3-3 その呼び方はやめてくれないかな?
私の名前はレイラ。栄えあるレイクサイド召喚騎士団第4部隊隊員です。まだ二つ名はありません。今はスカイウォーカー領スカイウォーカーの町に来ています。今回は任務じゃありません。特別に休暇をいただくという形をとらせてもらっております。
その原因というのも我が第4部隊隊長「深紅の後継者」テトちゃんのせいです。テトちゃんです。皆裏ではテトちゃんと呼んでいます。成人する前から私たちの隊長であり、フィリップ様を超える召喚士である天才テトちゃんが、ある日突然辞めて出て行ってしまったのです。テトちゃんを超える召喚士なんて大召喚士「紅竜」ハルキ=レイクサイド様しかいないと言うのに、何で自信喪失なんてしてしまったのでしょう?お姉さんたちが支えてあげなといけないようですわ。はやくハルキ様のような恰好良くて立派な召喚士になるためにも。それが我が第4部隊全員の願いでもあります。それに、帰ってきてくれないと隊長代行のペニーが死にそうです。Sランクを超える魔物の討伐なんてテトちゃん抜きだと少々厳しいものがありますわ。という事で今回のミッションはテトちゃんを連れて帰ることです。
朝早くレイクサイド領を出てきましたが、まだまだ早かったようですね。この時間帯だと、もしかしたらテトちゃんは起きてないかもしれません。ウォルター様に聞いてテトちゃんが泊まってる宿はすでに知っています。特別にお姉さんが優しく起こしてあげましょうか。そうと決まれば宿に行きましょう。
こんな安い宿に泊まらなくてもいいのに、テトちゃんは倹約家です。どれどれ、テトちゃんの部屋はどこでしょうか?宿の主人に聞いてきましょう。
ここがテトちゃんの部屋ですね。もう起きているのでしょうか?何やら声がします。お姉さんが優しく起こしてあげるという計画は破たんしました。今度に期待しましょう。
というより、声がするとはどういう事ですか!?テトちゃん!誰かと一緒に泊まってるの!?
「テト隊長!」
つい、ドアを開けてしまいました。私はこの事を後悔しています。
「えっと、あの・・・・!え!レイラ!なんで!?え!?もうどうなってるの!?」
「・・・お嫁にいけない・・・。」
そこには私のテトちゃんとパジャマ姿のユーナが一緒にベッドに入っていました。最近見ないと思ったらこんなところで何してるんでしょうか?この泥棒猫が!!
「それで、確認してきた情報を整理すると、僕はとりあえず悪くないよね。」
びっくりしたけど、レイラが入ってくるだいたい30分前くらいにユーナが下の階のトイレに行ってるのを宿の主人が目撃している。部屋からでてきたときに廊下で出会ったみたいだから、それまではユーナは自分の部屋にいたという事だ。つまり、トイレからかえったユーナが部屋を間違えて僕の部屋に入り、なおかつ僕が寝ているベッドにもぐりこんだ。ひさびさによく眠れた僕はこれに気付かず、30分後に起きた時に大混乱。ちょうどその時にレイラが部屋に入ってきたわけだ。
「つ、つまり部屋に鍵をかけなかったテトが悪いよね!」
「ユーナが寝ぼけたのが悪いの!責任とかなんとか言っちゃって!どうしようか本気で悩んだよ!・・・それに何でレイラはここにいるのさ?」
そう、なんでレイラがここに来てるの?なんで僕がこの宿に泊まってる事を知ってるの?
「それはもちろん、テト隊長を連れ戻すためですわ。」
「なんでここが分かったの?」
「ウォルター様にお聞きしました。」
・・・ウォルターの諜報部隊をなめてたよ。僕も監視の対象だったのか。
「僕はもう隊長じゃない。修行の旅に出たんだ。すぐには帰るつもりはないよ。帰ったとしても騎士団を抜けた身だ。一兵卒として雇ってもらうつもりでいる。」
「本当にそんな事を考えてるんですか?」
「本気なんだ。もう、マデウの襲撃のような事は繰り返さない。僕はハルキ様を守れる力をつける。」
「・・・分かりました。では、私もお供します!」
は?なんでレイラが?
「だって、このままではテト隊長の貞操の危機です。この泥棒猫から守って差し上げますわ!」
「だれが泥棒猫よ!」
ユーナがウキーってなってる。
「それにもう隊長ではありませんね!では、これからテトちゃんとお呼びします。」
「て、テトちゃん?あの、僕もう17歳なんだけど。」
「だってこんな小さいころから私たち第4部隊はテトちゃんのお世話をしてきたんです!大丈夫!お姉さんに任せなさい!」
レイラが強引についてくることになった。もともとお姉さん肌のタイプだけど、裏で僕の事をテトちゃんとか呼んでたなんてショックだよ。
「では修行の旅に参りますわよ!」
「ちょっと!なんであんたが仕切ってんの?」
そしてユーナとはちょっと仲が悪そうなんだけど。
「別にかまわないでしょ?あなたみたいな世間知らずに任せておけるはずがないもの。」
「世間知らず?私たちはこの町で冒険者としてテトの修行中なの!別に困ってる事もないし、順調だし!世間知らずはどっちなんですかね!どうせ冒険者ギルドカードも持ってないくせに。」
「あら?ギルドカードならあるわよ。」
え?なんでSランク?
「テトちゃん面倒だからって作らなかったけど、テトちゃんについてったらすぐにSランクまで上がるに決まってるでしょ?だいたい魔物の討伐担当は第4部隊なの!配達係はお呼びではないわ!」
「は、配達係!!??第5部隊を侮辱したわね!?」
「あら?そう聞こえた?耳はまともなのね。」
「ウキィー!!」
訂正、かなり悪そうなんだけど。
「ええと、これからの事を説明するよ。まずはね、僕は新しい召喚獣とそれを制御する力が欲しいんだ。まずは少しずつ召喚契約に仕えそうな素材を集めながら情報収集かな。それには各地の冒険者ギルドを回るのがよさそうだけど。」
「新しい召喚獣ですか。」
「そう、マデウみたいな奴に負けない召喚獣。」
「コキュートスよりも強い召喚獣を?」
「そうとも言えるし、そうじゃない場合もある。マデウの時に召喚したレッドドラゴンはでかすぎて廊下じゃあまり戦えなかったんだ。適材適所を重視した召喚が理想だよ。ハルキ様みたいに。」
「確かにハルキ様の召喚は芸術的ですから!」
レイラもハルキ様大好きだよね。
「ああ!もう!とりあえずギルドに行こうよ!レベル上げも重要なんだから!」
「はいはい、分かったよ。それじゃ、行こうか。」
その日は、ユーナの強い希望でAランクのクレイジーシープの討伐をした。夕飯に出てきた香草焼きを見て、なんであんなに依頼を受けたがったかすぐに分かったよ。確かに旨い。




