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こまけぇこたぁいいんだよ!!  作者: 承り太郎
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レプリカ・彼女黙示録 華嫁降誕 強者

 西暦二〇一五年 六月十二日 午後一時十分

 孕ノ町 アーケード街 ネットカフェナーミン



「用事は終わったし、そろそろ出るか」


「うん」


 十兵衛とシンヤはレプリカ鶴姫を作ったあと、海外の有志のサイトを覗き、ダウンロードした新しいスキルを手持ちのレプリカに書き込んだのだ。


「もうねかふぇを出るのか?」


 鶴姫が不満そうな顔をする。


「また今度、時間がある時に連れてってあげるよ」


「ほ、本当じゃろな!?」


「もちろんだぜ」


「ならばよかろう。約束じゃぞ」


「おう」

「うん」


 フロントで会計を済ませてネットカフェを後にし、自転車を停めた駐輪場を目指してアーケード街を歩く。


「鶏ガラみたいな脚のおなごが多いのう……」


 すれ違う若い女性たちを見て鶴姫が呟く。


「痩せてるのがいいって時代なんだよ」


「ああいうのが善し!?丸みある方が可愛いじゃろ」


「それだとデブ……。太ってるって馬鹿にされるんだ」


「時代は変わったのう」


 駄弁りながら歩く三人の前に一人の男が現れる。

 男はメタルフレームの眼鏡をかけた身長百七十五センチくらいのヒョロガリで、如何にもインドア系という雰囲気を醸し出している。


「乃木十兵衛さんと木場シンヤさんですね?」


 眼鏡を人差し指でくいっと上げながら訊ねる。


「そうですが、どちら様ですか?」


「サイバー警察の加藤と申します。手配中の学生二人がネットカフェに入ったと通報がありました」


 十兵衛とシンヤに戦慄が走る。


「任意同行に応じていただけますね?」


「断るって言ったら?」


 加藤の誘いにシンヤが質問する。


「抵抗したのでやむを得ず殺した。……と、上に報告することになります」


「そうかよ」


「では、応じていただけますか?」


「虎穴に入らずんば虎児を得ず。あんたを倒して先に進む」


「そっちがその気なら、俺たちもやってやりますよ」


 十兵衛とシンヤが臨戦態勢に入る。


「なるべく穏便に済ませたかったのですが……。仕方ありませんね。相手をしましょう」


 加藤が両手の指を鳴らす。


「十兵衛、シンヤ。さいばあけーさつとは何じゃ?」


「警察って組織の端くれ。レプリカ持ちの天敵だ」


「なんじゃと!?」


「ひどい言われようですね」


「あ?違うのか?」


「健全な青少年の育成のために有害なソフトウェアを削除しているだけですよ」


「やっぱり敵じゃないですか」


「お喋りはここまで。あなたたちを処刑(検挙)します」


「やれるもんならやってみな!十兵衛!出し惜しみは無しだ!」


「もちろん!総力戦だ!」


 手持ちのレプリカを一斉に呼び出す。


「真菜、鶴姫!出番だぜ!」


「姉やはわしが守る!」

「あたしたちが相手よ!」


「ニコイチ、香歩ちゃん、下川さん!頼むよ!」


「十兵衛殿、お任せください」

「兄ちゃんの期待に応えるよーっ!」

「どこまでやれるか分かんないけど頑張るね」


 加藤の前に五体のレプリカがずらりと並び立つ。


「無駄だと思うが一応言う。降参すんなら今がチャンスだぜ」


「生憎、私の辞書に降参の二文字はありません」


「言ったな?後悔すんなよ!」


「みんな!突撃だ!」


 レプリカたちが一斉に走り出す。


「あのヒョロガリをぶっ殺せ!」


「わしが仕掛ける!」


 レプリカ鶴姫がスライディングで突っ込み、加藤の姿勢が崩れたところへレプリカ真菜が殴りかかる。


「くたばれ!オタクーッ!」


「甘い」


 加藤は自身の右手の指先をぶつけ、繰り出された右ストレートの威力を相殺し、相手の拳を右手で掴んで背負い投げる。


「きゃあ!」


 タイル張りの床を破壊してレプリカ真菜の背中が地面にめり込む。


「あいつ!真菜のパンチを指先で受けたのに、骨折どころか突き指すらしてねえ!」


「何であんな芸当できんの!?」


 ヒョロガリの肉体からは想像がつかない加藤のポテンシャルを目の当たりにし驚愕する。


「私はサイバー警察。パソコンを使う仕事しています。食事中、睡眠中、仮眠中、運転中、デート中……。常日頃からキーボードを操作、つまり、指を動かしているので鍛えられているんです。だから、君たち一般市民よりも指の頑丈さと力強さは段違いなんですよ」


「継続は力なりってやつか……!」


 シンヤが冷や汗をかく。


「シンヤ、しっかりして!怯んだら負ける!」


 指が強力な武器……。なら、それを奪えば勝てる!


「ニコイチ、香歩ちゃん!奴の手首を切り落として!」


「かしこまりました」

「やってやるー!」


 二体のレプリカによる引っ掻き攻撃を避けるため、加藤が連続バックステップで後退する。


「下川さん!真菜ちゃんに治癒の両手(バンデージ)を!」


「オッケー」


 背負い投げを喰らって骨折した背骨が完全修復する。


「真菜、やれるか?」


「もちろん!」


「よし!ニコイチと香歩に続け!鶴姫もだ!」


「狙うはオタクの手首!」

「若いもんに負けてられんわ!」


 レプリカ真菜とレプリカ鶴姫が加勢し、レプリカ四体がかりで加藤の手首を四方八方から狙い、引っ掻き攻撃を行う。


「くっ……」


 攻撃をかわし切れず、加藤の背中や腕が切り裂かれる。


「もーらいっ!」


 遂にレプリカ香歩の鋭い爪が加藤の右手首を捉えた。……と思われた次の瞬間、右手首にぶつかった爪が割れ、更には指先が砕ける。


「いったああああああーいっ!」


 レプリカ香歩が痛みに絶叫し、砕けた指先から血を流しながらのたうち回る。


「いい攻撃でしたが無意味です」


 加藤が眼鏡をくいっと上げながら呟く。


「常日頃からキーボードを使っていると申し上げました。指はもちろんですが、意外と手首も使うんです。だから、手首も君たち一般市民よりずっと丈夫なんです。リストカットしようものなら、ナイフの方が折れてしまいます」


 そう言ってズボンのポケットから折り畳みナイフを取り出してリストカットした瞬間、ナイフの刃が折れて地面に落ちる。


「こんな風に」


 加藤が無傷の右手首を見せびらかす。


「こ、こいつ……。人間じゃねえ……!」


「一体どうすれば勝てるんだ!?」


 果たして、十兵衛とシンヤはサイバー警察の加藤を倒せるのだろうか!?

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