ!ここで退いたら進撃を許してしまう!何がなんでも奴を倒す!」


 リーダー機のゼオラが変態メカに向かって飛び立つ。


「俺が奴の動きを止める!」


 ゼオラはスライディング着地し、変態メカの真下に滑り込む。


「くたばれ!」


 真上に構えたマシンガンを発砲して底面に無数の穴を開ける。直後、変態メカが一切の動作を停止する。


「今だ!撃て!」


 その時、変態メカの底面に設置されていた機関銃が一斉に火を噴き、コックピットごとゼオラが破壊される。


「ああっ!」


「リ、リーダー!」


「リーダー!」


「よくもリーダーを!撃てーっ!」


 怒りの一斉射撃が炸裂し、変態メカは大爆発を起こした。


「リーダー!」


 ハイエッスで変態メカの残骸をどかし、ゼオラの救出を試みる。


「そんな……。リーダー……」


 ゼオラのコックピットにはフェスタムは居なかった。フェスタムだったものだけがそこにはあった。


「ううっ!ちくしょおおおおお!畜生……。畜生……」


 それから、ゼオラの残骸をできる限り回収してアルケミーたちはピープル城に帰還した。


 翌日、息子の訃報を受けたフェスタムの両親がピープル城にやって来た。遺体と対面することは叶わなかったが、フェスタムの毛髪と死亡時に身に付けていたリーダーバッジが残っていたのがせめてもの救いだったろうか。

 城を去る際、フェスタムの父親はアルケミーたちにこう言った。


「皆さんのような……素敵な仲間たちに囲まれて……息子も幸せだったと思います。今まで息子と仲よくしてくださり、ありがとうございました」


 素敵な仲間たちか。それは違うぞ親父さん。目の前で仲間を救えないなんて、ちっとも素敵な仲間じゃねえよ。


 フェスタムの両親との別れの挨拶を終えたアルケミーは格納庫を訪れた。


「フェスタム……」


 愛機ハイエッスの視線の先にはゼオラの残骸があった。


 あの時、無理にでも後退させればお前は死なずに済んだのかもしれない。お前が死んだのは俺のせいだ。だが、死んで償おうとは思わない。俺は生きる。生きて、生きて、お前の分まで生き抜いてみせる。


 決意を胸にシミュレータを起動させる。


 努力は一日にしてならず。鍛練あるのみだ。


 そこに仲間たちがやって来る。


「一人でやるよりみんなでやった方が訓練になるだろ」


「そうです。切磋琢磨すればみんなで強くなれますよ」


「ディラン、リロード……」


「うちらをハブって特訓なんてズルいよ」


「私たちも交ぜてください」


「ヴェネット、パフィ……。みんな、ありがとう。打倒、ジラス!猛特訓をやるぞ!」


 こうして、アルケミーと四人の仲間たちは特訓を開始するのだった。

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