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2-3 フラン再浮上

 俺はホープ=ブックヤード、破壊魔法を得意とするただの冒険者だ。今回の依頼はハルキ=レイクサイド様からで「大森林の特産物を開拓せよ」である。俺のパーティーを紹介しよう。カーラとソレイユだ!二人ともAランクの冒険者で頼りになる。それに加えて今回はテツヤ=ヒノモトがパーティーに加わってくれることとなった。こいつはめっちゃ暇なんだ!

「まあ、暇なんだけどよ。」

さあ!それでは大森林の奥地へゴー!!


「待てぃ。」

いや、ビューリングさん?首根っこ掴まないでもいいんじゃないかな?純人はそこ持っても皮が余ってないから結構痛いんだよ?あと、爪痛いよ、切ってないでしょ?

「ウォルター殿よりハルキが来ていないかとの連絡が入っているぞ?また、お前抜け出してきたな?」

お、おれはホープ=ブックヤード!ただの冒険者だ。今回は依頼で大森林に来ている。こいつは俺の義兄弟であるビューリング=ブックヤードだ。

「誰が義兄弟だ。」

だいたいウォルターの奴もこんな辺境に通信用の魔道具を置くなんて、なんてことするんだ?すぐばれてしまうじゃないか。

「さっき、返答しておいたからそろそろ到着するはずだ。誰が来るかは聞いてないが。」

爺だけは勘弁してください。最近レベル120超えて超人化してるんだから。

「ついでに良ければフラン殿に訓練をつけてもらえるように言っておいたので、もしかしたらフラン殿も同行されるかもしれんな。来られたら歓迎の宴を・・・。」

ギャー、ちょっと用事を思い出したので樹海に入ってきます!


 世界樹の村の建設は思いのほか早く終わりそうだった。召喚騎士団の連中の頑張りもあり、夜間を問わず急ピッチで仕上げたのだと言う。MP回復の青い汁が飛ぶように売れたと領主館周辺の薬師は言っていた。

 今はその召喚騎士団の新人たちは周辺の集落とを結ぶ道路の建設に勤しんでいる。魔物の出没もある事から、獣人騎士団に護衛もお願いしており、たまに食卓に魔物の肉が並ぶことがあって住民は歓喜しているそうだ。純人は虫は食べないけどね。

 レイクサイド領主館との道のりにも道路が必要だ。まずはテトに頼んだらレッドドラゴンで焼き払おうとしたので、フィリップにお願いすることにした。フィリップはアイアンゴーレムであっというまに領主館から世界樹の村までの約100kmを更地にし、その後を部下の第1部隊がクレイゴーレムで石を敷き詰めていくという見事なチームワークを見せ、たった2週間で開通させる事に成功した。それによりレイクサイドから荷馬車の派遣が可能となった。雑貨屋なども増えてきて、世界樹の村支部ができる店が多くなってきた。近くの川から水も引いてきて、ため池も作ることができた。村の真ん中には井戸も何か所か掘ってあるし、道路もかなり広いものを作ったので、今後はすぐに町と呼ばれる規模となるだろう。獣人たちの交流の場となってもらえれば何よりだ。

 冒険者ギルドの支部も無理やり開設させた。いまの所、依頼するのも受諾するのを俺だけだが、すぐに多くの依頼と冒険者で埋まるだろう。特に採取や調査の依頼が多いに違いない。よし、調査だ。



「坊ちゃま!!逃がしませんよ!!」

それは木の枝から枝へと飛び移り、視界の外から中へ中から外へ、常人ではありえないスピードで移動していた。背中に迫る恐怖に、伝う汗。生きた心地がしない。

「フランか!?俺が相手だ!」

テツヤが切りかかるが、軽く避けられる。

「ふむ、テツヤ様。あなたはいささか次元斬に頼り過ぎで、剣術そのものの稽古が足りてないようですね。」

「ごおふぅ!」

刀の柄の部分を握られてしまい、刀身はフランには届かない。その間に左の突きがみぞおちに突き刺さっている。

「これは失礼を。」

そして宝剣ペンドラゴンが何でも切れるはずのテツヤの刀を打ち返した。

「なっ!?俺の次元斬が!」

「宝剣ペンドラゴンには自分の魔力を乗せられます。次元斬は通用しませんよ!!ふほほ。」

フランのライ〇ーキックで川に突き落とされるテツヤ。

「だぁぁぁぁ!!」

どぼんと小さくいい音がして下流に流されるテツヤ。

「ひぃぃぃぃ!!」

カーラとソレイユはすでに戦意を失っている。

「ええい!ノーム召喚、アイアンドロイド召喚!」

「その手は食いませんぞ!坊ちゃま!」

ついにノームだけでなくアイアンドロイドまでもが切り刻まれる。

「黒騎士!防げ!」

 3体の黒騎士の盾をかいくぐり、フランがこちらに迫る。フランが横を通るたびにどしゃっとくずれる黒騎士達。

「ぎゃああ~!!」

俺は意識を失い、拉致られた。



 最近補助魔法が強くなり、宝剣に魔力を帯びさせる事のできるようになった鬼のフランは最強に近い。

「さすがはフラン様。騎士の鏡のような方ですな。」

「ほっほっほ、まだ未熟者ですが。」

「フラン様が未熟者でしたら、私どもは全員なんなんですか?」

「・・・ウォルター殿、言ってもいいのですか?」

「・・・言え、やっぱりやめてください。」


 とりあえず、世界樹の村まで連れ戻された俺は爺とウォルターの説教が待っていた。その後はビューリングたちが爺に訓練のつけてもらってるのを眺めている。

「くそっ!フラン!もう一度勝負だ!」

ずぶ濡れテツヤが参戦したようだ。しかし、20人以上いる獣人騎士団を相手取り、汗一つかいてないとはどういう事だ?あ、テツヤがまた吹っ飛んでる。

「くそう、何もさせてもらえん。」

隣にビューリングが来た。爺とテツヤがやっている最中に休憩するつもりのようだ。

「世界は広い。しかもすげえのが近くにいやがる。」

こいつはガウ。獣人騎士団の団長だ。さっき爺にコテンパンにのされてた。

「もうちょっと、やれるとは思っていたんだが、思い上がりだったようだ。ヘテロ殿に謝らねばな。」

・・・?なんかあったのかな?

「しかし、ウォルターよ。この簀巻きをそろそろやめてもらえんか?そして、大森林の調査は必要な事だと思うが。」

蒲団でぐるぐる巻きにされ紐でしばられた次期当主。

「ハルキ様、調査でしたら他の人間でもできます。それに問題なのは、ハルキ様の逃亡癖であって、ご命令があれば調査への同行くらい皆喜んでやりますよ。知ってるでしょ?」

逃亡するからいいんじゃないか。分かってないな。

「まあ、カーラとソレイユを巻き込んでくれるからまだマシですが、前回の夫婦喧嘩の時は一人だったでしょう。あれは皆焦ったんですよ?」

「まあ、それがあるから今の状況ができたんじゃないか。ビューリングにも会えたし。」

「そうだな。俺とお前は出合う宿命だったのだろう。」

だから、真顔で言うなし。そして誰かこの簀巻きをほどいてくれ。


 後ほど、調査団を編成したという名目で大森林の中の冒険には行かせてもらえた。ただ、同行者がウォルターの変装するストロング=ブックヤードであり、ビューリングがさらにブックヤードの姓を嫌がった事は言うまでもない。

 

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