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2-4 テトの旅立ち

 レイクサイド領はこの数年、いや数十年の中で最も混沌とした時期に入った。私の知る限りではこんな事はありえなかったはずだ。空気がひどすぎて例えふざけてみたとしても何の反応もないだろう。当分、ストロング=ブックヤードにはならない方がよさそうだ。自重しよう。


「もう、終わりだ。・・・死のう。」

領民すべての希望である次期当主ハルキ=レイクサイドは数日前からこんな感じである。

「ハルキ様。結果は良かったし、誰も死んでませんからハルキ様が死んじゃだめですよ。」

 その原因の一端となったのはこの方、セーラ=レイクサイド様である。エレメント魔人国の特殊部隊がレイクサイド領主館を襲撃した際に、たまたま次期当主も奥方様もいなかった。しかし、問題は奥方様とロージー様の所在が明らかになってなかった事だった。数日間北の湖で休養をとるとの書置きは、特殊部隊の魔法で部屋ごと吹き飛んでおり、さらにその状況をみたハルキ=レイクサイド様はセーラ様とロージー様が攫われたと判断した。結果、誰もが信じられないほどの凄惨な報復が行われてしまい、エレメント魔人国は現在滅亡の危機に瀕しているとの事だった。やり過ぎを気にされてハルキ=レイクサイド様は現在落ち込んでいらっしゃる。ちなみにその際にユーナも不在だったはずだが、それに気づいたのはテツヤ様だけだったという事でヘテロを始めとして皆怒られていた。ユーナの機嫌も最悪である。

 記憶にある限り、ハルキ=レイクサイド様が本気で怒った事はなかったはずだ。まだ私が領主館の使用人であった頃、5歳のハルキ様がお菓子を取られてアラン様を叩きまくっていたのは覚えているが・・・。成人されてからというものハルキ様は落ち込むことはあっても怒ることはほとんどなかった。根が優しいのだろう。おふざけで怒鳴りあう親友はいたが、相手に殺意を覚えるような事はほとんどなかったはずだ。エレメントの侵攻の際に召喚騎士団に犠牲が出た時ですら、復讐を考えるよりもその騎士を想い涙されていた。

 これはハルキ様が構築されたレイクサイド領の力に対抗できる勢力がいままでなかった事が問題だったのだろう。我々からすれば異次元とも思えるほどの柔軟な発想で他領地のみならず魔人族の国までも圧倒してきたハルキ様に命の危機というものは存在しなかったに違いない。だが、ここにきてハルキ様やセーラ様、ロージー様に届きうる力が発覚した。


 それは、特殊魔法。


 テツヤ=ヒノモト様の次元斬やヴェノム・エクスプロージョンがそれにあたる。この世の理を無視したその力の代償は大きい物の、効果は絶大だ。使いどころが悪ければハルキ様ですら危うかっただろう。今回はたまたま運が良かった。我がレイクサイド領の騎士たちの見解はそれである。エレメント帝国第1混成魔人部隊所属特殊部隊隊長、マデウ。奴の特殊魔法「オーバーレイ」はフィリップ様のアイアンゴーレムを難なく貫通し、その先の部屋を半壊させている。これがハルキ様に向かって放たれていたらと思うと・・・。わが身のふがいなさで夜も眠れない日が続く。


 つまり、まずはこうなる。

「貴様らぁ!!この程度で根を上げるなんぞ、恥を知れぇ!!」

鬼のフランの完全復活だ。自分が不在時に認めていたはずのフィリップ様達を始めとした騎士団が次期当主の部屋を守れなかった事に激怒している。まあ、当たり前だろう。甘んじて受け入れるしかない。我らの力不足が原因だ。しかし騎士団員たちが死ぬ寸前までしごかれているが本当に大丈夫なのだろうか?心配ではある。そして・・・。


「セーラさぁん!ロージー!!どこ行くのぉ!!?」

「トイレです。付いて来ないでくださいね。」

ハルキ様はセーラ様とロージー様と離れようとしない。離れていると不安が襲ってくるらしい。これもある程度は予想がついていた。完全にハルキ様に依頼するはずだった政務が滞っている。今後の領地経営の方針も打ち出せるかどうか心配なレベルである。だが、他にも問題は山積みだ。


「完全にトラウマ、ッス。」

次期当主の部屋を守り切れなかったフィリップ様とテト、そしてヘテロがへこみまくっている。事件自体が当人たちの心に傷をつけている事もあるが、事件後のハルキ様があまりにも怖すぎたためにヘテロもテトも委縮しまくりである。特にテトの落ち込みようが半端ない。これでは部下を率いることができないかもしれないレベルである。

 フィリップ様はさすがだ。精神的にはきついに違いない。ご自分の力不足を感じながらも前に進む勇気がある。あの事件の直後に、命じられた任務を執念で成し遂げた精神力は感嘆に値する。任務成功でエレメント魔人国の首都は甚大な被害をうけたと情報が入ってきている。ただし、なんと魔喰らいはエレメントの魔王が退治したらしい。世の中は広い。


 私の率いる諜報部隊も再訓練が必要だ。フラット領から上陸した特殊部隊を一時は補足しておきながらレイクサイド領への侵入を許した罪は重い。



 そして、恐れていたことが起こる。ある日の朝、いなくなった者がいた。

 レイクサイド召喚騎士団第4部隊隊長「深紅の後継者」テト。彼は隊長の職の辞任すると同時に修行の旅に出るという書置きとともに姿を消した。自分がいかに甘い人間だったか痛感したらしい。マデウに手も足も出なかった事がショックなのだろう。彼が自信を取り戻すためには旅もいいかもしれない。

「・・・まじか。やっぱり、俺にはついてきてくれないんだな。・・・死のう。」

ハルキ様の落ち込み具合がこの数日間と同じ程度であるためにどのくらいショックを受けられているか分からないが、ともかくテトはいなくなった。 


 レイクサイド領に苦難の日々がやってくる。来るかどうかも分からない特殊魔法におびえながらも騎士団はハルキ様を始めとしてかけがえのない人々を守らねばならない。



 そしてテトはスカイウォーカーの町を歩いていた。

「・・・それで、なんで付いてくるんだい?修行の邪魔はしないでよ。」



テト 17歳 男性

Lv 61

HP 1780/1780   MP 3360/3360

破壊 31  回復 8  補助 16  召喚 82  幻惑 4  特殊 1

スキル:

眷属:ノーム(召喚3、維持2)

   ドライアド(召喚100、維持20)

   インセクトキラービー(召喚50、維持20)

   アイアンドロイド(召喚150、維持30)

   フェンリル(召喚300、維持30)

   黒騎士(召喚300、維持30)

   クレイゴーレム(召喚1000、維持100)

   アイアンゴーレム(召喚1200、維持120)

   ワイバーン(召喚800、維持60)

   レッドドラゴン(召喚2000、維持200)

   コキュートス(召喚2500、維持300)


多少強引でしたがテトの物語にまで持ってくる事ができました。次回からは当分、テトのお話しです。ハルキはこれから長期の落ち込み期間に入ります。

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