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3-2 グルメツアー開始

「・・・と、いうわけでアイオライ王子への接触は成功した。うふふ。」

レイクサイド領カワベの町。ホープ=ブックヤードはテトを連れて冒険者ギルドへと来ている。

「レイクサイド領へきた目的を探るのが今回のミッションだ。」

「ハルキ様、もしかしたらすでにばれてるかもよ?」

アイオライ=ヴァレンタインとダガー=ローレンスがカワベの町に来ているという事で、ウォルターの反対をおしきってハルキ=レイクサイド自ら調査にきているのであった。


「ホープ殿、怪鳥ロックの肉を分けていただけるとは本当にありがたい。しかし、まさかSランク級の魔物をこうも簡単に狩ってこれるとはさすがですな。」

ダガー=ローレンス、破壊魔法の達人でアイオライの護衛役の人である。がっしりと握手を求めてくる。

「奥方様がロックの肉を好物とは、まるでハルキ=レイクサイド様ですな。」

「ぶふぉっ!?」

「それにお二人だけでロックを狩猟できるなんて、まるでハルキ=レイクサイド様ですな。」

「がふぅ!?」

「あ、僕はなんもしてないよ。」

テト、裏切るな。・・・あれ、握手離してくれない。

「それにお顔が、まるでハルキ=レイクサイド様ですな。」

「・・・・・・ほら、やっぱりバレバレなんだよ、ハルキ様。」

「なななんあ、な、何を言っているのですかな?わ、私はホープ=ブックヤード、た、ただの冒険者でござる。」

「何!?貴殿がハルキ=レイクサイドだと!?」

やばい、アイオライにも速攻でばれた。それにそんな大きな声だしたら皆にもばれるじゃないか。

「・・・ハルキ様。多分、ばれてないのはここに来たことないアイオライ様だけで、カワベの冒険者ギルドじゃ有名だよ、ホープがハルキ様って。」

「さて、場所を移しましょうか。我々に接触してきたという事は何かしらの思惑あっての事と思います。こちらもご迷惑をおかけするつもりはないもので。」

ダガー=ローレンス、顔が怖い。



 面倒くさいのでウインドドラゴンで領主館へと移動した。宿はキャンセルしてもらった。怪鳥ロックの肉はテトに持ってもらう。最近背が伸びてちゃんと成人男性のような体つきになっている。成人してるけど。

「これがウインドドラゴンか!なんと!空を飛べるとは!」

後ろでアイオライ王子が騒ぎまくっている。

「ダガー!見ろ!すごいぞ!町があんなに小さく見える!向こうのスカイウォーカー領まで見えるぞ!」

「ははは、ちゃんと捕まっててくださいね。」

まるで子供のようにはしゃぎまくるアイオライ王子。

「レイクサイド領は農地開発がすごいな。空からみるとその区画整理がよく分かる。効率を重視しているのだな。しかし、あの山を開拓しないのは何故だ?」

意外にも為政者としての視点も持ち合わせている。

「は、はは、あそこを開拓すると治水工事が追加で必要となるからです。森は水を含むのですよ。」

「そうか!治水か!そこまでの考えはなかったな!」

「ところで、アイオライ王子はレイクサイド領までどんな目的で?」

ここだ、これが今回のこっちの目的だ。

「ああ、単なる旅行だ。グルメツアーというやつだな。いままでクロス叔父がどうしてもやめろとうるさいものでここには来れなかったが、奴がようやく失脚したから念願の旅行をしにきたというやつだ。」

「・・・はい?」

「アイオライ様は年間の約三分の一をグルメツアーにあてられています。ヴァレンタイン王国でまだ来たことがなかったのがレイクサイド領と大森林だったので。」

「うむ、どんな料理が出てくるのか期待している。特に怪鳥ロックのから揚げというものを食べてみたい。王都ヴァレンタインでは手に入らぬものでな。」

グルメツアーかよ!もっと深刻なのを考えてたじゃないか!政変に負けて逃亡しているとかさ!


 アイオライ王子一向をレイクサイド領主館でさんざんもてなした。特に怪鳥ロックのから揚げをはじめとして、クレイジーシープの香草焼き、グレードデビルブルのシチューなんかが気にいったようだ。セーラさんもお相伴にあずかり、終始ご機嫌だったぜ。

「セーラ殿、お借りする。すまないな。」

「いえいえ、どうぞ~。お土産に期待していますので。」

「はっはっは、それは良い。」

うちの奥さんと何のお話をしているんだろうか?

「明日は大森林の方へと行ってみたい。」

「でしたら、ビューリング=ブックヤードに連絡を入れておきましょう。ただ、獣人は純人と違って虫型の魔物を食べたりしますんで、あらかじめ断っておいてくださいね。」

「虫型の魔物?どんな味がするのだ?」

いやいや、王子、食べる気か?

「さあ、私は食べたことがありませんから・・・。」

「ハルキ殿、アイオライ様は未知な食べ物をお求めです。こうなったら我々も付き合わされる可能性が・・・。」

ちょっと待って、さっきなんて言った?我々?は?


 翌日・・・。

「ハルキ!行くぞ!」

アイオライ王子の朝は早い。そして一夜明けるとすでに呼び捨てだ。まあ、いいんだけどさ。

「いってらっしゃいませ~。」

「何を言っておるのだ?お前も行くのだ。さあ、ウインドドラゴンを召喚せい。」

「え?」

「では行ってまいるぞ!」

何故かウインドドラゴンを召喚させらる俺。後ろに乗り込むアイオライ王子、ダガー、・・・そしてテト。


「なんで僕が護衛なのさ。フラン様でもいいじゃないか。」

「テト、皆用事があるッスよ。諦めるッス。最近、さぼりがちなのがフィリップ様にばれてるッスよ。」

「げっ、本当?」

「ホントッス。この前視察とか言って大森林に逃げたのも完全にばれてたッス。」

「じゃ、じゃあちょっと大人しくしてるね。」

「それがいいッス。それに今回は狩猟が必要になるッス。テトが一番上手いッス。」

テトとヘテロは仲がいい。

「では、アイオライ王子を大森林までお送りしてきます。」

「ハルキ様、これがお泊りセットでこちらがビューリングさんたちへのお土産ですよ。ちゃんと寝る前には歯磨きをする事、お腹出して寝ない事。あと、アイオライ王子の案内はしっかりしてくださいね。ロージーとお義父様の事はお任せください。」

親父は1歳児と同じ扱いか。

「ハルキ様、アイオライ様、お帰りになったらお土産を楽しみにしておりますね。私、大森林に生息するプレジデント・キラービーの蜂蜜なんかも期待していますので。あれはお菓子にしてもおいしいですし、怪鳥ロックにハニーマスタードソースをかけたグリルなんて絶品ですからね。マスタードはエジンバラ産で。」

「はっはっは、セーラ殿!ハルキが抱えきれないほどの土産を持ってくるぞ。しかし、その料理はうまそうだな。絶対持って帰るとしよう。」

・・・あれ?俺、このまま最後まで同行?あれ?



 そして大森林の世界樹の村でビューリングたちの歓迎を受けた一向は、アイオライ王子の注文でキラーマンティスの料理を食わされる羽目となった。しかし、よりによって何で煮込みなんだ?



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