レプリカ・彼女黙示録 華嫁降誕 潜伏
西暦二〇一五年 六月十一日 午後一時四十分
ストーンロール ロック商店街 雑居ビル
十兵衛とシンヤは百合高等学校から徒歩十分の商店街の一角、雑居ビル内の空きテナントに身を潜めていた。
「木を隠すなら森の中、人を隠すなら人混みの中。潜伏先に商店街をチョイスした俺のセンス!イエスだろ?」
「うん」
「しかし、いつまでもここに隠れてる訳にはいかないよな……」
「問題はどこまで逃げるかだね」
「とりあえず、フォレストフォートレスに向かおう。ストーンロールより人がたくさん居るし、隠れるには持ってこいだ。自転車でも頑張れば行ける距離だし」
「電車使えば一時間だよ?」
「電車なんて乗れねえよ。俺たち、結構派手に暴れたろ?間違いなく手配書が出る。改札の時点で捕まるぜ」
「あー、そっか……」
「まずは自転車を手に入れるぜ」
「え?自転車なんて家に帰れば……。あっ!ダメだ!取りに行ったら捕まっちゃう」
「という訳で夜中になったら自転車を確保する」
「確保って?」
「パクるんだよ。その辺から」
「ダメだよ!人のもの盗むなんて!」
「じゃあ、どーすんだよ?」
「買うんだよ」
「お前、いくら持ってんの?」
「二千と五百三十円」
「たったそれだけ!?」
「そういうシンヤはどうなのさ」
「……千と五十円」
「人のこと言えないじゃないか!」
「……悪かったよ」
「こっちこそ言い過ぎた。ごめん……。でも、やっぱり買いたいなー」
「何で買うのにこだわるんだよ?」
「盗んで手に入れるより、買った方がご利益ありそうかなーって」
「金はどーすんだ?」
「それなんだよね。問題は……」
しばらく二人で考える。
「そうだ!カツアゲすればいいんだ!」
シンヤが閃き、声を上げる。
「え?カツアゲ!?」
「野良レプリカが居るってことはレプリカを大事にしない奴が居るってことだろ?」
「そうだね」
「だからさ、そういう奴を叩きのめして金を巻き上げるんだ」
「え!?」
「ついでにダブスクも取り上げて、レプリカたちを勧誘の右手で味方にする。レプリカたちは棄てられずに済んで、俺たちは金と戦力を手に入れる。イエスな作戦だろ?」
「でも、派手に暴れたら警察に……」
「その時はその時だ。男は度胸だぜ」
不安だけどシンヤが居るなら大丈夫……かな。
「うん!行こう!」
十五分後 午後一時五十五分
ストーンロール ロック商店街 ヌード通り
十兵衛とシンヤはレプリカを粗末に扱う輩を探してラブホテルなどが軒を連ねる繁華街を歩いていた。
「夜しかやってないと思ってたけど、昼間やってる店って意外とあるんだね」
「みたいだな。レプリカとエッチしてる奴、この通りに間違いなく居るぜ」
「仮に居たとして、レプリカを大事にしてないかどうかはどう判断するの?」
「いい人を装ったところで、隠し切れず表に出るものがあるはず。それを見つければ分かるさ」
通りの左手にラブホテルが見えてくる。
「あのラブホにするか」
ラブホテルの向かいには四階建ての雑居ビルがあり、二階に喫茶店が入っている。
「十兵衛、あのサ店に行くぞ」
雑居ビルの階段を上って喫茶店に入り、窓際のカウンター席に並んで座る。
「入口がよく見えるぜ」
注文したコーヒーを飲みながらラブホの入口を見張る。
「なんか刑事ドラマみたいだね」
「なら、警部は俺だな」
「じゃあ、俺はあんぱんと牛乳買ってくる後輩で」
雑談しながら見張りを続ける。
「一人で入ってく奴は、あとから女を呼ぶかもしれない。だから、一人で出てきた奴をマークする」
「二人で出てきた場合で彼女がレプリカってことは?」
「その場合もある。でも、俺だったらレプリカと二人で出るなんて絶対しない。よく考えてみろ。一人で入って払った金も一人分なのに、出てく時は二人って変だろ?それにさ、フロントを通ってない女がホテルから出てきたら怪しまれるぜ」
「なるほど」
「おっ?おい!見ろ」
ラブホテルから男が一人で出てくる。
「俺が奴を追う。十兵衛、支払い頼む」
そう言ってシンヤが喫茶店を飛び出す。
あれ?シンヤの奴、さりげなく俺に奢らせたな?ちゃっかりしてんなー。
会計を済ませ、十兵衛も喫茶店を飛び出すのであった。




