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こまけぇこたぁいいんだよ!!  作者: 承り太郎
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開幕!昆虫騎士ハイエッス

 厳しい修行を乗り越えたアルケミーはエロ広告を見事倒し、現実世界へと帰還した。

 しかし、現実世界に帰還したところを、朝食を作るため早起きしていた母親に見つかって問い詰められ、夜中にエロ動画を見ようとしたことはバレてしまうのだった。こうして、家庭内でのアルケミーの愛称はシコルニーに決まった。おめでとう。

 ちなみに、アルケミーは夜中にエロ動画を見たあと、マウスを元の位置に戻せば両親にはバレないと思っていたが、閲覧履歴を消すことを忘れていた、正確には履歴が残ることを知らなかったので両親にはとっくの昔にバレていたことを追記しておく。


「じゃあ、行ってきまーす!」


「行ってらっしゃい!エロいことばっかり考えて車にひかれないようにね!」


「シコる時は立ち止まってからシコれよ!ながらシコりは事故の元だからな!」


「大声で言うな!恥ずかしい!行ってきます!」


 両親に見送られながら逃げるように猛ダッシュで家を出発する。


 いつまでシコルニーって呼ばれるんだろ。それにしてもインターネットって履歴が残るのか。全然知らなかった。ちょっと高い勉強代になったけど、今度からは履歴を消してからマウスを元の位置に戻そう。うん。そうしよう。


 そんなことを考えながら通学路のあぜ道を走り続ける。

 アルケミーの住んでいる地域はド田舎なので、山を一つ越えた先にある中学校に通わざるを得ない。しかし、通学バスとか親に車で送ってもらうと言った救済措置は一切無いので毎日走って登校するのだ。


 山道を走っていると行く手に三人の男たちが現れる。


 上半身裸のマシンガンを背負ったモヒカン集団。絶対ろくな人たちじゃないぞ。さっさと山を下りよう。


 深呼吸しながら山道を進む。


「お嬢さん!こっから先へ行くには通行料が要るぜ」


「大人しく出してもらおうか」


「ひっひっひ」


 下手に拒否とかシカトすると厄介なことになりそうだ。仕方ない、不本意だけど大人しく金を渡して通してもらおう。


「えーと、幾らですか?」


「お前の命ごと頂くぜ!」


「毎度ありぃ!」


「死ねよ!やあー!」


 モヒカンたちが一斉にマシンガンをぶっぱなす。


「ラアアアアアアアアーッ!」


 素早く音障壁を展開し、迫ってくる銃弾を全て弾き落とす。


「こいつ!音障壁の使い手だ!」


「なら、殴り殺してやる!」


 メリケンサックを装着してアルケミーに突撃する。


「無駄!」


 繰り出されたメリケン付き右ストレートに素手の右ストレートをぶつけ、メリケンごと相手の拳を砕き壊す。


「ぎにょあーっ!」


 悲鳴を上げながら山の斜面を転がり落ちる。


 よし。まずは一人。


「女の癖に強いぞ!こいつ!」


「仲間をやりやがったな!絶対に許さん!首ちょんぱして残った身体を一晩中マワしてやる!」


 アルケミーは黒のロングヘアで色白なので女の子と間違われることが非常に多い。


「死ねい!」


 降り下ろされた斧を白羽取りで受け止める。


「うおりゃーっ!」


 受け止めた斧ごとモヒカンを持ち上げ、ハンマー投げの要領で遠くに投げ飛ばす。


「残りはお前か」


「ひいっ!覚えてろよ!」


 捨て台詞を残し、山の斜面を駆け下りて逃げ出す。

 戦いを終え、ホッと胸を撫で下ろす。


「とんだ道草を食っちゃった。急がないと」


 アルケミーは登校を再開し山道を急ぐ。

 山を下り、あぜ道を走り続けると、見覚えのある中学校の建物が目に入る。


 あと少し。


 その時、アルケミーの後方から一台の軽トラックが猛スピードでやって来る。運転席には先程逃げたモヒカンが乗っている。


「敵討ちだ!死ねえ!」


 軽トラックにはねられ、アルケミーの身体が宙を舞う。


 俺、死ぬのかな。


 アルケミーの意識は闇に沈んだ。


「あれ?生きてる?」


 アルケミーはふかふかのベッドの中で目を覚ました。


「おおっ!気がつきましたか!」


 恰幅のいい王様風の男が嬉しそうに声を上げる。


「あの、ここはどこですか?俺はどうしてここに?」


「今朝、城の前に倒れていたのでお助けしたのです。ひょっとして何も覚えてないのですか?」


「覚えてないも何も、学校に通う途中だったんですけど……」


 思い出した。俺はモヒカンの軽トラにはねられたんだ。それで城の前に倒れていたのか。……城?この辺にお城なんてあったかな。


「すみません。城とは何ですか?ここはお城なんですか?」


「ここはエルオー大陸の中心に位置するピープル城でございます。あ!申し遅れました。私、城主のレモンと申します。以後お見知りおきを」


「俺はアルケミー・フォーミュラです。こちらこそよろしくお願いいたします」


 医者の検診を受けたのち、アルケミーはレモンにピープル城を案内された。


 どうやら軽トラにはねられた弾みで異世界に転移したみたいだ。事故の際に異世界に転移した人の体験談をテレビで見たことがある。他人事だと思ってたら、まさか当事者になるとは。元の世界にはどうすれば帰れるんだろう。お父さんとお母さん、心配するだろうな。


「ここが格納庫です」


 天井高十三メートル、広さ八百平方メートルの部屋には色とりどりの人型ロボットがずらりと並んでいる。


「ここでは二十機のロリックの整備や新型ロリックの開発が行われております」


 ロリックと呼ばれる人型ロボットは、いずれも身長は七メートルでカブトムシやクワガタムシ、バッタやカマキリ等々、昆虫をモチーフに造られているようだ。


「アルケミー様のように、こことは異なる世界からやって来た方々は優れたロリック乗りになれる才能を秘めております」


「へえ。そうなんですか」


 俺以外にも転移した人たちが……。


「なので、アルケミー様にはこの新型ロリック、ハイエッスに乗って頂きます」


 ハナカマキリを模したロリックの目の前で立ち止まる。


「これに俺が……」


 しかし、こんな巨大ロボットが必要な世界だということは、何かしらの戦争とかそういうことが起きているんだろう。これからのことを考えたら胃が痛くなってきたぞ。


 果たしてアルケミーはこの異世界で生き残ることができるのだろうか。そして、元の世界に帰ることはできるのだろうか。

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