3-7 むっつりじゃない、むしろオープンの方がマシだよ!
ここ数日、魔物が大量に発生すると言われている「奈落」の探索をしてるはずなのにぐっすり眠れているのは何でだろう?フェンリルのふかふかベッドが良かったのかな?帰っても使ってみようかな。
第3階層はまだ先だろう。ひんやりとした洞窟を進む。ヒカリゴケがうすく照らしてくれる広場を越えていくと開けた場所に出た。昨日の場所ほどではないが、それなりの大きさの地底湖もある。
「なんだかだんだん寒くなってきたな。」
ビューリングは毛皮があるけど、獣化のためにあまり服を着こめないから寒さには弱いんだって。第3階層は氷の世界らしい。あんまり寒さ対策してこなかったけど大丈夫かな?
この第2階層の魔物は虫系が中心だったけど、そんなに強い奴がいないみたいだ。それに、なぜだかここにもシルバーファングがたまに現れる。すでに毛皮は1個もってるからもう出てこないでもいいのにね。
「発生する魔物の種類が変わったのか、それとも本格的に大陸とつながってるのか?シルバーファングがいままで地表に出てこなかったという説もありだな。」
なんとなくだけど、地上は暑いからこの洞窟の中で過ごしてるのかもしれないよ。西の大陸ってめっちゃ寒いってテツヤ様も言ってたしさ。
地底湖を大きく迂回して歩いていると、待ち望んでいたやつに出会えた。マザースネークだ。20メートルはあろうかという長い胴体、太さもかなりのものである。ウインドドラゴンの召喚契約にはこいつの頭がいるらしいね。
「よし!やるよ!出でよ黒騎士!」
まずは黒騎士を召喚して様子を見よう。マザースネークの攻撃とか何にも分かってないからね。
「シャァァァァ!!」
マザースネークもこちらを威嚇してくる。うねうねと動きながら黒騎士の攻撃をかわすが、次の瞬間に黒騎士に絡みついてしまった。ギリギリと絞め殺そうとしているんだろうが、これはある意味想定内だよ。
「もういっちょ黒騎士召喚!」
もう1体黒騎士を召喚する。1対1であれば締め付ければ動きがとれなくなり勝てるのであろうが、途中からもう1体を召喚してしまえば、むしろ動きを制限されたのはマザースネークの方だね。案の定、黒騎士の攻撃をよけることができずにマザースネークは数回斬りつけられた。胴体の切断まではできなかったが、かなりのダメージを負っている。もう少しだ!
解放された方の黒騎士も攻撃に加わり、今度は負傷したマザースネークを追い立てる。
「逃がさないでね!」
最終的には黒騎士2体でマザースネークを討伐する事に成功した。これであとは風の魔石は持ってるから、クレイジーシープの角があれば召喚契約ができるぞ!やったぁ!
「ふふふ、テトちゃん~。実はお姉さんからプレゼントがあります。」
レイラ?プレゼントってなんだろう?
「はい!クレイジーシープの角!この前に狩ってたやつの角をもらってました。」
おおお!ナイス、レイラ!今日はちょっとお姉さんっぽいよ。
「これでウインドドラゴンの召喚契約ができるよ!やったぁ!「奈落」から帰ったら羊皮紙買いに行こう。」
「あ、確か羊皮紙の余りがあったな。これやるよ。」
ハルキ様の荷物からなぜか羊皮紙が出てくる。というか、そのアイアンドロイドに持たせた荷物って何でも出てくるよね。洞窟探索に持ってくる物じゃないのもたくさん見えたよ?セーラ様の肖像画とか・・・。
まあ、気を取り直して。
「ありがとうハルキ様。じゃあ、ここで契約しちゃうね。」
ついにウインドドラゴンとの召喚契約だ。
「我契約を望むもの也、我が魔力にて現れたまえ。」
羊皮紙とそのうえに並べられた素材に僕の魔力が籠っていく。そして目の前に現れたのは白い巨体で優雅にたたずんでいるウインドドラゴン・・・ではなく、角の生えた少女だった。
「あれ?素材間違えてたか。ごめんごめん。」
ハルキ様!ウインドドラゴンは!?
「あなたが私と契約を結ぶ者ですか?」
少女はそう言った。よくみるとめっちゃ可愛いよ、この子。黒髪から上に向かって2本生えた角。魔人族とは全然違う角だ。黒を基調としたドレスを着ていて、手には槍を持っている。
「あ、はい。まあ、そんなところです。こうなったら仕方ないし。」
「魔力的には問題ありませんね。素材が足りない気がしますが今回はその魔力に免じて許してさしあげましょう。その年にしては信じられないほどに鍛えられていますね。後ろの男がいなければ世界最強を名乗れた可能性もあったでしょう。」
なんか褒められたよ!
「私の名前はリリス。私と契約すると天使の方々とは契約できなくなりますがそれでもよろしいでしょうか?」
「悪魔系の召喚獣なのかな?」
「そうですね。あなた方の言う悪魔系で間違いありません。」
「僕は天使系とは契約してないから大丈夫だよ。」
「では契約条件としてあなたは私に何を望みますか?」
「できれば何でもしてほしいと思うけど、制約があるのなら戦闘系だね。」
「では、魔力と引き換えに私に出来うることを致しましょう。」
「うん、ありがとう。」
「契約はかわされました。この叡智と性の堕天使リリスがあなたの力となりましょう。」
「え?叡智と・・・何?」
ちょっと待って!最後に変な事言わなかった?
「むっつりスケベ。」
ちょ、濡れ衣だ!変な事言わないでよハルキ様!
「テトちゃんがそんなに欲求不満だったなんて・・・。」
レイラぁ!違うんだ!
「テト・・・。」
ユーナ!むしろ何か言って!
「まあ、年ごろだしな。仕方ない。」
ビューリング!君は助けてくれると思ってたのに!違うって!なんでこうなるんだよ!もともとハルキ様が素材間違えたのが原因じゃないか!僕は悪くないよ!
「まあ、とりあえず召喚してみたら?」
そ、そうだね。せっかく契約したし魔力どのくらい消費するかとか確認しとかなきゃいけないもんね。
「い、いでよリリス!」
さっきの女の子が召喚される。まあ、可愛いのは可愛い。ちくしょう。
「お呼びいただけましたか、ご主人様。」
めっちゃ魔力持って行かれた!コキュートスよりも多いよ!なにこの子!
「ちょっと待って、ま、魔力が・・・。」
「ご主人様なら私を召喚できると思ったのですが、やっぱり少し魔力が足りなかったですか?それとも今日は他の事で魔力を消費してしまわれたとか?」
「ああ、さっきマザースネークと戦ったところだったしね。うっぷ、維持魔力も結構持って行かれるなぁ。」
正直結構しんどいよ。
「ご主人様なら大丈夫です。さあ、さっそく二人きりになれる所に行きましょうか。」
「な、なんで!?何言ってるの?だめだよ!」
「え、ご主人様は他の方に見られると興奮する性癖が・・・?」
「ちっがーう!!」
「むっつりスケベ。」
そしてリリスは強制送還させようにも抵抗して僕から維持魔力をずっと取りつづけた。こんな召喚獣初めてだよ・・・。




