表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/114

5-4 アイアンウォール

 後世の歴史家にとってこの時期のヴァレンタインは非常に興味深く人気のある時代である。そんな中でもフラット領フラット海岸防衛戦はヴァレンタイン王国始まって以来最も苛烈な戦いである。下記にヴァレンタイン王城に正式に納められている歴史書の一部を記そう。



 メノウ島に陣取ったエレメント帝国第1混成魔人部隊は魔王アルキメデス=オクタビアヌス自身が率いており、総数1万2千の最精鋭であった。対するはヴァレンタイン軍8千。こちらも名宰相ジギル=シルフィード率いるシルフィード騎士団アイシクルランス、レイクサイド召喚騎士団をはじめとするヴァレンタイン史上最強の軍である。

 伝えられている魔王アルキメデス=オクタビアヌスはスキル「無限魔力」を有しており、その力は文字通りの一騎当千、いや数万にも比肩しうるとされていた。事実、メノウ島への上陸の際に魔王アルキメデス=オクタビアヌス単騎でヴァレンタイン王国の防衛部隊を突破している。

 ヴァレンタイン軍でこれに当たったのが当時の英雄、「大召喚士」ハルキ=レイクサイドである。今日まで続く召喚士の歴史の礎を築いた召喚士の父とも言われ、かつ政治的にも軍事的にも比類ない才能を発揮したレイクサイド領の領主であった。「帝王」アイオライの治世を実現する原動力となった「レイクサイドの奇跡」の遂行者でもある。彼自身の絶大な魔力を持って行う召喚は、その召喚量もさることながら、召喚の仕方、時、場所など絶妙なものがあったと言われている。戦いの序盤、無限の魔力を誇る魔王アルキメデス=オクタビアヌスであったが、ハルキ=レイクサイドの召喚に翻弄され主力戦闘に加わる事ができなかった。



「だっかっら!!うぜぇえぇえぇ!!」

「うるさい!お前がチートスキルなんて持ってなかったら、こんな事せんでも良かったんだ!」

ノーム召喚にまとわりつかれた魔王アルキメデスが爆発破壊魔法を連発する。なんとかこちらに突進しようとするが、飛行魔法との同時制御は難しいようだ。爆風で自分も飛ばされないようにするのが厄介なのだろう。

「はい、隙を見せましたね。学習能力はありますか?」

リリスの「グラビティ」が効いた。

「よっしゃあ!!でかした!テト!!」

「えへへ、よくやったよ。リリス。あとで頭撫でてあげる。」

「ふふふ、ご主人様のためですもの。」

グラビティで海岸線に落ちていく魔王。周囲にノームをまとわりつかせる。

「ぐぬぬぬぬぬ!!!」

なんとか逃れようとしているが、そうはさせない。

「ふははははっ!!連れていけぇ!!」

ウインドドラゴンの足でノームごとむんずっと掴んで飛び立つ。リリスも後ろに乗ってもらってできるだけ「グラビティ」をかけ続けてもらうのだ。・・・テトに抱き着くのはやめなさい、戦闘中だ。

「なっ!!?どこに連れて行く!?」

「お前は特別メニューが待ってるぞぉぉ!!」

ウインドドラゴンとワイバーンの部隊は明後日の方角の無人島へ。そしてノーム玉(具は魔王)をぽいっと放り投げる。

「そろそろ「グラビティ」がもちませんわ。」

「いよし!レイクサイド召喚騎士団総力を挙げてのノーム召喚だ!時間差で交代休憩しろ。きつい奴は早めに申告する事!では第1班から開始だ!!青い汁の補給所のテントを張れ!」

レイクサイド召喚騎士団の精鋭でノーム召喚を開始し、魔王の足止めだ。

「なんてうざい作戦なんだ!!」

「お前のスキルがチートすぎるんだ!」

「神のおぼしめしだ!」

「知るか!それに俺らを見限った奴を神なんて認めるか、ぼけぇ!」



「よし!ハルキ殿の作戦が成功した!」

ヴァレンタイン軍右翼。構成されているのはエルライト騎士団にスカイウォーカー騎士団、総勢2千だ。

「相手が突撃してくるぞ、魔王がいなくても精鋭であることは変わりない。」

指揮はジンビー=エルライト領主。堅実な用兵をすると言われている。

「こちらも迎撃ですね。」

そしてルイス=スカイウォーカー領主。スカイウォーカー騎士団「アイアンウォール」はレイクサイド召喚騎士団やシルフィード・アイシクルランスに隠れてあまり目立たないが、防御においては大陸一の硬さを誇っていた。

「皆の者!!」

ルイス=スカイウォーカーは良く通る声で騎士団に指令を出す。

「我らの任務は右翼の保持だ。決して相手を崩壊させる事ではない!」

「「スカイウォーカー!スカイウォーカー!スカイウォーカー!」」

「だが!我らという壁に当たるとあの程度の敵であれば砕けてしまうかもしれん!!」

「「スカイウォーカー!スカイウォーカー!スカイウォーカー!」」

「倒してしまってもかまわん!皆殺しだ!」

「「スカイウォーカー!スカイウォーカー!スカイウォーカー!」」

いつもの優しげな若者とは思えない、頼もしい領主がそこにいた。スカイウォーカー騎士団の士気は尋常じゃなく高い。

「ジンビー殿、まずは我らスカイウォーカー騎士団「アイアンウォール」の力を見せましょう。よろしいですな?」

「はっはっは、別人かと思いましたぞ、ルイス殿。ぞんぶんにおやりなさい。」

「では、追撃の際には力添えをよろしくお願いします。我々は足が遅いもので。」


 対するエレメント軍は左翼3千。第1混成魔人部隊の中でも攻撃に特化していると思われる部隊が混じっている。体格の良い者も多い。

「進めぇ!!」

破壊魔法を繰り出しながらの突撃。総勢3千の軍がヴァレンタイン軍の右翼に襲いかかる。


「構えぇ!!発動!!」

ルイス=スカイウォーカーの命令で「アイアンウォール」の300人が前面に出る。持っているのはスカイウォーカー騎士団特製の大盾だ。発動の号令とともに補助魔法で障壁が盾の隙間を覆う。全身を覆う場合と違って、面積が狭いためにあまり魔力を使わずに発動させる事ができるのだ。

「来るぞ!」

エレメント軍の突撃が届く。大量の破壊魔法が前線に出ていた盾の壁に突き刺さった。だが・・・。

「無傷!?」

「アイアンウォール」の掲げる盾の壁はびくともしない。そしてその後ろからスカイウォーカー騎士団の破壊魔法が飛んでくる。盾に直接攻撃を仕掛けようとしている魔人も盾部隊の槍が仕留めていく。

「前進!!5歩!」

ルイス=スカイウォーカーの号令。そしてダッダッダッダッダ!!という300名の足音。

「放てぇぇ!前進!!5歩!」

壁の後ろからの破壊魔法。そしてさらに300名の完全にそろった足音がきっかりと5回。

「「スカイウォーカー!スカイウォーカー!スカイウォーカー!」」

「放てぇぇ!前進!!5歩!」

300名横一列の壁が5歩ずつ、確実に近づいてくる。後ろからは破壊魔法の雨、こちらの魔法は壁に当たって飛散するだけだ。

「放てぇぇ!前進!!5歩!」

「「スカイウォーカー!スカイウォーカー!スカイウォーカー!」」

ダッダッダッダッダ!!

ダッダッダッダッダ!!

ダッダッダッダッダ!!

決して速いわけではない、だがしかし、確実に歩み寄ってくる死の壁。5歩ずつに誰かがやられていく。

「放てぇぇ!前進!!5歩!」

「「スカイウォーカー!スカイウォーカー!スカイウォーカー!」」

馬上の領主が号令する度に、エレメント軍には損害が出る。対してスカイウォーカー騎士団には壁を越えられる破壊魔法はほとんどなく、ゆっくりと少しずつスカイウォーカー騎士団は敵の左翼を押し込んでいった。そして・・・。

「突撃ぃぃぃ!!」

敵の後退の指示と同時に若き領主の号令で全騎士団員が突撃体勢へと移る。後続のエルライト騎士団も騎馬部隊で突撃を開始した。


 エレメント軍左翼の崩壊は最も早かったとされる。




「お前らぁぁぁ!!ああぁぁ、くそぉぉぉぉ!!うぜぇぇぇ!!」

「な、フィリップ。ちょっと楽しいだろ?特に相手が格上の魔王ってところが。」

「ええ、不謹慎ですが気持ちは分かります。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ